第10話

突然の連絡。
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2022/01/09 23:16
センラside
あの事件以来、俺はなるべく定時で帰ってくるようにした。テレワークできる日はテレワークにして、志麻と過ごす時間を増やしたんだ。
もう彼を、あんな目に遭わせないために。
月崎 志麻
月崎 志麻
センラさん〜
黄百合 センラ
黄百合 センラ
ん?
月崎 志麻
月崎 志麻
なんかね、孤児院の人から電話かかってきたの。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
孤児院の人?
月崎 志麻
月崎 志麻
うん。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
そっか、ありがとう。 


…もしもし、黄百合です。
孤児院の人
『あ、ご無沙汰しております。』
黄百合 センラ
黄百合 センラ
どしたんですか?
孤児院の人
『いえ、実は志麻くんのことで…』
黄百合 センラ
黄百合 センラ
志麻?
月崎 志麻
月崎 志麻
ん?
孤児院の人
『志麻くんの家族、ずっと見つかんなかったんですけど、先日孤児院に電話が入りまして。』
黄百合 センラ
黄百合 センラ
はぁ…
嫌な予感がする。
心臓の音がうるさい。冷や汗が頬をつたって手に落ちる。
孤児院の人
『志麻くんの叔父にあたる方が、志麻くんを引き取りたいと言ってまして。』
黄百合 センラ
黄百合 センラ
そう…ですか。
孤児院の人
『はい、なので1週間後にお伺いします。それまでに、志麻くんに荷物をまとめておくよう言っておいてください。』
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…わ、かり、ました

でも、志麻の依存性についてはどうするんですか?
孤児院の人
『カウンセリングに通わせるそうです。
それでは、1週間後によろしくお願いします。』
電話をきった後、俺はしばらく俯いて動けなかった。

隣で志麻が心配そうに見てるのがわかる。
月崎 志麻
月崎 志麻
センラさん、ねぇなんの電話だったの?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…志麻。
月崎 志麻
月崎 志麻
ん?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
志麻の家族…見つかったんやって。それでな、志麻のこと、その人が引き取りたいらしいんよ。やから、一緒に過ごせるのはこの1週間が最後や。
月崎 志麻
月崎 志麻
え…なんで?
月崎 志麻
月崎 志麻
志麻やだよ。センラさんと一緒がいいよ。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…これは、もう決まったことらしいから。
月崎 志麻
月崎 志麻
…そっか。そうだよね、センラさんは、志麻がいない方が楽だもんね?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
え…
月崎 志麻
月崎 志麻
ごめんなさい、わがまま言って…
黄百合 センラ
黄百合 センラ
志麻。
そんなこと、思ってない。俺だって君を手放したくないんや。
月崎 志麻
月崎 志麻
ん?
大好きだよ、愛してる。

でも、それを伝える勇気は俺にはない。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…最後の1週間、志麻のやりたいこと全部やろう。
月崎 志麻
月崎 志麻
ほんと?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
1週間、俺ずっと家にいるから。志麻が行きたいとこ、食べたいもの、やりたいこと、欲しいもの、全部全部俺が叶えたるから
月崎 志麻
月崎 志麻
…うん。




君と過ごす最後の1週間、君は、楽しんでくれるだろうか。

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