とうとう決戦も本格的に始まってきそうだなあ…
裏社会には緊張感が走っている
風船に、延々と空気を入れ続けてるような感覚
いつ爆発するか分からない
きっと、この状況も持って1ヶ月だろう
外回りの状況はどうなんだろうなあ
ヤンヤンは僕を見ると抱きついてくる
僕も適当によしよししながら応じる
ヤンヤンは出会った時から今までずっと僕にコアラみたいにしがみついている
しょうがないな…
母コアラの気持ちになってヤンヤンを背中に放置したままテンヒョンに着いていく
迷路のような裏路地を、迷いもなくすいすいと進んでいく
見失ったら迷子になりそう
…何が?
僕には何も分からないが、2人は何かを感じとっているらしい
2人の雰囲気が変わる
僕はテンヒョンの傍に駆け寄ると、銃を構える
ヤンヤンが僕に面を渡してくる
顔を見られないようにそれを付ける
遠くの路地の方から、大勢がゾロゾロとこっちに歩いてくるのが見える
やっと今目視で確認できたレベルなのに
この人たちは見る前から察知をしていた。
野生動物のような勘がすごい
………数が多い
ざっと30人くらい
僕らの縄張りにこの人数で入って来るって事は相当なにか考えがおありなのでしょう
テンヒョンがさっきの口調とは全く違った、恐ろしく冷たい口調で口を開く
だが敵はその言葉に笑みを浮かべると
挑発したように1歩前に踏み出し、
僕らの方向にすごい速さで迫ってくる
…あーあ、やっぱり
これだけの人数差ださぞ自信があるんだろうな
僕は言葉の通り後ろに下がると
援護射撃をする
敵は相当この2人に対しての対策を組んできたみたいで、何となく筋を読んでるような印象がある
逆に僕がいることは想定外だったのだろう
弾道の避け方がぎこちない
するする動くテンヒョンとヤンヤンの間に
針に糸をように弾幕を張って
一人一人急所を外して撃ち抜く
そういうとテンヒョンはさらに加速する
それに触発されたように、ヤンヤンもさっきとは全く別の動きをし始める
自分たちのデータにない動きに敵が翻弄され始め、二人の鮮やかな業に伏していく
敵もあとわずかぐらいに差し掛かった時ヤンヤンがいきなりこっちを振り向くと
僕の顔の真横を、フェンシングのように鋭く突いてきた
ビュンと風を切る音と
肌で感じる風圧
後ろから何か生暖かいものがかかってくる
「ヒョン、おいで」
ヤンヤンが呆気にとられてる僕の腰に手を回してグイッと寄せる
ヤンヤンに抱きついたみたいになってる
僕は後ろを振り向くと、男が棍の先端に突き刺さっていた
降ってきた生暖かいものは男の血だった
ヤンヤンは僕を片手で抱きしめながら、もう片手で男を吊り下げた棍を持っている
抱きしめる力が強くて、少し痛い
全ての敵を倒し終わったテンヒョンが、ため息をつきながらこっちに向かってくる
男は一瞬驚いたような顔になるがそのまま僕を睨みつける
ヤンヤンはひとしきり暴れ通すと、辺りは綺麗な赤色になる
ついて行って正解だった
その他にも結構収穫があったし
その帰りにテヨンヒョンのお見舞いにアジトに向う道中もヤンヤンはずっとくっついたままだ
ヤンヤンside
ルーカスヒョン…笑
冗談のつもりで言ったのに、本気な顔しちゃってかわいいなあ
あまりにも焦れったいからちょっと意地悪しちゃう
みんなに見えるようにあなたヒョンにベタベタしてたのもそれの一環
でもあなたヒョンのことは本当に好き
優しいし可愛いのはもちろんだけど
そんな人の体に
無数の傷が刻まれてるのって
なんだかすごい興奮しない?
多分こんなにこと言ったら嫌われちゃうだろうけど
僕その赤い傷跡に生命力みたいなものを感じるし
とても儚げで美しいなって思うの
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。