第93話

消して欲しいけど消さないで:3
5,533
2021/04/18 14:10

〈テンside〉
















ヤンヤンは多重人格だってことは分かっていた








最初に会った時から、僕には見えない人と話していた









ずっと独り言を呟くみたいに誰かと会話していた










ヤンヤンは「リウ君」がもう一人の自分だとは気づいてないみたい










ヤンヤンとリウ君のは2人でひとつの肉体にいる








ヤンヤンとリウ君が入れ替わる時は、決まってヤンヤンを守る時













だけど例外もあった









ヤンヤンの注目が他の人の誰かに、好意を抱いている時。















リウ君の嫉妬を買って体を乗っ取られるみたい




















リウ君は嫉妬深い








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ヤンヤン
ヤンヤン
だからね、僕がヒョンを守るよ
テン
テン
どうやって?
ヤンヤン
ヤンヤン
わかんない
ヤンヤン
ヤンヤン
でも、こうやって横にいてあげるね
テン
テン
…そっか、ありがとうね









そうやって言った瞬間、ヤンヤンの様子がおかしくなった





また1人で話し始めたのだ











リウ
リウ
何言ってんのヤンヤン、ヤンヤンは僕だけ見ておけばいいのに
ヤンヤン
ヤンヤン
でも、リウ君…僕はヒョンのこと助けたい
リウ
リウ
守る必要なんかない、ヤンヤンが危ない目に会うよ
ヤンヤン
ヤンヤン
でも…
リウ
リウ
僕にはヤンヤンしか居ないんだから。大人しく言うこと聞いてよ
ヤンヤン
ヤンヤン
い、いやだよリウ君…ちょっと怖いよ
リウ
リウ
ああ、わかんない奴

ちょっと体貸して





リウがそう言った瞬間、ヤンヤンの体がガクッと痙攣した











と思えば目がとてつもなく冷たく変わった















テン
テン
…?ヤン、ヤン……?
テン
テン
っ!!
テン
テン
お前…誰だ?!…っあ











ヤンヤン、いや「リウ君」が








僕に馬乗りになり、首を締めてきた













息ができない











頭に血が溜まる感覚












リウ
リウ
ねえ、ヤンヤンは僕のって分かってる?
リウ
リウ
これ以上近づかないでよ。ヤンヤンは僕が守るんだから
リウ
リウ
ねえ
リウ
リウ
ねえ
リウ
リウ
僕だけのヤンヤンなんだから
リウ
リウ
僕の席を奪おうとするからだよ
リウ
リウ
だからさ
リウ
リウ
死んでも仕方ないの
リウ
リウ
君が悪いの









そんなことを延々と聞かされ続ける










そんな声も、だんだん遠くなっていった



















リウ君が首を絞める力は恐ろしく強かった








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オークションに出品されて、保護された時







あなたが僕らの手錠を外しに来てくれた











その時、何となくヤンヤンの雰囲気がおかしくなったのを感じた




手足の枷が邪魔で近づくことが出来なくて。










あなたがヤンヤンの手錠を外した瞬間



ヤンヤンがあなたの喉元に飛びかかった











全体重をかけて飛びかかられたあなたは後ろ向きに地面に叩きつけらた








頭を強くぶつけたようで、抵抗出来ないみたいだがそれでも尚ヤンヤン、いやリウ君は容赦なくあなたの首を潰す勢いで締める





その時、僕やほかのメンバーも止めようとしたが複雑に絡み合った鎖がそうはさせず



リウ君なんかに声が届くはずもなかった


















でも、僕らは叫ぶしか無かった




















あなたは驚いた表情をしたまま床に叩きつけられて


朦朧とした意識のまま動くことが出来ずに、ただボーッとリウを眺めていた









口からツーっと血が流れ

意識が途切れる間近に










何故だろうか










あなたの手がリウの頭を優しく撫でた





その時のあなたの顔は首を絞められているとは思えないほど穏やかで、慈愛に溢れていて、どこか申し訳なさそうだった



まるで「もっと早く助けてあげられなくてごめんね」

とでも言うように。







その表情と行動にたじろいだリウに一瞬ヤンヤンが垣間見えた気がして、僕は懸命に叫んだ











テン
テン
ヤンヤン!!!!!!!!
ヤンヤン
ヤンヤン
!!!
テン
テン
ヤンヤンもうやめて………!





僕の声がトリガーとなって、ヤンヤンが体を奪い返した










そして自分がしてしまったこと、リウ君が自分だということに気づいたようで









痛々しい声で発狂すると






そのままあなたの上に折り重なるように倒れた





















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〈ヤンヤンside〉









多分ここは、僕の夢の中




いや






頭の中、いや








現代医学でも定義できないような空間








僕とリウ君だけの空間






リウ君はその空間の真ん中に。




どこまでも続いていきそうなこの真っ白空間の、何故ここが真ん中なのか分からないけど






とにかく真ん中に三角座りをして肩を震わせていた










ヤンヤン
ヤンヤン
…リウ君
ヤンヤン
ヤンヤン
泣いてるの?
ヤンヤン
ヤンヤン
どうして泣いてるの?




リウ君は涙でボロボロの顔をあげたと思いきやだんだんけたけたと笑いだした






ヤンヤン
ヤンヤン
何がおかしいの…
リウ
リウ
おかしいも何も!!!面白すぎるでしょ!!!!!
リウ
リウ
僕はヤンヤンのこと大好きで大好きで愛していてて、君のこと守ろうとしたけどさァ
リウ
リウ
結局!!君をズタズタに傷つけちゃった
リウ
リウ
ほんっとに…僕のばかばかばかバカバカ馬鹿バカァ………
ヤンヤン
ヤンヤン
リウ君……………
リウ
リウ
………ごめんねヤンヤン
リウ
リウ
君が僕を作ってくれて、嬉しかったの
リウ
リウ
君が僕を求めてくれて嬉しかった
リウ
リウ
君のためなら何だってできた
君のためなら何だってしようと思った

でもそれが空回りしちゃったみたい

ヤンヤンを傷つけちゃった。
僕にとって1番最悪なこと。
リウ
リウ
僕には、本当にヤンヤンしかいないからさ…
ヤンヤンに求められなくなったら僕は死んじゃうも同然
リウ
リウ
でも…僕はヤンヤンにとって良くない存在だったみたい

君のためならなんでも出来る、

だから君のためなら死ねる
リウ
リウ
本当は僕、いたらダメな存在だしね
ヤンヤン
ヤンヤン
…リウ君
リウ
リウ
でもね、ヤンヤン
リウ
リウ
僕っ…消えたくない…………っ









ボロボロと涙を零す











そんなリウ君を抱きしめた

ギューッと、ギューッと


ありったけの愛と感謝を伝えたくて



僕のために負ってくれた傷を癒してあげたくて










ヤンヤン
ヤンヤン
傷つけたなんて、君は僕のことをずっと守ってくれていたじゃないか…

君がいなかったら僕は死んでいたよ
リウ
リウ
でも………っ僕は…………
ヤンヤン
ヤンヤン
いいんだ、リウ
ありがとね
ヤンヤン
ヤンヤン
僕を守ってくれて
ヤンヤン
ヤンヤン
愛してくれてありがとう
リウ
リウ
………僕、ヤンヤンを愛していいのかな
ヤンヤン
ヤンヤン
もちろん

僕も愛してるよ
リウ
リウ
…!!!
リウ
リウ
僕…今、すっごい嬉しい…………






リウ君が涙を流しながら幸せそうな笑顔になる




その涙は、不思議なことにふわふわと周りに浮いている


ヤンヤン
ヤンヤン
リウ君、僕達ひとつになろう
リウ
リウ
…?!…いいの?
ヤンヤン
ヤンヤン
もちろん、君が負ってくれていた傷が僕に全部帰ってきたらそれこそ僕は死んじゃうだろうし…
ヤンヤン
ヤンヤン
それより
ヤンヤン
ヤンヤン
ずっと一緒にいて欲しいな
リウ
リウ
…!
リウ
リウ
僕もっ…ヤンヤンと一緒に居たい…!
ヤンヤン
ヤンヤン
あはは、それなら決まりだね
ヤンヤン
ヤンヤン
僕の体、君に半分あげる
リウ
リウ
…これで、これからもヤンヤンを守れる
ヤンヤン
ヤンヤン
うん、みんなには内緒だよ
リウ
リウ
分かった。僕達だけの







''秘密''











そう言うと僕らは両手を恋人繋ぎして向き合うと









おでこをトンと合わせる

















白い光が下から、風のように僕達を吹き上げ

包み込んだ















…これでいい







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ヤンヤン
ヤンヤン
いや、やっぱヒョン
思い出したわ
テン
テン
思い出した?
ヤンヤン
ヤンヤン
うん。これはどっちも僕だ







そう。僕らは2人で1人

















本物か?なんてそんなものは愚問だ






















答えは簡単


リウ君は僕を僕とする為の必要十分条件で


僕はリウ君をリウ君とする為の必要十分条件で















































一生の、大切な大切な友達なのだ

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