「今日は遅くなっちゃったなー」
今日も無事仕事が終わり満員電車に揺られてやっとの事で家についたあたし。
ふう。今日もよく頑張ったな自分。
なんて事を思いながらこの無駄に長い階段を残り少ない体力で昇って
鞄からガサゴソとまだまだ真新しい部屋の鍵を取り出す。
今日はもう疲れたし早くお風呂入って寝よう。
よし、家についてからの今日のプランは『即風呂、寝る』これで決定だ。
なんてそんな事を考えて自分の部屋へと続く廊下を歩いている時だった。
何やら少し違和感を感じて、ふと歩みを進める足を止める。
「ん、待って。誰か居るぞ」
すうっと目を細めて数メートル離れたところから凝視してみると
なんとあたしの部屋の扉の前にキャップを被ったグラサン男が居るではないか。
あ、もしかしてまたあの隣人の求愛という名の嫌がらせか。
そんな嫌な予感を感じながらあたしは仕事で疲れた足をめいいっぱい速く動かして扉の前まで全力疾走。
「ちょっとあなたね、本当いい加減に…っ、」
「ああ?」
いい加減にして!そうもの凄い勢いであの隣人に怒鳴りつけてやろうと思ったのに。
何ということでしょう、いまあたしの目の前にいるその男は、
「…へ、おたくどちら様」
「なにお前」
あたしの全く知らない人でした。
ちょっと待て。この怖そうなお兄さんは一体誰なの。
なんでこんな突然人んちの前に佇む怪しい人に睨み効かされなくちゃいけないのだろうか。
「誰だよお前」
「いや誰やって…あなたこそ誰ですか」
そんな我が身の顔で玄関の前に座られちゃたまったもんじゃないです。
ああ、今日は長くなりそうだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。