第9話

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2021/07/06 13:07
                                  「「ッッ___いってぇ…」」
後ろから突然声がする。
それは、聞いたことがある声。
いや、ついさっきまで聞いていた声。
俺は唾を飲み、振り返った。
目の前には頭をポリポリとかいているゾムの姿があった。
さっきと雰囲気がまるで違く、獣のような目付きで俺を見る。
その目に飲み込まれそうで、冷や汗が止まらんかった。
ゾム
お前すげぇなぁ
トントン
な、なんで…
驚きのあまり少し後ずさりをする。
俺の姿を見てゾムは少し笑った。
ゾム
お前運動神経並外れてるんやなぁ…
トントン
ゾム
鬼ごっこ…続けよか(ニッコリ)
そう言ってゾムはどこに隠していたのか、ナイフを持って俺の方へ走ってきた。
武器を向けられたんやから仕方ない。
俺はナイフを取りだし、ゾムから逃げるように走る。
なるべく傷つけたくはないと思った。何故かは知らん。
ゾム
クハハハww
狂ったような笑い声を上げながらひたすらに俺を追いかけてくる。
捕まったらマジで殺されそうやなぁ
なんて呑気に考えながら、ゾムをまく方法を考えていた。
ゾムの足はそこまで早くない。一応少しずつだが差ができている。
でも体力少ないおじさんの俺にいつまで耐えれるのかわからん。
少しずつ息が上がってきた。
早めに手を打たなければ。
ゾム
なぁに考えてるの〜?(ニコニコ)
トントン
うっさいわ〜近寄らんといて〜
ゾム
え〜お兄さんとお話しよーやー
トントン
やーだーナンパー?(棒)
ゾム
ふっww
顔も、目も合わせることなく謎の茶番が繰り広げられる。
距離ができてきたので複雑なパイプが無数にある工場に駆け込み、身を潜める。
もちろんゾムも着いてきた。が、一応見つかってはい無さそうだ。
ゾム
どこや〜?
カツ、カツ、とゾムの足音が響く。
静かになったと思い息を潜め、隙間からゾムを見る。
ゾムは立ち止まり、ナイフを力強く握っていた。
嫌な予感がする。
次の瞬間、ゾムは俺の方に向かってナイフを投げてきた。
幸い、頬をかすっただけですんだがもう数ミリズレていたら俺は死んでいた。
トントン
ハァッハァッハァッハァッ
冗談ではなく息が上がる。声が漏れる。
ゾム
みーっけ♪
そう言ってゾムは俺の方へ歩み寄った。

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