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第9話

愛していたよ。
彼がそう、云った時だった。



太宰「っ・・・君って、本当に乱暴だね・・・」

中也「・・・元より、此の心算だったのか」

太宰「いやぁ、火針ちゃんに記憶があれば、こうはしなかったかな」

中也「・・・」

火針「ちょ、ちょちょちょ!」

慌てて止めに入る。
此処で乱争何か起こされたら堪ったもんじゃない!近隣に迷惑が掛かる。

火針「先ずは、家に帰って・・・」

・・・あれ、帰っても、意味が無いんじゃ・・・

中也「あァ、そうだなァ?」

嫌味を混ぜて、彼そう言った。気付いてやがる。

太宰「・・・火針ちゃん、今日は武装探偵社に泊まっていかないかい?と云っても、私の社員寮だがね」

・・・嗚呼、バチバチしている。
正直どちらも選びたくない、そして帰りたくもない。だって、襲われそう・・・

火針「わ、私は、別の所に用事が・・・」

中也「俺にも云え無ェ用事か?」

太宰「私にも云え無い用事かい?」

ハモってくるのは、止めてくれ。
あー、今すぐにでも逃げたい、どうにかして此の悪空間から走って逃げ出したい・・・

火針「ま、まあな、じゃあ!!」

よし、逃げ出そ・・・

中也「何処に行くのか、云いやがれってンだ。」

ひえぇぇ・・・、背筋が凍る・・・。

太宰「・・・まあまあ、火針ちゃん。其処まで中也を否定しなくてもね。今日の所は家に帰ると良い。・・・そして、厭になれば私の元へ来てくれて構わないよ」

冗談には聞こえなかった。
寧ろ今すぐにでも向かいたいとも思った。だけど、其れを為れば、中也が奈落に落ちるみたく絶望してしまいそうな気がした。だから厭だった。其れも、厭だった。












火針「分かった、またな、太宰。」


私は、もう、そう答える他無かった──────。


き、気まずい!
其れもそうだ、矢っ張り、矢っ張り太宰の所に行けば良かった!嗚呼、莫迦だ私・・・!
そう、激しく後悔した。

中也「・・・本当は、ずっと気付いてた」

重々しい空気の中、彼は、そう、真実を告げた。

中也「何時からか、手前の視界に俺が居ねぇ事も分かってた、だがよ、それでも手前は俺の彼女で、手元に置いて起きたかったンだよ。
俺は手前が好きだ、愛してる、だから、好きじゃなくても善い、傍に居てくれるだけで・・・」

火針「其れ、本当に愛と呼べるか」

彼が葛藤し見出だした答えだとは理解している、だが私の考えはそうでは無かった。

火針「それは愛より、束縛、独占欲に近い、君は私が好きなのでは無く、「昔」の私を好いているのだろう。だが、残念ながら私は昔の、君の知っている火針には程遠い存在だ。
君が、私に好意を寄せて呉れているのは有り難い。だが、私にはそうもいかないんだ、御免、中也」

否定している間、彼は小さく

「嘘だ」

「厭だ」

と呟いていた。
其れも、そうか。彼女の口から、こんな事を云われる何て、何よりも絶望的で悲しく、辛い。

火針「だから、君とは・・・」

そう、云い切るが早いか、強く抱き締められるのが早いか。

中也「・・・なァ、そんな事云わないで呉れ、手前は俺の彼女で」

火針「もう君の知っている彼女じゃない」

中也「嘘だ、そんなの絶対認めねェ」

火針「・・・・・・認めるも何も、事実だ。」

中也「厭だ、俺から離れて行かないで呉れ」

火針「・・・御免な、中也。












愛していたよ。」

















私が彼に告げる言葉は、最後を予感せざるを得ない雰囲気を纏ってしまった。