第6話

本当のお別れ
827
2023/01/27 07:23
神威が出ていってから数ヶ月
心なしか母さんの体調が悪化していっている気がする
江華
ゲホッゴホッゲホッ
あなた
、、、
 あるたな というものがない限り母さんは死ぬ
でも私はそれを見つけることすらできない
その自分を責める気持ちが鎖のように体に巻きついている
この気持ちから逃れるためには
この辛さを無くすためには
母さんから、、、家族から離れるしかないのだろう
母さんが辛そうにしている時にも自分のことしか考えられない私にまた腹がたった
ムクッ
草木も眠る丑三つ時
神楽も父さんも母さんもとっくに寝ている時間に目を覚ます
みんなが起きている時間に出ていったらきっと父さんも母さんも神楽もとめてくれるのだろう
でもそれではまた私はここに居てしまう
この辛さから逃れることはできなくなる
家族を悲しませることをしてまで
私は私のために生きるのだ
あなた
、、、
あなた
母さんのピアスとか髪飾りとか貰ってっていいかな
私は私のために生きると言っても今まで育ててくれた最愛の母から離れるのはやっぱり寂しい
何も言わないで貰っていくのだから泥棒と同じなのだろうけど
母さんの持ち物を一つ貰っていくことにした
たんすをあさりながら自分から家族を捨てて母の大事なものを持っていく自分は屑なのだと実感する
あなた
、、、ごめんね
あなた
母さん
江華
何をしてるの
あなた
!!!!!
慌てて振り返る
そこにはベッドから上半身を起こした母さんがいた
怒ったような顔をしている
あなた
あ、、、その、、、
いつも優しい母の怒った顔を見て全身から汗が吹き出してくる
あなた
ごめんなさい、、、
私が一言謝ると母はまた優しい顔に戻り
江華
おいで
と私に手招きした
江華
どうして私の物が入っているたんすをあさっていたの?
あなた
、、、
江華
あなた
あなた
、、、母さん達から離れようと思ったけど
あなた
少し寂しくて
あなた
いつでも母さんの事を思い出せるものが欲しかったの
あなた
ごめんなさい
ちらりと母さんの方を見ると悲しそうな顔をしていた
江華
あなたも行ってしまうんだね
江華
どうしてあなたまで似てしまうかな
あなた
、、、
江華
、、、いいよ
江華
ピアスも、髪飾りも、煙管も全部持っていきなさい
あなた
!、、、ありがとう
江華
でもその代わり
江華
少しは帰ってきなさい
ずっと会いにこないのは母さんも寂しいよ
と母さんは控えめに笑った
あなた
、、、分かった
あなた
必ずここに戻ってくる
全部ちゃんと約束するよ
江華
、、、そう
江華
行ってらっしゃい
あなた
うん!
その数日後だった
母さんが亡くなったという知らせが届いたのは

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