第2話

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2021/05/08 12:45



ぼくは、かねてから好意を抱いていた担任の先生のもとへ行った。
教諭室のドアをノックしてはいると、先生が教材を持つぼくに気づいて笑いかける。
「あ、浅野くん。いつも授業の準備とか任せちゃってごめんなさいね」
「いいえ。学級委員ですし」
「浅野くんが気がきくから、先生もすぐ頼ってしまうの。いけないくせね」
「平気ですよ。好きでやってますから。それより、これ差し入れです」
「え?」
「はい」
ぼくは、栄養ドリンクを取り出すと、キャップを外して渡した。
「栄養ドリンク?」
「ええ、先生おつかれだろうし、すこしでも元気が出ればなって」
「浅野くん……ありがとう。いただくわ」
そう言ってニコリと笑うと受け取り、そのまま口に持っていく。
ゴクゴクと喉を鳴らしながら、先生は飲んだ。
ぼくはその様子を、高揚する気分とともに見守った。
「ん、おいしい。先生元気が出たわ」
「よかったです」
「あ、もうこんな時間。次の授業はじまっちゃうわね。浅野くんは先に教室に行っててね」
「はい」
ぼくは、会釈をすると背を向けた。
教諭室を出る際、一度先生のほうを見る。
次の授業で使う教科書やプリントの支度をする先生。
まだ、なんの変化も見られない先生から視線を切ると、ぼくは部屋をあとにした。


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