第81話

2つの盾
6,188
2021/04/09 16:14
チソンside











ジェミン
ジェミン
今の場合だと、こっち側からシャーッて来るじゃん
だからこれをこうやってこうすればこうなる

分かった?
チソン
チソン
ああ、なるほど
こういうことですか??
ジェミン
ジェミン
そーそーそー、バッチリじゃわ
ジェノ
ジェノ
え?今ので分かったの?






僕らは今訓練所にいる




僕はサポートが仕事だから、色んな能力を平均値以上にこなしたい



だからこうやって色んなヒョン達にたくさんのことを教えてもらうのだ








今はジェミニヒョンから刃物相手の時の立ち回りを教わっている



次はジェノヒョンとトレーニングを一緒にさせてもらおう





チソン
チソン
ヒョォン、どうやったらそんなに筋肉がつくんですか?
僕ももっと筋肉つけたいです
ジェノ
ジェノ
ん〜、運動はもちろんだけど体質が大きいかなあ
チソンはもっと太らないと
チソン
チソン
う〜やっぱそうですよね

今から筋トレしますか?一緒にやりたいです
ジェノ
ジェノ
やるつもりだけどちょっと休んだら?
汗だっくだくじゃん
ジェミン
ジェミン
や!ジェノや!!!ちょっと相手してくれ!
ジェノ
ジェノ
え〜負けちゃうよ〜





そう言いながらジェミニヒョンの前に立つジェノヒョン






僕はヒョンのスポーツドリンクを勝手に飲みながら観戦する










ジェノヒョンの逞しい体つきに


ジェミニヒョンの軽やかな身のこなし














彼らが着ているタンクトップがチラっとめくれると、沢山の古傷が見える













あれの大半は、僕のものになるはずだった
























ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














6年前 僕は攫われた



家族と来ていた旅行先の梨泰院で

少し家族から離れた隙に。




















怖くて、怖くて怖くてたまらなかった






















2人のヒョンは、僕が連れてこられた場所に居た





















僕らは「奴隷」として買われたようで

毎日酷い扱いを受けるようだ

























ヒョン達と出会ったのはそことまた別の場所



奴隷の中でも特に飼い主のお気に入りを集めた牢の中で。













チソン
チソン
痛いっ…



突き飛ばされるように、乱雑に牢に押し込まれた





ガシャンと手足にまとわりついた鎖が大袈裟に音を立てた














ここはどこ…?














いやだ、怖い、怖い怖い……













チソン
チソン
……お母さん…っ…お父さん…………





絞り出すような声で泣いていると




向こう側の闇の中から、鎖を擦る音が聞こえてきた










こっちに近づいてくる
























僕は怖くなって牢の角まで後ずさりする





















僕を攫った人達の仲間…?

また叩かれるのかな…




















僕はギュッと目を瞑っていつ叩かれてもいいように身構える
















が、いつまでたっても拳は飛んでこなかった
































ジェノ
ジェノ
大丈夫…?














そっと目を開けると、目の前には僕と同じぐらいの歳の少年が2人





心配そうにこちらを見つめていた
















ジェミン
ジェミン
大丈夫、僕達は君と一緒
ジェノ
ジェノ
攫われたのかい?君も






「君も」






その言葉に僕はハッとした












僕達は君と一緒…








この人たちは、僕の味方なのかもしれない







チソン
チソン
あっ、あの、ここはどこですか?!
僕はどうしてここに…?
チソン
チソン
僕、帰らなきゃ…







僕の言葉に、2人は顔を見合わせると
悲しそうな表情になる





そして、銀髪の人の方が重そうに口を開く




ジェミン
ジェミン
もう帰れないんだ、僕達

僕達、マフィアに攫われちゃったから


喉がヒュッと音を立てたのが聞こえた






マフィア、誘拐…








ニュースで見たことがある


最近になって、行方不明者が増えていて
それは全部マフィアの人身売買のせいだって





恐ろしいな〜とは思っていたけど





まさか自分がそうなるなんて、夢にも思っていなかった





















チソン
チソン
じゃ、じゃあ…僕はこれから、どうなるんですか………
ジェミン
ジェミン
………………
ジェノ
ジェノ
それは、僕達にも分からない…………
チソン
チソン
そんな…………っ







ぼろぼろと涙が溢れてくる








今まで体感したことの無い絶望と


これから起こることに受け身である事しか出来ず、恐怖することしか出来ない日々への苦痛に









僕は耐え切れそうになかった













すると2人は僕に近寄ると、僕を覆うようにそっと抱き締めてきた




ジャラ、ジャラと邪魔な鎖を不器用に避けながら僕を抱き締める













2人の温かいからだと、冷たい鎖の不気味な温度感が今でも忘れられない












そしてそのまま2人は囁く




ジェノ
ジェノ
泣いてるのは、見られちゃダメだよ

殴られちゃうから
ジェミン
ジェミン
でも今は泣いていいよ

僕達が隠しといてあげるから







そう言われると、僕は糸が切れたように泣いた




できる限り声を出さないように












その間ずっと、2人の少年は僕の体をさすったりとんとんと叩いたりしてくれていた










どのくらい時間が経ったのか、時計も窓も何も無いので分からないが


かなりの時間が経って、やっと僕は泣き止んだ








2人は依然、僕を包み込んだままだ







ジェノ
ジェノ
…落ち着いた?
チソン
チソン
はい…っすいません…
ジェミン
ジェミン
いーの、大丈夫
ジェノ
ジェノ
名前、聞いてもいい?
チソン
チソン
チソン、パク・チソンです
ジェノ
ジェノ
僕はイ・ジェノ
ジェミン
ジェミン
ナ・ジェミン
ジェノ
ジェノ
よろしくね、チソン

これから一緒に頑張ろうね

















これが、僕とヒョンとの出会い

プリ小説オーディオドラマ