「あなたんちってテレビとかないの?」
「ん?テレビぐらいありますけど」
それがなにか?彼の言葉に不思議そうにいると少し考えた顔をしてこう言ってきたのだ。
「ふーん。ま、そのうちわかるだろ」
「なにがです」
「あは、ないしょ」
「………」
なんだろう、なんか腹立つな。
まあ、ここは気にしたらあたしの負けだと言うことだろう。
何はともあれお隣さんの顔色もマシになってきた事だしそろそろおいとまさせて頂くとするか。
よいしょと重たい腰を持ち上げてベットへ横になっているお隣さんへと視線を向ける。
「どうですか?楽になったんならあたしそろそろ部屋戻ります」
「なに、もう帰っちゃうの」
「帰ります。風邪の時は安静第一ですからゆっくり寝て下さい」
それではお大事に。
そう言ってお隣さんの部屋を後にしようとしたら、なにやら右手首に違和感。
「なんです、この手」
「あなたが帰ったら俺寂しい」
「なに言ってんすかあなた子供ですか」
違和感の感じた右手首に視線を向けるとあたしの手をぎゅっと握って
離そうとしないお隣さんの大きな手がめいいっぱい視界に入り込む。
ほんといい加減にしてほしいのだけれど。
「なあ、あなた知ってる?」
「なにをです」
「うさぎって寂しすぎると死んじゃうって」
「それが?」
「俺もうさぎみたいな男なんだ」
「……」
「今ここでお互いの愛を確かめあおう」
ベットの隅に寄っていかにもあたしに来いと言わんばかりに
ベットをぽんぽん叩く己の欲にまみれた男が一名。
この時初めてあたしは人に対して憎悪という感情が芽生えた瞬間でした。
「あんたなんか一生風邪で寝込んでればいいわ!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。