第44話

エンデヴァー.°
25,505
2020/07/06 12:28
「僕は、オールマイトじゃありません」




トイレに行こうと歩いていた廊下の先から、いずくんの話し声が聞こえて顔を覗かせた。



そこには巨体の男の人がいて。




?「そんなことは当たり前_____」



緑谷「当たり前の事ですよね……。轟くんも、貴方じゃないっ」





……轟、くん?






聞き耳を立てていると、こっちに向かってきた巨体な人と目があった。





?「……君か。手間が省けたよ」




誰……?



関係者……?




あなた「…………えっと、」




?「?私の事を知らないのか……。"エンデヴァー"と言ったら、分かるかい?」





……やっべ、分かんねぇ。






エンデヴァー「……ヒーロー志望じゃないのか?まぁ、いい。轟焦凍の父……と言った方が分かるな?」




あなた「……えっ、轟くんの!?」




ごめんなさいお義父さん……貴方の息子さんの唇奪っちゃいました。



頭の中で変な謝罪をしながら、顔を見る。



……似てない。





エンデヴァー「君の個性、見させてもらったよ……。中々良いものを持っている。オールマイトを彷彿としたよ」




あなた「……えへへ、よく言われますっ」






とりあえず愛想笑いを作ると、拍子抜けしたような顔をして微笑した。





エンデヴァー「君が次勝てば、焦凍と当たるね」




あなた「轟くんがいずくんに勝てば、ですけどねっ」



エンデヴァー「勝つさ。そうでなれければオールマイトを越せる訳がない……。そして君にも。今はくだらない反抗期だが、あいつは俺の野望を_____」




あなた「轟くんは」






エンデヴァー「……?」





あなた「轟くんは、強いです。私も良く知っています。反抗期とかはよく分からないけど……、でも、それは貴方に問題があるんじゃないですか?」





エンデヴァー「何を______」




あなた「両親の居ない私にも……いや、居ないからこそ、分かるんです。自分の事を見てくれる親の存在が……いかに大切で尊いものか。貴方が見ているのは……轟くんであって轟くんじゃない」





エンデヴァー「……(親の居ない……?)」






あなた「試合見たいんで、失礼します」






これ以上はあの炎炎としている炎で焼かれそうだったので口をつぐんだ。








緑谷vs轟。





開始早々轟くんの氷は緑谷くんを襲い、それを犠牲覚悟で指で弾く。




途端冷風が私達を包んで、身を震わせながら前のめりに試合を見た。




いずくん……あの指。




見るからに痛々しく負傷していて、やっぱり私と違って諸刃の剣なんだと確信した。




何度も何度も轟くんの氷を弾き飛ばし、距離を詰められないようにしている。


そして片腕全部を使った攻撃を、轟くんは氷を背もたれにして場外を防いだ。





……厄介だな、あの氷。



それに、轟くんの判断力、反射神経、加えて機動力……。



気付けば戦略を練りながら自分の頰が緩んでいて、引き締めた。




違う、私は……。





楽しんじゃ、ダメなんだ。





本当はここにいることさえ、許されない。






それでも、それでも皆と過ごして……同じように、上を目指したいと思った。





優勝したいって……心の底から思うようになった。










両腕を壊したいずくんに、再度氷が襲う。







ドゴォォォォッ!!!!





あなた「!!!?」






なぜかいずくんの直前で砕け散った氷。






あなた「……!?壊れた、指を……そのまま」





見るからに変色してしまっている人差し指。




痛々しいその姿に、なぜだかとても泣きそうになった。






緑谷「「半分の力で勝つ」……?まだ僕は、君に傷一つつけられちゃいないぞ……!」





ぎゅっと、拳を握った。






緑谷「全力でかかってこい!!!!」

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