第29話

お姉ちゃん
231
2018/06/16 12:32
僕の両親はリンク場を経営している
いつも忙しそう。
《ニチの面倒はお姉ちゃんが見てくれるから》
お母さんはそう言って、受付にまわる。
僕はお姉ちゃんが嫌いだった
お姉ちゃんが居るから
僕はお母さんと遊べないんだって
お姉ちゃんは
両親の愛情を独り占めできたんだって
ずっと妬んでた。
そこは治安の悪い事で有名な地域。
でも大きな建物も。
大きなリンク場だってある。
…そのリンク場が僕の実家なんだけどね、、
だから誘拐だなんて日常茶飯事。
…もう一度言うけど
僕はお姉ちゃんの事をずっと妬んでた。
でも違ったみたい
お姉ちゃんが誘拐された。
多額の身代金。
誰も払えなかった。
だからお姉ちゃんは助けられなかった。
誰も…なにもしなかった。
後日。リンク場の前にお姉ちゃんが倒れていた
…息絶えていたよ。
お姉ちゃんが両親に向けられていたのは
愛情じゃなくて〈便利な物〉という価値観。
…僕は臆病だ。
お姉ちゃんを助けられなかった。
お姉ちゃんを悲しく思えなかった
与えられたのは恐怖。それだけ
次は僕の番かも知れないという恐怖。
お姉ちゃんが居なくなっても両親は変わらなかった
変わったのはただ一つ。
〈お姉ちゃん〉って言わなくなった事。
それぐらい。
両親には僕達子供はどうでもよかった。
ニマナト
また…失うのかな…

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