焦点の合わない目をしたまま、地面に落ちた箱抱きしめる
私よりも大きくて、暖かい彼は
私の手に収まるほど小さく、冷たかった
暫くは動かせないね
なんて誰かが近くで言っている気がする
でもそんなのもどうでもよかった
ああ、私、悟がまだ好きだったな
宿儺様に怒られちゃうな
殺されるかな
宿儺様に殺されるなら本望か
でも今は…全部…全部
全部全部全部全部
お願い…
…ペラッ
恵くんの家の大掃除を手伝っていたはずが、いつの間にか押し入れにあったアルバムをめくっていた
ムスッとする恵くんを横目に次のページをめくる
津美紀ちゃんと女の人のツーショット…
この人…私の母親にそっくりだな…
伏黒……まさかね
でも、
ピコンッ
恵くんのスマホが鳴った
あれ、なんだろう
私この先…知ってる
それで、この後こう言うんだ
「五条さん、これからここに来るみたいですよ」
「あなたさん帰りますよね?」
それで私は、
「え、マジ?帰るわ、ありがと恵くん」
飛んでる
確かに私はさっきまで2018年にいた
全部戻ればいい…そう願ってた
すぐ帰るから待ってて、と恵に伝え私は彼の誕生日ケーキを求めて外に出ていた
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。