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第1話

一章、なんで生きるの?
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2018/08/25 17:44

「キーンコーンカーンコーン(チャイムの音)」

高校生になり始めてのテスト−中間テストが終わり、クラス全員が
喜びをみせていた。ただ一人を除いては…

僕−唐木 楓は高校一年生、初めてのテストに
緊張しながらも、自己採点では悪くなかったと思っている。
僕自身もテストが終わって達成感と喜びを感じた。
しかし彼女−嵯峨野 椿は無表情で帰り支度を始めていた。
僕は入学して直ぐに彼女に一目惚れした。
同じクラスでしかも隣の席になれて凄く喜びを感じた。
でも特に話題もあるわけでもなく、
とりあえず初対面だからということで
「よろしく」とだけ言った。すると彼女は
「君はなんで生きるの?」と言ってきた。
僕はこの言葉に聞き覚えがあったが思い出せず
反応に困ってる間に彼女は何処かに行ってしまった。
結局それ以降必要最低限の会話しかせずもう
五月末になっていた。
テストの次の日、朝学校に来ると嵯峨野さんがいなかった。
嵯峨野さんはいつも誰よりも早く来て空を見ていた。
何を考えてるか気になったこともあったが
話しかけはしなかった。
と思ってる間に予鈴がなり、急いで自分の席に座る。
いつも通り先生が来て出欠をとった。
どうやら風邪をひいて嵯峨野は休みだそうだ。
かと言って特に変わることなく1日過ごし
放課後は部活に励んだ。
帰り際に僕のクラスの担任−阿良先生に呼び止められた。
嵯峨野のお休み連絡を届けてくれと住所と地図を渡された。
なんで僕が…と内心思っていた矢先、先生が
「ごめんな、実は嵯峨野の家は誰も近い人が居なくて
そこで優しそーな唐木に頼む事にしたんだよ」
僕は渋々納得し電車で1時間かけて嵯峨野さんの家にいった。
インターホンを押すと嵯峨野本人が出てきて
「何で唐木くんが?」と聞いてきた。
そりゃそうなるだろうなっと納得しつつ
先生との話をそのまま彼女に言った。
「そうなんや、ありがとう唐木くん。疲れただろうし家に入る?」
僕は少し遠慮ぎみになりながら家に入れてもらった。
「普通に話をするのは、久しぶりだね」と笑顔で言われ
僕は嵯峨野さんって笑うんだと少し驚いた。
学校で笑ったところを一度も見た事がなかったからだ。
「嵯峨野さんって笑うんだね」というと
「失礼な人ですね、まあ学校では笑わないように頑張ってるので
仕方ないですけど」と少し笑いながら言われた。
「そういえば嵯峨野さん、入学式の日の
質問ってどういう意味?」と聞くと
「そのままの意味だよ。私には何故生きるのかがよく分からなくて
夢叶えても、したい事いくらしても、死んだら全て消えてしまう。
だから唐木くんは何故生きるのかなって思って聞いただけ」
そう聞いて僕はびっくりしつつも
「僕は死んだらとかは考えずに、今夢のために、したい事のために
生きてる。死は誰しも必ず訪れるものそれを考えてても
仕方がない、そう思ってる」そう答えた。すると
「すごいポジティブだね。私には全然その感覚がわからない」
と言われた。
僕は「なら僕が嵯峨野さんに生きたいって思ってもらえるようにする。
絶対に」と勢いで言ってしまった。
「唐木くんは優しい人やね。でもそれはできないと思うけど」
真剣な顔でそう言われた。
この時、既に日は暮れ始めていた。

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