第10話

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2022/12/26 13:37




男は私に傘を自分は濡れているのに私を濡れないように傾けた




私はその傘を相手が濡れないように逆に押しのける





神代 類
おやっ、つれないねぇ
東雲 あなた
…誰



男は口元に手をやりふふっと笑う







神代 類
同じ高校なら僕のこと知っていると思っていたけど転校生となるとやっぱり知らないか
神代 類
僕は神代類、君は東雲あなたくんだね?
東雲 あなた
…なに、有名人なの?
なんで私の事知ってるの?
神代 類
今すぐにでも話したいところだけれど
このまま居てはずぶ濡れな君が冷えてしまう
神代 類
…僕の家に行かないかい?
東雲 あなた
は?初対面で行くわけなくない?
神代 類
それじゃあ寧々を呼ぶかい?
東雲 あなた
……?
……あ、草薙サン
神代 類
幼なじみでね、2人きりが嫌なら
呼ぶけれど…
東雲 あなた
…いいよ、迷惑かけたくないし
東雲 あなた




神代サンからは特に嫌な感じはしないしついて行くことにした




なぜ私の事、私の名前を知っているか多少は疑問が残るけれど、ほぼ何も持っていない私にとっては行く場所はそこしか無かった





私よりだいぶ背の高い神代サンはロボットや、発明のことなどを話してくれたが私はほぼ聞いてなかった







東雲 あなた
…部屋汚
神代 類
心外だねぇ…




掃除が苦手でね…と少し恥ずかしそうに答えながら神代サンは言った





部屋には天井まで浮いている色とりどりの風船や、作りかけのロボット






東雲 あなた
…ほんとに高校生?
神代 類
それはこっちのセリフだねぇ
東雲 あなた
は?
神代 類
そんなに怒らないでおくれよ
神代 類
まぁまぁとりあえずシャワーでも浴びておいで
神代 類
体冷えてるだろう?




この服サイズを母さんが間違えて1回しか使ったことないから使っておくれ

と言って渡された紺色のパーカー、神代サンの中学時代のジャージを渡された






東雲 あなた
( どこまでもお人好し )
東雲 あなた
私に優しくしても何も無いのに
東雲 あなた
バカみたい





シャワーを浴びながらボソリと呟いた



その声はもちろん誰にも届かない








東雲 あなた
シャワどーも
神代 類
おや、随分と早いね
東雲 あなた
何してんの?
神代 類
次のショーに使う装置を作ってるんだ



話によると、どうやら神代サンは近くの遊園地のショーキャストをやっているらしい





そしてその演出家として舞台に使う装置やロボットを作成しているとの事だった







東雲 あなた
…凄いね、没頭できることがあるって
神代 類
おや、君は無いのかい?
東雲 あなた
……




曲作り、と即答できるほどでは無いソレを私は私自身どう思っているか分からない








東雲 あなた
ない
神代 類
……そうかい
東雲 あなた
でも
東雲 あなた
…曲作り、好きかも
神代 類
曲……?



あ、私何言ってるんだろう





こんな初対面の人に






東雲 あなた
作ってたんだ
神代 類
どんな曲を作っていたんだい?




神代サンは手にドライバーを握りながら聞いてきた







東雲 あなた
…いや、それ言う必要なくない?
神代 類
えぇ、なんでだい?教えておくれよ
東雲 あなた
良いでしょ、別に





近くのソファに座り、私は神代サンをジロっとみた








東雲 あなた
…なんでそんなに興味を持たれなきゃいけないの
東雲 あなた
私は…
東雲 あなた
誰かに自分を理解して欲しいなんて
思わないのに





私のことを知っても何にもならない






なのにどうして






私が信用していない人に私を教えなきゃ行けないの







私は、私だって








……



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