第10話

敗北ヒーロー(2番)
84
2020/05/29 13:24
俺は…できるんだ…!
そう思ってカバンを持ち、
子犬のように走った。



亜樹斗
亜樹斗
ここが…オーディションのビル…
俺は今から俳優のオーディションを受ける。

俺は昔、戦隊ヒーローに憧れて俳優になると言って何もしてこなかった…
だから…!




審査員
審査員
とりあえず、お題を発表するね
亜樹斗
亜樹斗
は、はいっ!
審査員
審査員
えーっと、親族が亡くなった時の演技をしてくれ
審査員
審査員
よーい…
審査員
審査員
アクション




俺は兄ちゃんが亡くなったから、その気持ちはよく知っている。
簡単だ!

そう思っていた…


亜樹斗
亜樹斗
え、あ…
亜樹斗
亜樹斗
な、なんで…こんな事に…
カタカタ…

自分の演技に自信がなくて、声も震えて体も強張る。それ以上にダメだったのが顔だ。


今の俺は悲しんでいる顔じゃない






審査員
審査員
はぁ…もう良いぞ
亜樹斗
亜樹斗
はい…
審査員
審査員
お前才能ないわ
審査員
審査員
他の道に行け
亜樹斗
亜樹斗
すいません…




モブ
モブ
あいつ演技下手すぎだろw
俳優なめてんなw
ぐっ…
          〜塾〜
先生
先生
えーと…ここだが…亜樹斗!
答えれるか?
亜樹斗
亜樹斗
は、はいっ!
亜樹斗
亜樹斗
え、えーっと…
亜樹斗
亜樹斗
分かんない…です…
先生
先生
はぁー…
じゃあ直人!これ答えろ!
モブ
モブ
はい!12.73です!
先生
先生
完璧だ
モブ
モブ
ちゃんと予習しとけよバーカ
名門行きたくないならくんなよ(コソッ)







         〜帰り道〜
やっぱり俺…ダメなのかな…?

ゴロゴロ…

ザーーー



雨が降ってきた。






冷たい雨粒が頬に触れた。
でも、


頬を流れ落ちて行ったのは、


雨だけじゃなかった。






          〜家〜
目が腫れてる…
















…やっぱ、俺ダメなのかな?

やっぱ、やっぱ恥ずかしい。



でも、…でも…!

諦めたくない…!



バンバン!
俺は胸を叩きながら言った。

亜樹斗
亜樹斗
出来る!出来る!俺は出来るんだ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
兄
誰かに笑われる。
兄
そんな人生だって、信じてきた道のりは間違ってないんだ…!
兄
お前にはあるはずだ…赤い果実が…
兄
お前のすぐそばに赤い果実があるはずじゃないか!
兄
どんなに辛いことがあっても…乗り越えていける…!お前なら!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
亜樹斗
亜樹斗
兄ちゃん…
兄ちゃんはもういないけど、俺にはそう言ってる兄ちゃんが見えた。
兄
敗北ヒーローだろ?
亜樹斗
亜樹斗
でも、でも…
俺は…
亜樹斗
亜樹斗
恥ずかしいんだ…
亜樹斗
亜樹斗
それに負けてしまう。
亜樹斗
亜樹斗
心が砕けてしまう…!
兄
…そんな時は、また俺が道を開いてやる!
亜樹斗
亜樹斗
え…?
兄
お前はその叶えたい道を突き進むんだ!
亜樹斗
亜樹斗
兄ちゃん…
兄
俺がついているから…絶対乗り越えられる!
そして、すぐそばに赤い果実がある限り、一緒に笑っていられる!
そんな…夢を見よう…?
亜樹斗
亜樹斗
うん…!!!
      2人「どんなに転んでも
        何度だって這い上がるさ
        そうさ、僕たち敗北ヒーロー
        前を向いて…
        進め…!ヒーロー…!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者
作者
ふへへへへへへ…

プリ小説オーディオドラマ