バスのドアが開く。
彪翔先輩はそう言って手を差し出してくれた。
段差を気遣ってくれてるんだ……
なんて優しい!
これはモテるわ……
そして、私たちは2人がけの席に座った。
近い……
男の子とこんな近い距離なんて初めてだよ。
緊張する。
周りを見渡してみると、彪翔先輩を見ている女子高生もいた。
さすが、彪翔先輩。
多分、いや絶対、私は釣り合ってないって思われてるよね。
なんで……か。
自分でもよく覚えてないけど……
それから15分ほどして水族館前のバス停に着いた。
私たちは受付に行き、お金を払う。
真っ暗な空間に
青い綺麗な海。
その中にはそれぞれの生き物が自由に泳ぎ回っている。
周りを見渡せば、小さな水槽も。
水族館なんていつぶりだろう。
なんだか懐かしいような気もする。
それから私たちは各ブースを回った。
大好きなイルカショー!
そうして私たちは会場へ向かうことに。
席に座ると、もう少しで始まるというアナウンスが流れた。
それから少しして出てきたイルカは宙を舞い、華麗な動きを見せた。
先輩と言葉を交わしながらバスを待っていると、あっという間に来てしまった。
行きは先輩の質問だったから、帰りは私が質問しちゃった。
この言葉を聞いた時、2つの感情が入り混じった。
好きって言われた嬉しい感情。
でも、いつかは先輩にとって何人もいるたった一人の元カノになること。
今こんなことを考えるのはどうかしてるのかもしれないけど、ちょっと悲しくなってしまった。
大丈夫……大丈夫。
私は自分にそう言い聞かせた。
私たちはお金を払い、バスを降りた。
本当に楽しかった。
大好きな人と、こんなことができるなんて
最高だな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!