「ああ、もしかしてお前中島の新しい女?」
「はあ?」
いきなりなにを言ってるんだこの人。
人んちの目の前に居座るあげくに、あたしがあの隣人の彼女だって?
んな事あるわけ無いでしょう。
冗談も程々にして欲しいわ。
ん?いやちょっと待てよ。
今なかじまって言ったよねこの人。
ってことは要するにこの人はあのお隣の知人ってことだ。
ああ、またあたしは知らぬうちに隣人絡みのトラブルに巻き込まれてるじゃないか。
「最悪だよ…」
「なに、なんか言ったか」
「いえ、別に」
つくづく思う、ほんと最近のあたしってついてない。
そうしてあたしは誰にも聞こえない大きな溜息を心の中で吐き出した。
「にしても中島ってかなりタイプ変わったんだ」
「な、なんです急に」
自分の運の無さにゲンナリしていると突然さっきまで扉にもたれ掛かる様に座っていた彼が
いきなり立ち上がってあたしの顔をまじまじ見つめてくるではないか。
ほー、なるほど。
なんてブツブツ独り言を言っては穴が開くんじゃないかってくらいの視線をぶつけて来る。
勿論その彼の顔に表情はない、いわゆる無表情でだ。
ああ、誰か助けて下さい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。