さわやかな風がそよぐ夕暮れの中
ギターを携え子丘を散策する少年がひとり。
少年は少しだけ考える。
山頂で木陰に入り水分補給をしていると
どこからか信じられないくらい美しく、透明感のある歌声が聞こえてくる。
声のする方へと近付いていくと、ひとり空を仰ぎながら目を瞑って歌うのは
何とも麗しい女のコだった。
遠慮なく近づいて、近づきまくって
この顔が目を開けたらどれだけ美しいのだろう?
と少年は想像した。
息がかかるくらいまで接近し
彼女からふわりと漂う甘い匂いを吸い込んだところで
女のコはぱちっと目を開けて固まった。
どんっ!
少年を突き飛ばして女のコはその場から逃げ出そうとした。
べーっと舌を出すあなた。
女のコは去ってしまったが、
舌を出した時のあまりに可愛らしい姿は、揚塩の心に刻みつけられた。
ふと地面がきらきら光っている気がしてしゃがみ込むと
落ちていたのは小さな蝶のチャームが付いたペンダントだった。
揚塩はペンダントをポケットにしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。