男は私に傘を自分は濡れているのに私を濡れないように傾けた
私はその傘を相手が濡れないように逆に押しのける
男は口元に手をやりふふっと笑う
神代サンからは特に嫌な感じはしないしついて行くことにした
なぜ私の事、私の名前を知っているか多少は疑問が残るけれど、ほぼ何も持っていない私にとっては行く場所はそこしか無かった
私よりだいぶ背の高い神代サンはロボットや、発明のことなどを話してくれたが私はほぼ聞いてなかった
掃除が苦手でね…と少し恥ずかしそうに答えながら神代サンは言った
部屋には天井まで浮いている色とりどりの風船や、作りかけのロボット
この服サイズを母さんが間違えて1回しか使ったことないから使っておくれ
と言って渡された紺色のパーカー、神代サンの中学時代のジャージを渡された
シャワーを浴びながらボソリと呟いた
その声はもちろん誰にも届かない
話によると、どうやら神代サンは近くの遊園地のショーキャストをやっているらしい
そしてその演出家として舞台に使う装置やロボットを作成しているとの事だった
曲作り、と即答できるほどでは無いソレを私は私自身どう思っているか分からない
あ、私何言ってるんだろう
こんな初対面の人に
神代サンは手にドライバーを握りながら聞いてきた
近くのソファに座り、私は神代サンをジロっとみた
私のことを知っても何にもならない
なのにどうして
私が信用していない人に私を教えなきゃ行けないの
私は、私だって
……
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。