第91話

消してほしいけど消さないで
5,870
2021/06/13 05:13
ヤンヤン
ヤンヤン
ねえ、ヒョン
テン
テン
なに?
ヤンヤン
ヤンヤン
今の僕って、本物なのかな



















時々、そう感じる















今の自分は、本当の自分なんだろうか

















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


















「多重人格症」






















その言葉を知った時

時々記憶が抜け落ちたり、自分がやった覚えのないことを自分がやったと言われる現象に


やっと納得がいった











僕の体には、僕以外にもう1人住んでいる。



普通の僕と

「リウ」と名乗る男の子












僕の体?いや、

これは本当に僕の体なのか?







今の僕は生まれた時から備わっていた人格なのかな?いや、僕らは2人で1人?




僕はそういう風に感じるけど








人格が出入りする度に



段々分からなくなってきちゃった






















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














僕が人身売買組織にいた時間は、NCTの中で1番長い







2年6ヶ月











長い月日、その地獄で過ごした
















この世の全ての苦痛を味わった自信がある










様々な種類の、様々なジャンルの虐待













最初の2週間ぐらいは、泣き叫ぶ余裕があったけどもうそこからは声を出す気力も無くなった







残虐趣味の主人は僕をこき使っては、ストレスや性欲のはけ口として毎晩僕を使った










もう抵抗する気も毛頭ない

ただ虚ろに天井を眺めるだけ










そんな時に「リウ君」は現れた

























ヤンヤン
ヤンヤン
…だれ
リウ
リウ
あれ?僕のこと知らない??
ヤンヤン
ヤンヤン
しらない…
リウ
リウ
僕は知ってるよ
リウ
リウ
君のこと、何でも知ってるの
ヤンヤン
ヤンヤン
………
リウ
リウ
僕はリウって言うの
リウ
リウ
大丈夫だよ、僕が守ってあげるからね。
ヤンヤン





なんで僕の名前を知っているの…











その子は僕そっくりで、綺麗な白い髪の男の子










きっと狐が化けてでたらこんな感じなんだろうな




妖しい美しさがあった













その時を境に、僕は虐待を受けなくなった










というか、いつも虐待を受けているはずの時間の記憶が無いのだ





ヤンヤン
ヤンヤン
ねえ、リウ君
リウ
リウ
なあに?
ヤンヤン
ヤンヤン
最近、いつも君が僕を守ってくれてるの?
リウ
リウ
そうだよ!僕がヤンヤンを守るって言ったじゃん
ヤンヤン
ヤンヤン
どうして?
リウ
リウ
えーわかんないなあ
リウ
リウ
だって、僕は君が作ったんだから
ヤンヤン
ヤンヤン
?どういうこと?
リウ
リウ
いやあ、なんでもないや!
ヤンヤン
ヤンヤン
…そっか
ヤンヤン
ヤンヤン
ねえ…
リウ
リウ
何?
ヤンヤン
ヤンヤン
ずっと、そばにいて…
リウ
リウ
…もちろんだよ、今も昔も

僕はずっと君のそばにいるから
ヤンヤン
ヤンヤン
なにそれ、変なの…



どっと眠気が襲ってきて、瞼が重くなる






リウ
リウ
おやすみ、ヤンヤン
リウ
リウ
いや
リウ
リウ
おやすみ、僕
















僕が捕らえられてから3ヶ月後







同じ牢に新しい人が入ってきた











小柄な、綺麗な顔立ちの青年





名前を「テン」と言った











僕と同じく外国から連れてこられたみたいで、言葉が多少覚束無い所があったが

笑顔が印象的な優しいヒョンだ










テン
テン
こんにちは、僕はテン
ヤンヤン
ヤンヤン
僕はヤンヤン

それでこっちはリウ君
テン
テン
…?そこに、誰かいるの?




ヒョンは不思議そうに顔を傾けた





ヒョンには何故か、リウ君のことが見えなかった

強いストレスが原因なのかな…





リウ君も、ヒョンとは話そうとしなかった







ヒョンは虐待を受けても、あまり辛そうな素振りを見せなかった



「自分には痛覚があんまりないから」





ヒョンはそう語った










本当にそうみたいで、骨が折れるような大怪我をしてきても少し痛いと言うだけで

ニコニコしていたのだ








精神的、性的な虐待を受けた時だけ泣いて帰ってきた










ヤンヤン
ヤンヤン
ヒョン、大丈夫…?
テン
テン
…………ちょっと、キツい…
ヤンヤン
ヤンヤン
泣かないで、ヒョン
テン
テン
…ヤンヤンは強いんだね………
僕、もう死んじゃいそう
ヤンヤン
ヤンヤン
嫌だよ死なないで
…僕は強くないよ。リウ君が守ってくれてるだけ
テン
テン
…………
テン
テン
そっか…………
ヤンヤン
ヤンヤン
だからね、僕がヒョンを守るよ
テン
テン
どうやって?
ヤンヤン
ヤンヤン
わかんない
ヤンヤン
ヤンヤン
でも、こうやって横にいてあげるね
テン
テン
…そっか、ありがとうね

































一瞬、ここで僕の記憶は途絶えた






























そして再び気づいた時




















































































僕の目の前でテンヒョンが倒れていた

プリ小説オーディオドラマ