咲side
小学校の入学式の日、先生はそう言った。
その頃の私は、自信過剰だった。
なんにでもハキハキしていて、成績も人当たりも良く、誰からも褒められ、叱られない。
他の子と違って完璧だと思っていたのだ。
今日も完璧にできた。そんな事を思いながら席につくと、隣の子がすっと立った。
音を感じさせない、不思議に美しい動作だった。
滑らかで、きれいで、安らぐ声。
他の人の目など気にせず、自分のペースで堂々とやるそのひとつ結びの少女。
不思議と当時の私は、それに惹きつけられた。
知りもしないのに、「カラフルピーチ、面白いよね」と話を振るくらいに。
彼女はふにゃっと笑って、「うん」と言い、好きなところをぽつぽつと並べてくれた。
翌日から私がカラフルピーチを猛勉強したのは、言うまでもない。そして見事にハマったわけである。
彼女と親友と言えるほどに仲良くなったある日の昼休み、無性に眠かった。
それはもう、とっても眠かった。でも、寝れない。彼女にそれを言ったら。
とくすくすしながら言った。
まさかそんな。と思った直後に、彼女の声に安らいでる自分もいた。
あとから知ったことだが、彼女のような声は、1/fゆらぎ、というそうだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。