第56話

アイドルついに告る!相手は……!
74
2023/12/07 06:55
外出先で用事を終え、夕方帰宅途中のあなたが、
キズク高校のある山のすそのの近くを通りかかり、角を曲がった時だった。

あなたは、ラフなTシャツを着た男を視界に捉えた。

それ自体は特に不思議なことではないのだが、その後ろ姿は見覚えのある細身の短髪だった。
(なまえ)
あなた
(ゆ……うたくん!)
せっかくだから、話しかけようとあなたは歩調を早めたが、
コンパスの長い、前を歩く滝川との距離は、なかなか詰められない。

だが、帰る方向も同じなので、
何となく後を追っている様な状態になったあなたは、
滝川が途中にある公園に入っていくのを見て、
本格的に後をつけている気分になった。
(なまえ)
あなた
(この間はあっちから話しかけてきたし、
私も話しかけたほうがいいのかな?
でも誰かと待ち合わせかも知れないし、
やめやめ、気付かれない内に早く帰ろ……
って待ち合わせてるのは…………女?!)
そこには、高校生くらいに見える、目のぱっちりとした女がいた。 
タイトなスカートがよく似合っている。
前を歩く滝川はあなたには
気付かないようだ。
滝川 優太
滝川 優太
あのさー、話があるってンなら、学校でよくねーか?
同じ学校じゃねーか。あれ、違ったか?
橋沢
橋沢
……その程度の認識なんだね。だけど、私は、私には……。
私は滝川くんを見るだけで元気がもらえる。
一生懸命がんばってる姿を見るだけで、
私も、がんばろうって思えるの
(なまえ)
あなた
(こ……これは、まさか……)
見つかる!と思ったあなたはとっさに滑り台の裏に隠れた。
女は全く気づかず、話を続ける。
橋沢
橋沢
だから、今日は私ちょっとがんばる。
好きです、滝川くん。
彼女いるとか、好きな人がいるとかってうわさは聞いたことないよ。
私と付き合ってくれませんか
あなたは今帰ろうとすると確実にふたりに見つかってしまうため、
動くに動けず、立ち尽くしたまま、女の告白に衝撃を受けていた。
(なまえ)
あなた
(ゆうたくん、そんな素振りは全く見せないくせにもてたんだ。
考えてみれば、当たり前かぁ。
すごいピアニストだし、背だって高いし、優しいし、
あんな綺麗な女の子らしいコから告白もされるんだ……
あなたは思った。
私とは世界が違うのかも……)
滝川は頭をかきながら、話しだした。
滝川 優太
滝川 優太
橋沢よォ、お前が頑張ってるのは実はちゃんと知ってる。
おめーのこといいっつってるのも、
オレの周りに何人もいるぞ?
ピアノしかねェオレなんかより、
もっと同じ時間を共有できるヤツが……
その女は首を振った。
橋沢
橋沢
滝川くん!
あなたほど一途にがんばってる人は確かにいないよ!
私ならあなたの道を邪魔しない。
陰からずっと支えてあげられる
橋沢
橋沢
ピアノの、次でもいいの。
あなたが辛い時、くじけそうな時、
それを少しでも分かちあってくれたら、
それほど嬉しいことはないの
滝川は目を細めて、女をじっと見据えた。
滝川 優太
滝川 優太
そうだよな。
じゃあオレも本音で話す
滝川 優太
滝川 優太
他人を好きになるってのは理不尽な想いに
何度も何度も駆られなきゃならねェ。
オレなんか四六時中そうだ
橋沢
橋沢
え……滝川くん……やっぱり……ずっとあの子のこと……
女は急にうつむいて泣きそうな表情になった。
滝川 優太
滝川 優太
そんな想いをお前にさせちまったことは申し訳ねェと思う
滝川 優太
滝川 優太
でもオレも、この想いだけは譲れねーんだ……

プリ小説オーディオドラマ