第12話

その12
1,180
2018/04/08 10:45
「しっかし無愛想な女だな、ほら笑ってみ」



「仕方ないだろあなた照れてんだよきっと」




なにに照れるんだよ。ほら、笑ってみ。なんて半ば脅しにも似たような勢いでそう言われる始末。



なんであたしがこんな目に合わなくてはいけないのか。




ああ、神様いったいあたしが何をしたって言うんですか。





未だ険しい顔で笑えとあたしに言い続ける男と


満面の笑顔でほら笑ってみなよ。なんて言い続けるこの男。




ほんといい加減にしてくれ。あたし明日も仕事なんだよ朝早いんだよ。



なんでこんな馬鹿げた茶番に付き合わされなくちゃいけないの。





「おい、いい加減笑えっつの」




なんで中島には笑えて俺には笑えないんだよ。




なんて最早無茶苦茶な言いがかりをつけながら彼の大きな手が



あたしの顔目掛けて近づいて来るではないか。




今度は何事かと思ってギュッと目を閉じてみると頬に感じる何かの違和感。





「いいか。笑うときはこうやって口角を上げんの」




閉じた瞼を押し上げてみると視界に写りこんだのは



むにゅ。そんな効果音がつきそうなぐらいの勢いであたしの頬を両手で掴んで



無理やり口角を上げて笑顔を作ろうとする強面男の姿があった。

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