第114話

六班
5,365
2021/05/05 15:16
テン
テン
ヒョ〜〜〜〜〜ン!!!


テンが遠くから駆け寄ってジャニに飛びつく


それに優しく応えるジャニ





身長差があって、ちょうど親子のような2人

テン
テン
うわ、これ新しい武器?
ジャニ
ジャニ
そーだぞ、かっこいいだろ?
テン
テン
かっこいい〜!ちょっとテンにも触らせて
ジャニ
ジャニ
あーーー!!!ダメダメダメダメ



武器に全くと言って良いほど不慣れなテンは

触れた武器を暴発させて練習場を炭にした過去がある





ジャニは武器を取り上げるとテンの頭上に持ち上げる



テンはそれを取ろうとぴょんぴょん飛び跳ねるが一向に取れそうにない





口笛を吹いて余裕の顔つきで挑発するジャニに
とうとうよじ登り始める

いてててて と声はあげるものの抵抗せずそのままにしておいてあげる。




甘やかしすぎだ











ジャニ
ジャニ
あ、そうだ
もう、その、、腕の傷は大丈夫なの?



腕の傷 とはリストカットのこと。

ジャニは先日、幸か不幸かその場面に居合わせてしまったのだ
それ以来彼はテンのことが気が気で仕方がない



テンはニコッと微笑むと長い袖をまくる

そこには綺麗に包帯が施されている






その包帯をするするほどくと、何本も切れ目が
それに縫った後も



テン
テン
ヒョンのおかげで、ちゃーんと治りましたよ!
ジャニ
ジャニ
傷、開いたりしない?
テン
テン
大丈夫〜



テンはそう言ってキラッキラなウインクをする



呆れ顔で笑うジャニ








そんな彼らへの命令は




「暴れること」




以上だ






テン
テン
ここの路地で暴れれば良いんでしたっけ?
ジャニ
ジャニ
そう!
テン
テン
なんで?
ジャニ
ジャニ
...
ジャニ
ジャニ
なんでだっけ?
テン
テン
細かいことは考えなくて良いんじゃない?ヒョン!
テン
テン
テン難しいことわかんなあい



是非とも考えていただきたいのだが。



この路地裏は、この裏社会のありとあらゆるところに
”つながっている”のだ





そう、即ちここにはアヴィリオの「援軍専門の部隊」
が潜んでいるのだ



ここからなら、どんな場所でもすぐに駆け付けられるからだ






NCTは今、少人数で一斉攻撃を仕掛けようとしている
これ以上的に援軍を呼ばれると人数的にしんどくなる



なので必ずここを叩く必要があるのだ







ジャニ
ジャニ
あ!思い出した
ここにいる援軍専門部隊を潰せば良いんだよ
テン
テン
このエリアのどこかに潜んでいるそいつらをおびき寄せるために”暴れろ”ってことかあ!
ジャニ
ジャニ
そういうことだな
テン
テン
ヒョン、僕がヒョンのこと守りますからねえ!
ジャニ
ジャニ
ハイハイ、ありがとねえ


甘えたような声と上目遣いで気を引こうとしがみついてくるテンに
タジタジしながらもジャニが頭を撫でてやる



ジャニ
ジャニ
テン、そろそろ時間だ




そう言ってジャニはテンを引き剥がすと配置に着かせる



















ジャニの前ではデレッデレに甘えていたテンだが
戦いを前にすると目つきと雰囲気がガラッと変わる





目にかかっていた前髪を上げてオールバックにする

高い鼻筋が綺麗な横顔のシルエットが冷たい蛍光灯に照らされる









さっきまでメロメロになって目尻に垂れ下がっていた目は、
今は鋭く、猛禽のような三白眼で



悪戯好きな子猫のような雰囲気も
妖しい色気を帯び、隙がまるでなく

そこに香水のようにふんわりと殺意を纏う


















ジャニもそう。




あの優しく包み込むような穏やかな雰囲気は無い





とろんと垂れた目は普段は優しさを際立たせるものだが
今はその瞳はどこか危ない色気を醸し出している

その瞳は鋭くないのに、無気力に開かれた目は捉え所がなく
えも言わせないような殺気が込められている









すらりと伸びた手足が際立つ

肩まで伸びた綺麗な長髪が風になびいた




















午後9時を回った瞬間











彼らも他の班同様一気に攻撃を仕掛けに行く
ジャニが率いる部隊は一斉に高火力の武器を背負い四方に照射し


テンが率いる部隊はそれに沿って四方に散らばり
敵を見つけ次第叩くのだ



















テンは路地裏を知り尽くしている



ここが怪しい、こういうところに隠れていそう

などという目星はとうについているのだろう







素早い動きで迷いなく突っ走る

しばらく走るとひらりと屋根の上に飛び乗ると
そのまま屋根の上を忍者のように走る




高低差のある場所も体を回転させたり、物を蹴ったりして飛び越え
躊躇なく飛び降りる

建物の間に少し広めの幅があっても助走をつけて悠々と飛び移る





長い間ヤンヤンと路地裏での任務についていた賜物だ


















タン、タンっと






テンが屋根を蹴る音が響く






















ジャニはそのテンを追う








いつも、誰もテンの動きについていけないから最終的にテンの援護には誰もつけてないことが多い


援護がない戦闘など極めて危険だ












だからジャニは今回の任務、最初からテンの後ろにつくことだけを決めていた


























彼は絶対にテンを守りたいのだ

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