彼がそう、云った時だった。
太宰「っ・・・君って、本当に乱暴だね・・・」
中也「・・・元より、此の心算だったのか」
太宰「いやぁ、火針ちゃんに記憶があれば、こうはしなかったかな」
中也「・・・」
火針「ちょ、ちょちょちょ!」
慌てて止めに入る。
此処で乱争何か起こされたら堪ったもんじゃない!近隣に迷惑が掛かる。
火針「先ずは、家に帰って・・・」
・・・あれ、帰っても、意味が無いんじゃ・・・
中也「あァ、そうだなァ?」
嫌味を混ぜて、彼そう言った。気付いてやがる。
太宰「・・・火針ちゃん、今日は武装探偵社に泊まっていかないかい?と云っても、私の社員寮だがね」
・・・嗚呼、バチバチしている。
正直どちらも選びたくない、そして帰りたくもない。だって、襲われそう・・・
火針「わ、私は、別の所に用事が・・・」
中也「俺にも云え無ェ用事か?」
太宰「私にも云え無い用事かい?」
ハモってくるのは、止めてくれ。
あー、今すぐにでも逃げたい、どうにかして此の悪空間から走って逃げ出したい・・・
火針「ま、まあな、じゃあ!!」
よし、逃げ出そ・・・
中也「何処に行くのか、云いやがれってンだ。」
ひえぇぇ・・・、背筋が凍る・・・。
太宰「・・・まあまあ、火針ちゃん。其処まで中也を否定しなくてもね。今日の所は家に帰ると良い。・・・そして、厭になれば私の元へ来てくれて構わないよ」
冗談には聞こえなかった。
寧ろ今すぐにでも向かいたいとも思った。だけど、其れを為れば、中也が奈落に落ちるみたく絶望してしまいそうな気がした。だから厭だった。其れも、厭だった。
火針「分かった、またな、太宰。」
私は、もう、そう答える他無かった──────。
き、気まずい!
其れもそうだ、矢っ張り、矢っ張り太宰の所に行けば良かった!嗚呼、莫迦だ私・・・!
そう、激しく後悔した。
中也「・・・本当は、ずっと気付いてた」
重々しい空気の中、彼は、そう、真実を告げた。
中也「何時からか、手前の視界に俺が居ねぇ事も分かってた、だがよ、それでも手前は俺の彼女で、手元に置いて起きたかったンだよ。
俺は手前が好きだ、愛してる、だから、好きじゃなくても善い、傍に居てくれるだけで・・・」
火針「其れ、本当に愛と呼べるか」
彼が葛藤し見出だした答えだとは理解している、だが私の考えはそうでは無かった。
火針「それは愛より、束縛、独占欲に近い、君は私が好きなのでは無く、「昔」の私を好いているのだろう。だが、残念ながら私は昔の、君の知っている火針には程遠い存在だ。
君が、私に好意を寄せて呉れているのは有り難い。だが、私にはそうもいかないんだ、御免、中也」
否定している間、彼は小さく
「嘘だ」
「厭だ」
と呟いていた。
其れも、そうか。彼女の口から、こんな事を云われる何て、何よりも絶望的で悲しく、辛い。
火針「だから、君とは・・・」
そう、云い切るが早いか、強く抱き締められるのが早いか。
中也「・・・なァ、そんな事云わないで呉れ、手前は俺の彼女で」
火針「もう君の知っている彼女じゃない」
中也「嘘だ、そんなの絶対認めねェ」
火針「・・・・・・認めるも何も、事実だ。」
中也「厭だ、俺から離れて行かないで呉れ」
火針「・・・御免な、中也。
愛していたよ。」
私が彼に告げる言葉は、最後を予感せざるを得ない雰囲気を纏ってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。