ごぽっ・・・。
耳に水が入る、口から酸素が漏れ出る
太宰に教えて貰った此の死に方、上手く出来てるかなぁ・・・。
沈みゆく、己を感じながら、見覚えの有る男の表情が脳裏に浮かんだ。
火針「・・・はぁ。」
目が覚めて、一番に出るのは、何時も、溜め息。
火針「・・・中也、起きろ!」
この上無い程の不服感を感じながらそう告げると、薄目を開けたと思えば、直ぐ様私を認知したと同時に、跳ねる様に起き上がり、私の顔をペタペタと触り、ボロボロ涙を流した。
途切れ途切れに「佳かった、佳かった」 何て、助けたのはお前だろこの善良マフィア。
別に、私は君と付き合っていないんだが。分かってるのか?其れ。・・・心中なら大歓迎だけど、そうでも無いだろアンタは。顔面偏差値の暴力振ってくんの取り敢えず辞めろ。
火針「何で、助けたのさ」
実質、太宰にアドバイスされた自殺法を試そうとしたが、毎度中也に阻止され、挙げ句の果て、一番嫌だった入水迄したのに、此れ又止められ。
太宰にはする気無いんだろうな、何て考えていると
中也「・・・何、莫迦みてェな事・・・云ってンだよ・・・」
火針「・・・死にたくなけりゃあんな事しない。」
キッパリと、否、堂々と?そう口から流れ出た。罪悪感などは一切無い。君の相棒でも無いし、ましてや恋人でも無いのだから、私が何処で死のうが勝手では無かろうか。
火針「僕が死ねば、僕と云う足枷が無くなる。君、大層僕の事嫌ってたじゃないか。」
ツンデレ、天の邪鬼、意気地無し。
火針「ねぇ、君と出逢って二ヶ月の経った今日が命日が佳かった。どうして君は其処迄・・・」
と、其の時。
太宰「・・・バア。」
火針「おぉ!太宰じゃないか。私の御見舞い!?」
太宰「やあ火針ちゃん!今日は災難だったね!」
我が同士、盟友、理解者!
中也は相も変わらず嫌そうな顔をしている。
火針「中也、私の友人が来たのだからもう少し表情を変えてくれ」
中也「百歩譲って此奴が手前の友人だとしても俺は此奴だけは許さ無ェ」
本当に嫌いだな・・・、然し、次の自殺法はどうするか
太宰「まあ、こんな病室に籠っていても暇だろう?一緒に外に行かないかい?」
火針「是非是非!じゃ、そういう事だから!」
中也「ちょっ、手前なぁ・・・!!」
私が何処に行こうと、私の勝手なのに。
太宰「・・・・・・・・・中也、未だ云えてないんだァ」
中也「・・・煩ェ」
太宰「早く云った方が佳いよ、彼女の事・・・」
中也「ンな事ァ分かってる」
私は知らない。覚えていない。
数年前の記憶さえ、全て、消えてしまったから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。