結局あの後やっぱり心配だから
なんて言って
彼は放課後にしていたカラオケの約束を蹴って
私の病院に着いてきてくれた
お腹いっぱいになるまで食べて
そのあと軽く雑談をした
違う
そんなふうに言いたいんじゃない
ただ
彼の一言、一言に期待してしまうから
そんな自分が嫌だから
釣り合うわけのない
叶うわけのない
そんな恋愛は嫌だから
ほらまた
悲しそうな顔をして
私を見つめる彼
好きにならないわけがないのに
なんで私を苦しめるんだろう
思わせぶりなこと言うくらいなら
関わること自体やめてほしかった
彼は優しく微笑んで
私の涙を拭ってくれた
そのあとも彼は私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた
そう言うと
彼はまた笑って
と、私の手を取って歩き出した
次の日
校門をくぐった時からなにかおかしかった
靴箱を開けると
中からギュウギュウ詰めになったガラスの破片が出てきた
手から血を流しながら
変な目で見られながら
1人で片付けた
明るく振舞ってみたけど
彼にはすぐバレたみたいで
事情を話した
すると彼は怒って職員室に向かっていった
1人取り残された私は
1時間目を知らせるチャイムに隠れるようにして
静かに泣いた
スクールカウンセラーの先生の後ろに
校長と担任がいた
3人は私の目をしっかり見て
心配そうな表情をしていた
いや
虐められてないと言え
そんな表情をしていた
それからの毎日は地獄のようだった
日に日にエスカレートしていく虐め
私は学校に着くや否や
トイレに駆け込んで吐いてばかりいた
家族には心配をかけたくなくて
何も言わずに毎日学校に行った
それは彼にも同じように
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。