僕達はあれから、相変わらず不良を襲う傍らタロヒョンの記憶を取り戻そうとしていた。
しかし厄介なことに、当時韓国語も読めず土地勘も無かったタロヒョンは、目が覚めた所がどこなのかも分からなかった。
手がかりはほぼない。地道にゴロツキから話を聞いていくしかないのか…
大変な生活だったがヒョンと2人でいたから楽しかった。しかしこの生活が長く続かないだろう。
倒した相手が増えるほどその分恨みも買う
2年前の春の夜
僕達はいつも通り生活費を稼ぐため喧嘩にあけくれていた。
僕はタロヒョンと別の場所でゴロツキと喧嘩し金を盗って帰ろうと振り返った瞬間
9人近い男に囲まれていたのだ。
全然気づかなかった、何故、
驚いている僕に男のひとりが口を開く
なんなんだ、報復か?
それとも他の目的???
タロヒョンは?
「たち」だって…?!ならもう僕達の面は割れてるって事か…?
まずい、逃げなければ。
いや、逃げようが無い。
…倒せるか?やるしかない
段々ヒートアップしてしまった僕は怒りを相手にぶつけるように話しかけてきた男に殴りかかった
なんでそんな飄々と避けていくんだ…
すると細身の男が割って入る
なんだ、なんなんだ…
この男も身軽な立ち回りで僕を翻弄してくる。
まるで僕の様子を観察するように。
1個も攻撃が当たらない。紙一重で避けられる
僕は今までよりもっと威力を込めたストレートを撃ち込む。
しかし彼はその突き出した僕の腕に潜り込むと、あっという間に僕に投げ技をかけた
背中を強く打ち、一瞬麻痺する。
その隙を見逃さなかった彼に、僕はあっという間に地面に抑え込まれる。
暴れようとするが、暴れるほど強い力で抑え込まれる。
苦しい…っ
抵抗する力が無くなってきた所、いきなり僕を押し付けていた力が無くなる。
男が吹き飛ばされて転がっている
どこからか現れたタロヒョンが男を蹴り飛ばしたのだ。
ヒョンは僕を立ち上がらせると、見たこともないくらい怖い表情で敵を睨みつけてる
ピアスを耳につけた髪の長い男がタロヒョンに蹴りを入れる。
ヒョンはそれを避けるとすぐさま反撃に出る。
凄まじい攻防が繰り広げられる
タロヒョンが日本語で悪態をつく
それを聞いた瞬間ピアス男の表情が変わった
ピアス男はタロヒョンの拳を避けるのではなく凄まじい力で押さえ込んだ。
握力が強く、手首をいきなり抑えられたヒョンは振り解けない
そのまま男はタロヒョンの首を掴むと壁に押付ける。そして日本語で言った
もがいていたタロヒョンの動きが止まる
ピアスの男も力をゆるめる
僕は辛そうに息をするヒョンに駆け寄る
男が僕に謝ってくる
そして真ん中にいた男が僕らに顔が良く見えるようにフードをとると言う
残りのメンバーも挨拶してくる
それにしてもマフィアのマフィアって…
彼の言葉には説得力があって、不思議と信頼出来る。なんでだろう…
僕は警戒心を緩める
ジャニと名乗った男が、彼らが立っていた後を指さす
そこには無数の人が倒れていた。
彼らの服、タトゥーから見て僕らはピンと来た
倒れてる彼らは今まで僕らが倒した組織の者だ。物凄い数で報復に来ていたのか…
数は50を超える。こんなんに襲われたらひとたまりがなかっただろう
それをnctとかいう彼らがたった9人で片付けたというのか…
芯の強い目。嘘はついてなさそうだ。
何よりの証拠に
自らが報復にあう恐れも顧みずに僕達を襲わんとしていた敵を倒してくれていたんだ
その言葉に、僕は何故だか涙をこぼした。
ああそうだ、僕はこの人が言ったようなことをしたいと考えてたんだ。
でも自分が生きていくので必死で忘れていた
タロヒョンもその言葉に強く頷いている。
僕はタロヒョンにもたれ掛かる。
「もっとソンチャンと一緒に居られる」タロヒョンがそう言ってくれたことがとても嬉しい。
そして彼らに向き合う
彼らが次々に握手してくる。
マークと名乗った青年が大きな車を出してきたので僕らはそれに乗り込む。
車の中では僕達の今までの話をした。
横ではユウタと名乗ったピアス男とタロヒョンが日本語で話をしてる
ユウタさんがうずくまる。
その背中をさするテヨンさん
そして目線をタロヒョンにむける
タロヒョンの顔が少し強ばる
でも直ぐに表情を戻すと言った
ヒョンの表情は少し不安げだが目には凛とした意思が宿っていた
タロヒョンがほっこりした表情を見せる。
安心できる場所を確保出来てよかった
久々にこんなに沢山の人に囲まれる。
でもすっごく安心する
僕たちふたりも顔を見合わせて喜ぶ。
2時間前くらいまで1寸先も見えないような所にいたのに…
不思議なことが起こっているがなんだかもうずっと彼らに委ねていたい。
これで良い。本当によかった。
僕ら二人の人生が始まった瞬間だった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。