第62話

路地裏の戦い.°
22,630
2020/07/12 09:14
「あぁ……ありがとう、ありがとう!」


「ちょっと君、フラフラじゃないか……!?それに、一体何者______」


あなた「職場体験中の雄英生です!すみません、回復したばかりなのに申し訳ないですが、エコー通りってどこですか!?」


「え、エコー通りは裏手の道を進んでいって……」


あなた「ありがとうございます!!」





手当たり次第に救出していたら、時間がかかってしまった。


もう何度も回復を使ってしまい、相当疲労が来ている。



急がないと……!


エコー通り4の……4の、なに!?



ああああああああ忘れたぁぁぁぁ!!



飯田𝓈𝒾𝒹𝑒.°




轟「なりてぇもんちゃんと見ろ!!」



飯田「_________!」




なにがヒーローだ……。


友に守られ、血を流させ……。



ヒーロー殺しステイン。



やつに罪を思い知らせんがために、僕は兄の名を使った。


目の前のことだけ……自分の事だけしか見えちゃいない!!




『天哉が憧れるっつー事は俺、すげぇヒーローなのかもなっ。ははははっ、』




俺の……なりたい、ヒーローは……。





お前の言う通りだ。
ヒーロー殺し……。




僕は彼らと違う。





未熟者だ。




足元にも及ばない!




それでも_______。





力の入りきらないその拳に、無理やり精神を集中させた。







緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°



ステイン「言われた事はないか。個性にかまけ、挙動が大雑把だと!!」




ステインの刀が、轟くんの腕に当たる寸前。




緑谷「轟くん!!」




飯田「レシプロ……バースト!!!」




!!!



飯田くん、ステインの個性の効果が切れたのか……!



ギリギリの所で飯田くんの蹴りが命中して、ヒーロー殺しは後ずさった。





……まだ、まだ動けない……!!





轟くんを狙った小刀が、それを庇った飯田くんの腕に命中した。




飯田「早く!!」




足を凍らせるようにお願いした飯田くんに、轟くんが氷を出す。




緑谷「……まずい!!!」




最初に倒れていたネイティブさんに向かって、刀が空中から振り下ろされる。




轟「_______、!」





間に合わな______、





キーーーッッン、





緑谷「…………え、」



ステイン「……!?"百々あなた"……」



あなた「やっと見つかった……!!」




肩で呼吸をするあなたが、ネイティブさんを庇うようにそこに立った。





あなた「なにこの状況……、飯田くん!?いずくんも!?」





そっか、職場体験が轟くんと一緒だから……!



あなたも居れば現状が大分変わるぞ……!





あなた「_______ぅ、」




しかし同時に、あなたは頭を抑えてよろけて体制を崩した。


なんとか倒れずに踏みとどまったその左脚に、ヒーロー殺しの小刀が突き刺さる。




あなた「ぅあ……っ、」



轟「あなた!!!!」





まずい……、!動け、動け僕の足……!!!





轟くんが離れた所から氷を出し、あなたとヒーロー殺しの間に壁を作った。



即座に立ち上がったあなたは、ネイティブさんを軽々と持ち上げて後方へ下がる。




まだ体調が優れないのか……!?



明らかに様子がおかしい。





緑谷「……!!血が……!」




ヒーロー殺しの手元には、最初にあなたが弾き飛ばした刀があった。
 

僕が最初に舐められたくらいの血がしっかりと付いている。




ステイン「…………お前は、殺さない」




ペロ と、その長い舌で舐められた直後、あなたの体が前のめりに倒れた。




あなた「ぅ……なに、これ……動かな、」



緑谷「やつの個性だ……!あなた血液型は!?」



あなた「……?B……だけど、」



ステイン「(都合がいい。最後までそこで止まっておいてもらおう)」
※ ステインの個性はO<A<AB<Bの順で拘束できる時間が増えます




壁を伝ってヒーロー殺しが飯田くんの方へと攻撃を仕掛けにいく。





緑谷「……!!動いた!」




行けるか……いいや、今は……!




下から飯田くん、サイドから僕が、それぞれ足と拳を振りかぶる。



渾身の一撃は、ヒーロー殺しに綺麗に決まった。




轟「チャンスだ!!」




ヒーロー殺しは一度気絶しかけたように見えたが、すぐにその目を開いて飯田くんに斬りかかる。


寸前で避けた飯田くんは、また脚を振りかぶる。




飯田「お前を倒そう!今度は犯罪者として___」




轟「たたみかけろ!!」




飯田「ヒーローとして……!!!!」





ドゴォッ、






飯田くんの蹴りが腹に入り、横向きでモロに喰らったヒーロー殺しを炎が包む。




次いで突き上げた氷が襲い、僕と飯田くんはそこを転がり落ちるように地面へついた。




ドサッ、





緑谷「……!?あなた!!?」



あなた「あんな高さから落ちて……怪我せんわけがないでしょうが!」




え……、なんで動けてるんだ!?




轟「立て!奴はまだ_______、」




轟くんに言われて、落っこちた僕と飯田くんを抱きかかえて受け止めてくれたあなたから目を離してヒーロー殺しを見上げた。




そこには、ピクリとも動かないヒーロー殺しの姿があった。





緑谷「……流石に気絶してる……ぽい、」



轟「はぁ……じゃあ拘束して通りに出よう。何か縛れるもんは……」



あなた「ゴミ箱漁れば出てくるんじゃないかな」




緑谷「え、ていうかなんであなたは動けて……」




轟「あいつが気絶したからじゃねぇか?」




あなた「や……回復でなんかいけたっ」





ニコッと笑って、足に突き刺さったままのナイフを抜いた。






あなた「ごめんいずくん……回復してあげたいけど、ちょっと厳しいかも……」



ヒーロー殺しを縛ってから、ネイティブさんに触れて回復を施したあなたが頭に手を当てて言った。




緑谷「ううん平気だよ……!それよりあなた、まさか個性使い過ぎたんじゃ……」



あなた「ん……脳無が出たのは知ってる?」



緑谷「うん……」



あなた「巻き込まれた人達治してたら、やり過ぎちゃって……」





顔色が悪い。




『個性を使う度、あの子の脳には対象者の痛みを数千倍に圧縮した負荷がかかってる……』




リカバリーガールが言っていた……あれだ。





ネイティブ「君、おぶるよ。足怪我してるだろ」



あなた「いや……私よりいずくんが重症だから、そっちお願いしますっ。私は……ほらっ、平気なんで!」




塞がりきった傷を見せてから、僕を指差した。



ネイティブさんにおぶってもらい、道路に出る。






ネイティブ「さて、早くそいつを警察に_____」




?「なっ、なぜお前がここに……!!新幹線で座ってろって言ったろ!」




駆けつけてきたグラントリノに顔面キックを喰らった。




轟「誰」



あなた「あ〜、さっきのおじいちゃんだ!」



グラントリノ「グラントリノじゃわい!……む、轟とおった子じゃないか」




ついで、各地から駆けつけてきたヒーローが合流し、警察に連絡してくれた。




「歩けるか?」


緑谷「支えてもらったらなんとか……」



「君達は?」



あなた「怪我してないっす!」



轟「俺は軽傷です。でも飯田が______」



「酷い出血だ……!すぐに救急車が来る!それまで_____」




飯田「3人とも……」




飯田くんが、痛々しい腕に力を込めずにただただ頭を下げた。



飯田「怒りで何も、見えなく、なって、しまっていた……!」



ポロポロと涙を流しながら、唇を噛み締めた。



緑谷「僕もごめんね……君が、あそこまで思い詰めてたのに、全然見えてなかったんだ。友達なのに……!」



飯田「うぅ……っ、」



轟「しっかりしてくれよ」



あなた「ほらほらっ、委員長〜っ」




2人の声かけに、飯田くんは涙を拭いて顔を上げた。




轟「っ、おい、百々_______」




あなた「?〜…………っ、」





途端、張っていた気が緩んだのかあなたの足がガクッと曲がった。




やっぱり……個性を使い過ぎたんだ!





「立てるか、君_______」



グラントリノ「!!?伏せろ!!」




ギィィィィィッ、




突如、向こうの空から物凄い速さでやってき羽の生えたヴィラン______脳無が。










あなた「ぅ……っ、あ!」





緑谷「_________あなたっ!!!!」






闇雲か、それともか________。






体勢の崩れていたあなたを足で掴んで、脳無は飛び立った。

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