爆豪「お"ぃ、大丈夫なんか」
あなた「爆豪くんっ!うん大分良くなった!ありがとうね……!」
真後ろに座る爆豪くんを見上げてはにかむと、声をかけたのを後悔したのかチッと舌を鳴らした。
素直じゃないなぁ……。
でも、異変に気がついて保健室に連れてってくれて……爆豪くんはやっぱり、優しい人だ。
爆豪「存分にブッ殺す」
……多分。
ズシッ
あなた「……私の頭は肘置きじゃないんだけど?」
腕を組んで乗り掛かってきたので頭を揺らすと、「てめぇ次試合だろ。はよ行けや」とフル無視。
あなた「……見ときたいの。轟くんが戦ってるとこ、まだちゃんと見たことない」
爆豪「……チッ……また半分野郎かよ」
あなた「……?なんか、轟くんイライラしてない?」
爆豪「知るか」
頭から手を離してのけぞり、さも興味なさそうに足を組む。
……なんか、空気が重い。
プレゼントマイク〈ready……start‼︎‼︎〉
開始早々、瀬呂くんのテープが轟くんの体に巻きついて台の外へと引っ張る。
無抵抗な轟くんの体はそのまま場外へ_____。
あなた「_______っ、」
轟くんの足元から氷がチラついたと思った瞬間、一気に目の前まで刺々しい氷の塊が押し迫った。
ドゴォォッ!
反射的に向かってきた氷を跳ね除けて、下を見る。
瀬呂くんの体は氷に埋もれて……否、会場の半分が轟くんの氷で支配された。
あなた「…………、」
ゴクリと、自分の喉が鳴ったのが分かった。
瀬呂くんのやっとの降参に、会場からはどこからともなくドンマイコールが発せられた。
……次は、私だ。
プレゼントマイク〈everybody‼︎大変長らくお待たせしたぜぇぇ!第二試合で氷漬けになったステージもっ、ようやく乾いて次の対決っ!!〉
控室から通じている通路を通って、会場に足を踏み入れた。
プレゼントマイク〈まずはsparking killing boy!!ヒーロー科、上鳴電気ぃ!!〉
あなた「すぅ……はぁ……」
呼吸を整えて、一歩一歩歩く。
プレゼントマイク〈versus‼︎‼︎障害物競争、騎馬戦と驚かされまくりのtroublemaker‼︎A組転入生!百々ぉぉぉっ、あなた〜っ!!〉
相澤〈頼むから会場破壊するのだけはやめてくれ〉
……トラブルメーカーってなにさ!
会場破壊ってなにさぁぁぁあ!!!
パキパキと指の骨を鳴らして、台に上がる。
踵で何回か地面を踏んで、強度を確かめる。
……壊すなって言われたら壊したくなるよね⭐︎
上鳴「よぉあなた……。お前の実力はちゃんと知ってるよ!でも残念、勝つのは俺だ!!これ終わったら飯とかどうよ……俺でよけりゃ慰めるよぉ?」
あなた「……上鳴くん、私の上鳴くんへの第一印象教えてあげようか」
プレゼントマイク「ready……」
上鳴「おうなんだよっ」
プレゼントマイク「startぉぉぉっ!!!」
一瞬で、上鳴くんの体からチリチリと電気が目に見える。
あなた「……“チャラ男”!!」
上鳴「るっせぇ無差別放電!!130万ボルトォォォォ!!」
瞬く稲妻が走ってくる。
スッ……
あなた「_________相澤せんせ、ごめん!」
ドゴォォォォォォォッ!!!!!
しゃがんで左に拳を作り、地面に突き刺す。
地割れして持ち上がったコンクリの後ろに隠れて、電気を免れた。
多少の電撃は喰らったけど、支障はない程度。
軽い回復で済んで、放電が止まった瞬間に飛び出した。
_________って、。
あなた「……上鳴、くん…………?」
上鳴「ほへっ……ほぁ……!?」
……え、なんか、表情筋自粛しまくってない?
飛びかかろうと思ったけど流石に気が引けて、目の前に着地すると「ほぅわっ!?」と後退りする。
うーん……研究不足だったなぁ。
あなた「……歯ぁ食いしばって」
上鳴「ほぁ_________、」
トンッ
真っ黄色の髪が開けた額に軽く指2本で触れると、上鳴くんの足は簡単に地面から離れ、平行移動して場外へ飛んでいった。
プレゼントマイク〈赤子の手をひねるかのように圧勝!!そしてイレイザーっフラグ回収お疲れ様ぁぁっ!〉
相澤〈ちゃっかり破壊しやがって……〉
ミッドナイト「二回戦進出!!百々さんっ!!」
「「「……」」」
……あれ?
会場が一瞬静まり返って、私が首を傾げたと同時に一気に盛り上がった。
あなた「うぃ〜っ、どもどもっ」
ヒラヒラっと手を振ってから、運ばれていく上鳴くんに目をやった。
……回復してあげようかと思ったけど。
上鳴「うぇーい、うぇーい、」
なんか変な顔で変な動きしてるし、触りたくないや。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!