第22話

異国の兄弟:2
8,937
2021/03/01 05:02
僕達はあれから、相変わらず不良を襲う傍らタロヒョンの記憶を取り戻そうとしていた。


しかし厄介なことに、当時韓国語も読めず土地勘も無かったタロヒョンは、目が覚めた所がどこなのかも分からなかった。


手がかりはほぼない。地道にゴロツキから話を聞いていくしかないのか…




大変な生活だったがヒョンと2人でいたから楽しかった。しかしこの生活が長く続かないだろう。


倒した相手が増えるほどその分恨みも買う










2年前の春の夜



僕達はいつも通り生活費を稼ぐため喧嘩にあけくれていた。



僕はタロヒョンと別の場所でゴロツキと喧嘩し金を盗って帰ろうと振り返った瞬間
ソンチャン
ソンチャン
なっ…
9人近い男に囲まれていたのだ。


全然気づかなかった、何故、


驚いている僕に男のひとりが口を開く
???
???
やっと会えた…

ここ1年変なチンピラを見なくなったと思ったら君たちの仕業なんだね
なんなんだ、報復か?

それとも他の目的???

タロヒョンは?
???
???
ねえ、君''たち''はなんでこんなことやってるの?
「たち」だって…?!ならもう僕達の面は割れてるって事か…?


まずい、逃げなければ。


いや、逃げようが無い。


…倒せるか?やるしかない
ソンチャン
ソンチャン
あ、あんたらには関係ねえだろ!

こうするしかもう生きてけねえんだ、もう俺たちは、俺たちは元には戻れないんだよっ!!!!
???
???
それでしか生きていけないならなんで危険を冒してまで裏社会の人間を狙うの?

一般人とか狙った方がリスク少ないじゃない
ソンチャン
ソンチャン
………………そんなん狙えるわけないだろ、俺らも元はあっち側なんだから、、、


マフィア…あいつらさえいなければっ!!!!!!
段々ヒートアップしてしまった僕は怒りを相手にぶつけるように話しかけてきた男に殴りかかった
???
???
僕達は敵じゃない。

話がしたいんだ

こんなことやってても、いずれかは殺られるって事わかってるでしょ?
ソンチャン
ソンチャン
っるさい!
なんでそんな飄々と避けていくんだ…

すると細身の男が割って入る
細身の男
細身の男
ヒョン、下がってて
なんだ、なんなんだ…



この男も身軽な立ち回りで僕を翻弄してくる。

まるで僕の様子を観察するように。


1個も攻撃が当たらない。紙一重で避けられる
細身の男
細身の男
話がしたいだけなんだ、暴れないで
ソンチャン
ソンチャン
信用できないっ!!!!
僕は今までよりもっと威力を込めたストレートを撃ち込む。
しかし彼はその突き出した僕の腕に潜り込むと、あっという間に僕に投げ技をかけた
ソンチャン
ソンチャン
うっ…
背中を強く打ち、一瞬麻痺する。


その隙を見逃さなかった彼に、僕はあっという間に地面に抑え込まれる。

暴れようとするが、暴れるほど強い力で抑え込まれる。



苦しい…っ


抵抗する力が無くなってきた所、いきなり僕を押し付けていた力が無くなる。
細身の男
細身の男
っつ…!
男が吹き飛ばされて転がっている
ショウタロウ
ショウタロウ
ソンチャン!!!!
ソンチャン
ソンチャン
ヒョンっ…!!!!
どこからか現れたタロヒョンが男を蹴り飛ばしたのだ。

ヒョンは僕を立ち上がらせると、見たこともないくらい怖い表情で敵を睨みつけてる
ショウタロウ
ショウタロウ
分が悪いね、逃げよう
ピアスの男
ピアスの男
させるわけないやん
ピアスを耳につけた髪の長い男がタロヒョンに蹴りを入れる。

ヒョンはそれを避けるとすぐさま反撃に出る。

凄まじい攻防が繰り広げられる
ショウタロウ
ショウタロウ
くっそ…
タロヒョンが日本語で悪態をつく


それを聞いた瞬間ピアス男の表情が変わった
ピアスの男
ピアスの男
ごめん…ちょっと乱暴するで
ピアス男はタロヒョンの拳を避けるのではなく凄まじい力で押さえ込んだ。


握力が強く、手首をいきなり抑えられたヒョンは振り解けない

そのまま男はタロヒョンの首を掴むと壁に押付ける。そして日本語で言った
ピアスの男
ピアスの男
お前、日本人か?
ショウタロウ
ショウタロウ
?!!
もがいていたタロヒョンの動きが止まる


ピアスの男も力をゆるめる

僕は辛そうに息をするヒョンに駆け寄る
???
???
僕達、本当に敵じゃないんだ。
君たちと話がしたいだけなんだ
細身の男
細身の男
乱暴にしてごめんね
男が僕に謝ってくる

そして真ん中にいた男が僕らに顔が良く見えるようにフードをとると言う
テヨン
テヨン
僕らは「マフィアのマフィア」を目指してる組織『nct』っていうんだ。

僕はテヨン
ウィンウィン
ウィンウィン
僕はウィンウィン
残りのメンバーも挨拶してくる


それにしてもマフィアのマフィアって…
テヨン
テヨン
僕達は君らを勧誘しに来たんだ。

僕達はみんなマフィア、裏社会を恨んできた。nctに入らない?

君、さっき「マフィアさえいなければ」って言ったじゃん。
僕達はそれを目標にしてうごいてるの
テヨン
テヨン
…叶えてみない?僕達で終わらせようよ
彼の言葉には説得力があって、不思議と信頼出来る。なんでだろう…



僕は警戒心を緩める
ジャニ
ジャニ
今よりいい暮らしで、安全だと思うんだ。ほら
ジャニと名乗った男が、彼らが立っていた後を指さす
ソンチャン
ソンチャン
あっ…………!
そこには無数の人が倒れていた。

彼らの服、タトゥーから見て僕らはピンと来た

倒れてる彼らは今まで僕らが倒した組織の者だ。物凄い数で報復に来ていたのか…


数は50を超える。こんなんに襲われたらひとたまりがなかっただろう

それをnctとかいう彼らがたった9人で片付けたというのか…
テイル
テイル
1回、僕らを信じてくれないかな?

このままじゃ君たちは本当に危ないんだ
芯の強い目。嘘はついてなさそうだ。

何よりの証拠に
自らが報復にあう恐れも顧みずに僕達を襲わんとしていた敵を倒してくれていたんだ
テヨン
テヨン
力を貸してくれないか、



………これ以上僕達のように辛い目に遭う人を増やしたくないんだ

その言葉に、僕は何故だか涙をこぼした。

ああそうだ、僕はこの人が言ったようなことをしたいと考えてたんだ。

でも自分が生きていくので必死で忘れていた



タロヒョンもその言葉に強く頷いている。
ショウタロウ
ショウタロウ
ソンチャン、僕は彼らのなかま入ってもいいとおもう。

そしたら記憶がもどるかもしれないし、なによりソンチャンともっと安全にいっしょに居られる☺️
ソンチャン
ソンチャン
ヒョォオン…………!

僕も賛成です、
僕はヒョンが行く所に着いていきますからっ…!
僕はタロヒョンにもたれ掛かる。

「もっとソンチャンと一緒に居られる」タロヒョンがそう言ってくれたことがとても嬉しい。






そして彼らに向き合う
ソンチャン
ソンチャン
その話、僕達2人はお受けしようと思います

僕の名前はソンチャン
ショウタロウ
ショウタロウ
ショウタロウです
テヨン
テヨン
よかった。ありがとう!

ショウタロウ、ソンチャン、nctへようこそ

これからよろしくね
彼らが次々に握手してくる。

マークと名乗った青年が大きな車を出してきたので僕らはそれに乗り込む。



車の中では僕達の今までの話をした。


横ではユウタと名乗ったピアス男とタロヒョンが日本語で話をしてる
ユウタ
ユウタ
…ショウタロウはなんでここにおるん?
ショウタロウ
ショウタロウ
…ごめんなさい、覚えてないんです。


ただ、僕が目覚めた状況をソンチャンに話したら「人身売買」だって…僕は誘拐されちゃったんでしょうか、それとも売られちゃったのか…
ユウタ
ユウタ
…!!!!人身売買…………………
ごめんなしょうたろう、もっと俺が手を打てたら…
ショウタロウ
ショウタロウ
ゆ、ゆうたさんのせいじゃないんですよ??
テヨン
テヨン
どうしたの?ユウタ
ユウタ
ユウタ
ショウタロウも、俺と同じ日本から「輸入」された人身売買の被害者や…
記憶が抜け落ちるほど酷い目に遭ってる…





ああ、思い出したない…
ユウタさんがうずくまる。

その背中をさするテヨンさん

そして目線をタロヒョンにむける
テヨン
テヨン
ユウタも日本から「輸入品」として連れてこられた人身売買の被害者なの。

彼も当時本当に残酷な目に合わされてて、君程じゃないけど記憶が所々抜け落ちてたんだ。



記憶が無いってのは本能的な防御反応なんだ。
強いストレスから自分を守ろうとしてね

記憶を戻すってことは辛いことを思い出すかもしれないんだ、
タロヒョンの顔が少し強ばるこわ

でも直ぐに表情を戻すと言った
ショウタロウ
ショウタロウ
正直、少しこわい、、です。

でも、何も知らないままじゃ嫌なんです。
どんなにつらくても、僕が生きてきた時間をなかったことにしたくないです!
ヒョンの表情は少し不安げだが目には凛とした意思が宿っていた
テヨン
テヨン
…君はユウタと同じことを言うね。強くなれるよ、絶対
ユウタ
ユウタ
ショウタロウが感じる気持ち、多分俺が1番わかってあげられると思う。

記憶が無いのホンマに怖いやろうし、思い出すのも怖いと思う。

でも、俺らがその時は絶ッ対支えるから、一緒に頑張ろな?
ショウタロウ
ショウタロウ
…!ありがとうございますっ!!
ソンチャン
ソンチャン
僕もですよヒョン、なんでも言ってください!!
ショウタロウ
ショウタロウ
ありがとうソンチャン☺️これからもよろしく
タロヒョンがほっこりした表情を見せる。

安心できる場所を確保出来てよかった
ドヨン
ドヨン
でもソンチャンも無理しないでよ〜
ほら、さっき怪我したじゃん。見せなさい
ソンチャン
ソンチャン
いたたたたたた
ジョンウ
ジョンウ
そうだよ二人とも、一緒に頑張ろうね
ジェヒョン
ジェヒョン
なんでも聞いてくれ
マーク
マーク
yes!!!!よろしくね〜!
久々にこんなに沢山の人に囲まれる。

でもすっごく安心する
ヘチャン
ヘチャン
ねーねー、帰ったら歓迎パーティーしようよォヒョン達〜
マーク
マーク
自分が食べたいんだろぉ!
ヘチャン
ヘチャン
八割正解〜!!!!!やるじゃんMark氏〜
マーク
マーク
yeah!!!!!
テイル
テイル
いいね、沢山作ってあげるよ
マーク
マーク
やったーーーー!!!!
ヘチャン
ヘチャン
っしゃー!!!!!!
僕たちふたりも顔を見合わせて喜ぶ。

2時間前くらいまで1寸先も見えないような所にいたのに…
不思議なことが起こっているがなんだかもうずっと彼らに委ねていたい。


これで良い。本当によかった。




僕ら二人の人生が始まった瞬間だった

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