第124話

睡蓮の花が開く
5,786
2021/05/15 15:00



作戦当日の昼


皆最終調節も終わり、あとは本番に備えるための時間が残された





いつも通りに振る舞う者、緊張を隠せない者、訓練に勤しむ者、できる仕事を続ける者、遺書を書く者、自分の好きなことをする者...





過ごし方は様々だ










そんな中でも流石は幹部。いつも通り過ごしている



テヨン
テヨン
みんなほんとにすごい冷静だね。もっと気が動転するものかと思ってたよ
ユウタ
ユウタ
そやなあ、でも今までこの時の為に準備してきたんやから
冷静なんも今までの苦労の賜物やな
テヨン
テヨン
そうだねぇ
あれ?そういえばあなたは?
ジョンウ
ジョンウ
あなたなら大学に行きましたよ
どうせしばらく行けないだろうからって休学申請をしに。
テヨン
テヨン
ああ、なるほどねえ
ユウタ
ユウタ
チソンは?あの子今日見かけてないけど
テヨン
テヨン
チソンは最後の任務だよ
アヴィリオとSWAが通信手段として使ってたネット媒体の解析のやつ
テヨン
テヨン
こっっっっそりアヴィリオの通信室に回線を繋いで調べてんの
ジョンウ
ジョンウ
あいつらが使ってるネットの文字は全てそのネットでしか使えない言語だって聞きました...いくら情報を盗んだところで文字が読めないから意味がないって有名です
それをどうやって解析するんですか?
テヨン
テヨン
あの子ね、独学で文字覚えたんだよ
ユウタ
ユウタ
はあ?!
ジョンウ
ジョンウ
嘘...
テヨン
テヨン
めちゃめちゃ複雑で2年ぐらいかかったらしいよ
ほんとに、あの子にしかできない作戦だよ
テヨン
テヨン
今日でその解析もようやく終わるって言ってた
だから最終作戦を今日にしたの
ジョンウ
ジョンウ
盗む情報を盗んでから
あとで手を打たれる前に潰すってことですね
テヨン
テヨン
そういうこと







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













《チソンside》




チソン
チソン
はあ...やっと終わった...!!!





ここはアヴィリオの通信室




ここにあるPCは他とない特殊なものだ


このPCに書いてある文字も他とないもの。つまりSWAとアヴィリオがやりとりをする時にだけ使われる世界一使える人数が少ない言語だ








アヴィリオ、SWA内でも使えるものはほんの一握りで5人もいないくらいだろう









この言語の解析は本当に苦労した


データが送られた時にその意味不明な文字データをわざわざここに潜入してコピーし
そのデータが送られた後にSWA、アヴィリオで変化したことを些細なことでもいいから書き出す

それを繰り返していくうちにじわじわと言葉を翻訳していった














全く、人身売買ビジネスを成立させるためだけに言語を一つ作ってしまうなんてその周到ぶりには狂気を感じるし、一周回って尊敬しそうだ












ほんとに、潜入だけでも大変なのにそこからバレないように解析しないといけないので本当に大変だった









不審に思われたら終わりなので見張りも護衛もおけない。















今までばれなかったのが奇跡でしかない



正直いつばれてもおかしくないから。















でもその苦労のおかげでSWAとアヴィリオの悪事に終止符を打つことができる情報が手に入った




この情報がなければむしろ全て終わらせることができないだろう











僕は解析を終えて片付けをする





この情報をみんなが分かる文字に起こすのは後だ
そんな時間はないから。今は早くここを脱出しなくてはならない





僕はテイルヒョンとあなたヒョンに解析終了を示す信号を送る

















とその時



































遠くからこちらへ数人の人が歩いてくる音が聞こえた














どんどんこちらに近付いてくる















まずい......!









よりによってなんで今なんだよ!















もう音はすぐ近くだ













もう間に合わない。












そう感じた僕は近くの窓から
外へ飛び降りる




















チソン
チソン
いっ....
















六階くらいの高さから飛び降りる






転がるように全身を使って衝撃を受け流すが


少し高さがありすぎた為全身に衝撃が走る









特に足。右足を捻挫したみたいだ









飛び降りた窓の内側からは何やら騒がしい声が聞こえる




....急いでここ場から離れなきゃ
















僕は痛む脚を引きずりながらその場を離れる





数十メートル先の角を曲がった瞬間

後ろから「いたぞ!!!!」と声が聞こえた










チソン
チソン
くっそ....!











僕は走り続ける






ちょうど橋の上に差し掛かった時



僕は緊急信号を送信しようとした瞬間

























首筋に何かが刺さった























チソン
チソン
睡眠薬...!

















そう呟いたところでもう遅い














送信機が手から滑り落ち、川に落ちる

















強烈な眠気が襲い、体がいうことを聞かずにフラフラする















遠くのビルの上にこちらを見下ろす人影が見えた















それを最後の景色として目の前が暗くなっていく




































僕は橋の淵から川になんの抵抗もなく落下する





























遠のく意識の中冷たい水に包まれるのを感じた

プリ小説オーディオドラマ