「いける」
「なにが」
やっと返事が返って来たと思えば案の定、意味の分からない返しで。
いけない。あたしったら初対面の人に思いっきりタメ口きいちゃったわ。
「下の名前なんて言うの?」
「え、あなたですけど」
「あなたねえ、」
「は、はあ」
なんだろう、もの凄く嫌な予感がするのはあたしの考えすぎなのだろうか?
こうなんか背筋辺りがすーっとする。
「俺は中島健人って言うんだけどケンティーって呼んでよ」
「は、はい?」
これはなんと言うべきか、全く意図的な物が見えないのだけれども。
てか、ケンティーてなんだ。
なにそのよくわからん呼び名は。
てか、会った瞬間から呼び捨てですか。
馴れ馴れしいにも程があります。
「あ、あのすみません。あたし今から用がありまして」
とりあえず身の危険を感じたあたしは粗品の洗剤を半ば無理やり彼に渡すと、
すぐさまこの場から早く立ち去る事を決意。
「そんな用事より俺達の愛を深める事が先だろ」
「………」
やばい。やばいぞこの人。
酔ってるのか?
それとも笑えないギャグでもかましてるつもりなのか。
「とりあえず、さよなら」
あたしは小走りでその場から去ろうとする。
この人と関わってはいけないと本能的に体がそう言っている。
「ちょっと待ってよ」
「まだ何か」
「なんならいっそのこと俺の部屋に住めばいいよ」
「、」
ああ、駄目だ。この人本気の顔して言ってやがる。
「どうした?」
「永久的にさようなら!」
ここは逃げるが勝ち。
ということであたしはもの凄い勢いで部屋へと戻ったのである。
ああ、お母さん。やっぱり1人暮らしなんて早すぎたのでしょうか?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。