第8話

彼のモノ
神様


私に救いは有りますか?


此の愚か者に


救いは有りますか?


最後の希望は


「死」以外に無いものでしょうか


「生」を得る事は許されないのでしょうか


あぁ、どうして、どうして私は


記憶を、全て失ったのでしょうか。












神に縋れば、救われる気がした。
さすれば、屹度、助けてくれる人が現れると思った

だが、そんな人、誰一人として現れなかった。自分は必要とされていないと呆然に理解した。だから死のうとする

けれど、彼は、私を











求めている














火針「・・・雅、琴羽・・・」

聞き覚えの無い言葉。
「私の名前」ではなかった。知り合いか?厭、分からない。

中也「記憶が或る時は手前は俺の彼女だった」

漸く、彼が太宰の事を口にする私を嫌うのか分かった。其れなら、そうと、云って呉れれば佳かった・・・、何て、言い訳になってしまうか。

火針「其れは、本当に私の名前か」

中也「あ・・・?手前、何云って・・・」

火針「私は、琴羽でも、火針でもない。」

・・・己の本名など、とっくのとうに捨ててしまっていたから、今まで嘘を付いていた、何て、凄く酷い女だ、私は。

長い沈黙が続く。
口を開くのも億劫だ、此の場から去りたい、其の想いだけが募った。

火針「こ、コンビニ行ってくる。」

・・・何て、其れも又、嘘だ。





太宰「君から電話だ何て、珍しいね。」

火針「あ、嗚呼・・・一寸な。」

唯一の救い?彼の言葉には何度も救われた。今の私には、彼に頼る以外、他に手立てが考えられなかった。

太宰「・・・何かあった?」

そう聞かれた時は、嗚呼、本当に此奴には敵わないな、と実感した。

火針「・・・キス、された」

誰に、とは云わないが、恐らく予想がついたのか、顔が曇った。

太宰「嬉しくは、無いのかい?」

火針「・・・解らない、卦度、あまり、気分は宜しくない」

其の言葉を聞いて、何故か彼は安心していた
何を安心しているんだ、と云おうとしたが、彼からの口付けで、云う間も無くなってしまった。・・・酷い事に、彼の様に気分が悪くなる事は一切無かった

火針「ん・・・っぐ・・・」

捩じ込まれる様に、口の中に彼奴の舌が入ってくる。もう、周り何て気にしない、と云う様に。






太宰「っ・・・・・・狡いよ、君」

火針「は、・・・?っ何が、狡い・・・」

太宰「私に、何れだけこんな事をさせたら気付いて呉れるんだい、もうそろそろ気付いて呉れ」

顎に手を置かれ、無理矢理上を向かされる。
又、キス・・・されるのだろうか。其れは其れで、悪くはない。

卦度、唐突に、彼の橙色の髪が頭に浮かんだ

太宰「・・・ねぇ、火針ちゃん。君は、中也が好き?」

火針「・・・解らない、昔の私は、好きだった」

太宰「へェ、今は違うのだね。」

火針「煩い・・・」

太宰「なら、私のモノになる気は無い?」













・・・は?