志麻side
目が覚めると、見慣れた光景が広がっていた。
いつもと違うのは、隣にセンラさんが居ないこと。
家を探していると、リビングに置き手紙があった。
志麻くんへ センラさんより
今日はちょっと大事な会議があるので、早めに出ます。帰りもちょっと遅いかも…
出かける時は鍵をきちんと閉めて、お留守番しててね。
志麻くんはじめての留守番やね。
宅配来たら玄関前に置いといてもらって。
夕飯はいらないからね。志麻くんとご飯食べたかった〜(泣)
テレビとか好きに見てていいからね。
夜更かししないでちゃんと寝てね。
夜更かししないでって…俺あと3ヶ月で18だよ?
いつまでも…子供扱いしないでよね。
首につけてるネックレスを握る。
はじめて会った時に、センラさんがくれたネックレス。
俺の…宝物…なんだ。
呟いてみるけど、寂しさは無くならない。
はじめて…1人になってわかった。
逢えないほどに…愛おしくなる。
わかってる。わかってるの。
センラさんが俺を見てないことくらい。
俺はセンラさんの性処理道具であって、俺も依存性を保護してもらってる。
いわば、共生ということだ。
でも…
望んでは行けないの?
センラさんの全てを、望んでは行けないの?
センラさんの全てを、欲しては行けないの?
ネックレスを握りしめて座り込んだ。
大好き。大好きだよ。
センラさんが、大好き。
そばにいて欲しい。いつもみたいに、抱きしめて欲しい。
知らずのうちに涙が零れる。
こんなにも…人は人を愛することが出来るのか。
たった1日離れるだけでも、こんなに寂しい…
1秒もとても長く感じる。
センラさんがいれば、1秒も1分も1時間も1日もすぐなのに。
こんな無愛想な俺を家に置いてくれて、めんどくさいだろうに抱いてくれて、ずっとここにいていいって言ってくれた。優しいセンラさん。
センラさんが帰ってきたら、いっぱいお疲れ様って言うんだ。
それで今日は、俺から抱きしめるんだ。
早く帰ってきてね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。