第11話

デート
209
2020/05/17 04:41

バスのドアが開く。
彪翔先輩
大丈夫?

彪翔先輩はそう言って手を差し出してくれた。


段差を気遣ってくれてるんだ……


なんて優しい!

これはモテるわ……



そして、私たちは2人がけの席に座った。





近い……

男の子とこんな近い距離なんて初めてだよ。


緊張する。


周りを見渡してみると、彪翔先輩を見ている女子高生もいた。


さすが、彪翔先輩。


多分、いや絶対、私は釣り合ってないって思われてるよね。
彪翔先輩
そーいえばさ、なんで引き受けてくれたの?
桜木 菜乃花
え?
彪翔先輩
あの日のこと。

なんで……か。


自分でもよく覚えてないけど……

桜木 菜乃花
私、彪翔先輩に憧れてて、少しでも先輩の役に立てるならって思って気づいたら返事しちゃってました。
彪翔先輩
そっか。ありがとね。
桜木 菜乃花
ど、どういたしまして……?

それから15分ほどして水族館前のバス停に着いた。

私たちは受付に行き、お金を払う。


桜木 菜乃花
わぁ〜!!きれい〜!

真っ暗な空間に

青い綺麗な海。


その中にはそれぞれの生き物が自由に泳ぎ回っている。


周りを見渡せば、小さな水槽も。



水族館なんていつぶりだろう。


なんだか懐かしいような気もする。


彪翔先輩
すげぇな。
桜木 菜乃花
綺麗ですよね……

それから私たちは各ブースを回った。

彪翔先輩
イルカショー、見に行く?
桜木 菜乃花
はい!見たいです!

大好きなイルカショー!


そうして私たちは会場へ向かうことに。

席に座ると、もう少しで始まるというアナウンスが流れた。

彪翔先輩
楽しみだな。
桜木 菜乃花
はい!

それから少しして出てきたイルカは宙を舞い、華麗な動きを見せた。

彪翔先輩
すごかったな。
桜木 菜乃花
可愛かったですね。

先輩と言葉を交わしながらバスを待っていると、あっという間に来てしまった。


桜木 菜乃花
先輩は……どうして私と付き合ってくれてるんですか?

行きは先輩の質問だったから、帰りは私が質問しちゃった。

彪翔先輩
好きだからでしょ。他に何がある?

この言葉を聞いた時、2つの感情が入り混じった。



好きって言われた嬉しい感情。


でも、いつかは先輩にとって何人もいるたった一人の元カノになること。


今こんなことを考えるのはどうかしてるのかもしれないけど、ちょっと悲しくなってしまった。

彪翔先輩
どうした?
桜木 菜乃花
あ、いえ!大丈夫です!

大丈夫……大丈夫。


私は自分にそう言い聞かせた。

彪翔先輩
じゃあ、降りようか。
桜木 菜乃花
はい。

私たちはお金を払い、バスを降りた。
桜木 菜乃花
今日は楽しかったです。ありがとうございました。
彪翔先輩
こちらこそ、ありがとね。

本当に楽しかった。


大好きな人と、こんなことができるなんて


最高だな。

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