第4話

もしもの噺
火針「なあ、太宰。若し私が君に心中しようって云ったらどうする?」

・・・唐突な質問の投げ掛けだと、自分でも分かっていた。然し、ずっと前から、気になっていたのだ。
自分が、太宰と、心中したいと云ったら、彼は、何と云うのだろうか・・・、と。

太宰「其れは・・・」

何やら驚いた様な表情で此方を見つめる。
何故彼がこんなに動揺しているのか、私には分からなかった。然し、その瞬間

中也「火針!!」

珍しく、大きな声を出して、私の腕を凄い力で握っていた。

火針「っ、中、中也…?」

その表情は怒りに満ちていて、私を殺そうとする勢いだった。別に、死ぬのには抵抗は無い。只、只。


・・・・・・・・・彼に手をかけられるのは生きる事よりも辛く、苦く、嫌に感じた。

太宰「・・・中也。」

中也「煩ェ、糞太宰は黙っとけ」

今すぐ、此の手を離して近くの道路に飛び出たかった。そしたら痛くても死ねるし、彼を見なくても佳いと感じたからだった。つまりは、此処から逃げ出したいのだ。此の最悪と感じる空気間から、此の状況から。

火針「離、せ、・・・」

死にも感じなかった、此の恐怖。
嗚呼、怖い。人間の恐ろしさよりも酷く、彼の方が恐ろしい、そう感じる自分も、その自分を殴りたくなる自分もいる。

中也「・・・帰るぞ」

その言葉に、否、指示に。
従うと何か悪い事が起きる様な気がする・・・そう感じると共に、手を振りほどいた。

火針「・・・っ、帰りたくない・・・、」

振り絞る様に出たのが、其れだった。
彼を睨む様に見た。


・・・けれど、先程の怒りの表情は無く、只、何か、辛そうな表情で、何かに、見放された、悲しい、表情だった。
其れと、同時に其の表情をさせたのは己だとも、何の訳も無く、理解できた。

太宰「・・・こんな所で立ち話も何だし、今日は解散するかい?火針ちゃん。」

此の状況で笑えるのは、屹度、彼だけだと思う、などと考え乍、その“解散”に、応じる他無いのだ、とも考えた。

火針「・・・分かった」

渋々では有るが、彼に連れ帰られる事にした。















嗚呼、どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
彼が怒っている理由も何も、分からない。
己はこんなにも鈍感だっただろうか、其れすら私にはもう分からない。

中也「・・・火針。」

火針「っ・・・、あ、ど、どうした?」

中也「・・・先刻は、悪かった」

・・・すんなりと、彼の口から零れた。
別に、怒ってなどいないのに、少し、否、凄く?愛らしく、思えた。
然し、其の言葉には続きがあった

中也「・・・死にてェ何て、云うんじゃ無ェよ」

火針「・・・は?」

中也「手前は忘れてるだろうがよ、俺は全部覚えてンだ、死んだら許さ無ェからな」

・・・此の男は何を云っているんだ?全く訳が分からない。私が、忘れている?何を。

火針「頭の螺子でもぶっ飛んだか?」

何て、冗談半分に云ってみる。

中也「・・・有る意味、そうかもな」

・・・珍しい。此の男が莫迦にした言葉に反論しない何て、明日は槍でも降るのか。








冗談にも、ならないな