悠仁…お昼何がいいかな〜
それ、ご飯じゃないな…
考えているといい匂いがする
いいな。よし決めた
小さなそのパン屋にはメロンパンやチョココロネ、クロワッサンなんかも置いてある
そんな人気な商品は真ん中の目立つところに並んでいた
そのいわゆる「人気コーナー」から少し外れた横に並ぶカスクート
その商品の値段の横にはほかのパンには書かれていない文字が確かにある
悠仁、食べるかな?
ちょうどあと2つだったカスクートを手に取り、私はレジに向かった
映画もう終わったかな〜
寝てる…
呪骸を抱きしめてスヤスヤと寝息を立てる悠仁がソファーにいる
私はパンの入った袋をテーブルに置いて悠仁の左隣に座った
可愛い寝顔をチラチラと見ながらDVDのパッケージの裏面を読む
トンッ
悠仁の頭が私の右肩に寄りかかった
そっと呼びかけると、悠仁の左手が私の右手の上に重ねられ、そのまま手を繋がれた
でも悠仁の返事はない
その代わりに繋がれた悠仁の手首に黒い模様のようなものが見えることに気づいた
そう呼ぶと手を繋ぐ力が強くなる
急に心拍数が上がって顔が熱くなる
隣に寝てるのは悠仁なのに、私の手を繋いでいるのは宿儺様
そう言うと宿儺様の左手は離れてしまった
体を伸ばす悠仁の腕にはもう模様はない
私は小さくため息をついてテーブルの袋に手を伸ばす
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!