ソウル市内から少し離れた港近く
今は使われていない船着場には夥しい量のコンテナが当時のまま放置されている
東側を見ればソウル市内の夜景が
遠くにみえる向こう側の港には工場地帯の明かりが絶えずひしめき合っている
波が防波堤に打ちつける音に濃い磯の匂い
吸い込まれそうな暗い海と遠くの夜景のコントラストが綺麗
この廃港はアヴィリオの構成員が麻薬や情報の取引や
戦闘員が訓練している所だ
今日この場所では敵の有力部隊が訓練を行う予定だ
二班の目的はその部隊を潰すことだ
この部隊は大男隊同様アヴィリオの過激派戦闘集団
乱戦の中こいつらを野放しにしておいては苦戦を強いられる
危険は芽のうちに摘んでおかなきゃならない
向こうは25人程度だが戦闘のエリート集団
土地勘も長らくここで訓練を積んでいる向こうのほうが上手だろう
何故わざわざ不利な立地を選んだのかというと
そうせざるを得なかったから。
相手の部隊は神出鬼没
いつどう出てくるかも全てが謎に包まれているような部隊なのだ
だからあなたがこの訓練の情報をつかめたのも奇跡に近いのだ
NCT側の構成員は幹部を含めて8人
人数が多すぎると下手に足を掬われてしまう
だからこちらも精鋭のみを揃え
一番フットワークが軽く連携がとりやすい陣形で挑む
土地勘のなさはヘンドリーの五感で、
人数のハンデはルーカスの馬鹿力とシャオジュンの狙撃で補う
8:50分 ルーカスら精鋭の分隊は
コンテナの上で作戦開始時刻を待っている
ヘンドリーはそう答えると神経を研ぎ澄ます
目を閉じて、耳に手を当ていろんな方向を試す
途中で顔を空に向け風向きや、空気の匂いをかいだりしている
そういうとシャオジュンはコツコツとクレーンの首に登っていく
この場所で一番高い所
ヘンドリーは一番周りが見渡しやすいコンテナの上に
ルーカスはショットガンを片手にそれぞれ配置につく
時報が午後9時を指した瞬間、
反対側に見えていた港から爆音が轟く
ルーカスの声を合図に全員が動き出す
訓練をしようとしていた敵は爆発の正体が自分たちの武器庫からだと気づくとすぐに応戦に向かおうとする
車に片足をかけた構成員をシャオジュンが撃ち落とす
それで敵はようやく自分たちも敵に捕捉されてると気づいたようだ
それでもさすがは手練
すぐに陣形を整えて周囲に散らばる
コンテナや大きなブリキ缶と言った障害物がたくさんあり
気分はまるでサバイバルシューティングゲームだ
細かく障害物がどこにあるかとかを把握している敵にとってはやりやすい場所だろう
まあこちらも衛星写真とかを見て事前学習はしてるけどね
そういうとルーカスは2メートルはあるコンテナに易々飛び移って
そのまま裏側にいる敵を上から襲う
遠くからでも、その敵がルーカスの一撃によって四方に吹き飛ばされるのが見える
さすが、規格外の馬鹿力
コンテナの影に隠れながら、一進一退の攻防が繰り広げられる
何かを察知してコンテナの後ろに飛び退くヘンドリー
彼の周りには二人の敵が彼を殺そうと身構えている
だが、ヘンドリーは冷静だった
《ヘンドリーside》
そう、見くびられちゃ困る
今まであんまり戦闘とかは目立ってこなかったけど実は俺は動ける方なんです
敵はコンテナの後ろに隠れてるつもりみたいだけど
俺には関係ない
距離が近いから足音、息遣いで鮮明に位置は把握できるし
ギリ鼓動も聞こえそうだから相手の精神状態も分かる
服の擦れる音でどんな動きをしているかも完璧に分かるから。
ふーん、挟み撃ちにするつもりみたいだね
音を立てないようにコンテナの上によじ登って姿勢を低くする
案の定、二人の敵は同時に僕がさっきまでいた場所に素早い手つきで銃を突きつけるが
その場所に俺がいなくて、
突きつけた銃口がお互いに向いているのに驚きを隠せないようだった
ドンマイ、僕は君たちのつむじを見てるよ
僕は愛用しているアサルトライフルを二、三発ずつ相手に浴びせる
相手は血を吹きながら崩れ落ちる
それを見届けるとコンテナの裏側に降りる
見つけた
そこには兵が一人警戒しながら銃を構えている
ごめんね、緊張してるんだろうけど
呼吸音がデカくてすぐ分かっちゃったよ
俺は後ろから首目がけて蹴りを入れる
骨が折れる感触
僕は何気に第一部隊と第二部隊の訓練を行ったり来たりしているので体術もできる
射撃の腕だって悪くない。狙撃も使えるし
こう言った小銃系ならあなたとかジェヒョニヒョンの方が強いけど
あなたの次ぐらいにはうまい
僕の銃はAK 74 反動がでかいけど威力抜群の自動小銃
だいぶ前の話だけどジャニヒョンに見繕ってもらって、99の仲間と一緒に買ったものだ。
ほらここに、お互いに彫りあったサインがあるでしょ
シャオジュンはL129A1という狙撃銃
使い古してしまってもみんなで書いたサインの柄の部分をリメイクして使ってるの
可愛いでしょ
ルーカスは短機関銃
使えば爆発したみたいに目の前のものを飛び散らせることができる代物
まああいつは銃がド下手なんだけど。
いっつも戦いに行く時はお守りみたいに背中に背負ってる
あなたはジェヒョニヒョンのお下がりの拳銃の他に
タボールって名前のコンパクトで軽い小回りが効くアサルトライフル
ムカつくことにあいつはこれの扱いも上手い
不思議だなあ
この銃に刻まれた不格好なみんなのサインを見てるだけでなんでこんなに安心できるんだろう
これを見てるとまるで、あいつらがそばにいるような気がするんだ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!