…シーズンに入ってからは
仕事は極力無くして練習に専念する
私が滑るのは一人孤独のリンク上。
時々どこかへ逃げ出したくて
飛んで行きたくて私のタイミングでジャンプする
…ちょっと回転足りなかったかな…
自問自答で動き続ける
…止まったら死んでしまうかもしれないような
消えてしまうような…そんな感覚に近付いてく
だんだん体から熱が消えてゆく
寒い寒い
凍え始める体を無視して
まだ滑る
いつもは見守ってくれてる
アロタは居ない
このリンクには一人だけ
孤独を殺せば
死に去らせ…
ねぇお願い…
誰か…私を…
《止めて》
気付かなかった…
気付かなかった。
ほのかに香る優しい匂い…
体格的に男性だろう
でも不思議と恐怖心は無かった…
ねぇ教えて
抱きついてまで私を止めてくれたあなたは誰?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!