外出先で用事を終え、夕方帰宅途中のあなたが、
キズク高校のある山のすそのの近くを通りかかり、角を曲がった時だった。
あなたは、ラフなTシャツを着た男を視界に捉えた。
それ自体は特に不思議なことではないのだが、その後ろ姿は見覚えのある細身の短髪だった。
せっかくだから、話しかけようとあなたは歩調を早めたが、
コンパスの長い、前を歩く滝川との距離は、なかなか詰められない。
だが、帰る方向も同じなので、
何となく後を追っている様な状態になったあなたは、
滝川が途中にある公園に入っていくのを見て、
本格的に後をつけている気分になった。
そこには、高校生くらいに見える、目のぱっちりとした女がいた。
タイトなスカートがよく似合っている。
前を歩く滝川はあなたには
気付かないようだ。
見つかる!と思ったあなたはとっさに滑り台の裏に隠れた。
女は全く気づかず、話を続ける。
あなたは今帰ろうとすると確実にふたりに見つかってしまうため、
動くに動けず、立ち尽くしたまま、女の告白に衝撃を受けていた。
滝川は頭をかきながら、話しだした。
その女は首を振った。
滝川は目を細めて、女をじっと見据えた。
女は急にうつむいて泣きそうな表情になった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。