神様
私に救いは有りますか?
此の愚か者に
救いは有りますか?
最後の希望は
「死」以外に無いものでしょうか
「生」を得る事は許されないのでしょうか
あぁ、どうして、どうして私は
記憶を、全て失ったのでしょうか。
神に縋れば、救われる気がした。
さすれば、屹度、助けてくれる人が現れると思った
だが、そんな人、誰一人として現れなかった。自分は必要とされていないと呆然に理解した。だから死のうとする
けれど、彼は、私を
求めている
火針「・・・雅、琴羽・・・」
聞き覚えの無い言葉。
「私の名前」ではなかった。知り合いか?厭、分からない。
中也「記憶が或る時は手前は俺の彼女だった」
漸く、彼が太宰の事を口にする私を嫌うのか分かった。其れなら、そうと、云って呉れれば佳かった・・・、何て、言い訳になってしまうか。
火針「其れは、本当に私の名前か」
中也「あ・・・?手前、何云って・・・」
火針「私は、琴羽でも、火針でもない。」
・・・己の本名など、とっくのとうに捨ててしまっていたから、今まで嘘を付いていた、何て、凄く酷い女だ、私は。
長い沈黙が続く。
口を開くのも億劫だ、此の場から去りたい、其の想いだけが募った。
火針「こ、コンビニ行ってくる。」
・・・何て、其れも又、嘘だ。
太宰「君から電話だ何て、珍しいね。」
火針「あ、嗚呼・・・一寸な。」
唯一の救い?彼の言葉には何度も救われた。今の私には、彼に頼る以外、他に手立てが考えられなかった。
太宰「・・・何かあった?」
そう聞かれた時は、嗚呼、本当に此奴には敵わないな、と実感した。
火針「・・・キス、された」
誰に、とは云わないが、恐らく予想がついたのか、顔が曇った。
太宰「嬉しくは、無いのかい?」
火針「・・・解らない、卦度、あまり、気分は宜しくない」
其の言葉を聞いて、何故か彼は安心していた
何を安心しているんだ、と云おうとしたが、彼からの口付けで、云う間も無くなってしまった。・・・酷い事に、彼の様に気分が悪くなる事は一切無かった
火針「ん・・・っぐ・・・」
捩じ込まれる様に、口の中に彼奴の舌が入ってくる。もう、周り何て気にしない、と云う様に。
太宰「っ・・・・・・狡いよ、君」
火針「は、・・・?っ何が、狡い・・・」
太宰「私に、何れだけこんな事をさせたら気付いて呉れるんだい、もうそろそろ気付いて呉れ」
顎に手を置かれ、無理矢理上を向かされる。
又、キス・・・されるのだろうか。其れは其れで、悪くはない。
卦度、唐突に、彼の橙色の髪が頭に浮かんだ
太宰「・・・ねぇ、火針ちゃん。君は、中也が好き?」
火針「・・・解らない、昔の私は、好きだった」
太宰「へェ、今は違うのだね。」
火針「煩い・・・」
太宰「なら、私のモノになる気は無い?」
・・・は?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!