っ、麗日さ_________。
麗日「お友達……じゃ、ないよね?……手、離し、て?」
ふっと、死柄木の首を掴む力が緩んだ。
緑谷「なんでもないよ!大丈夫!だから、きちゃダメ!!!」
スッ
死柄木「連れがいたのかぁ、ごめんごめん。じゃあ行くわ。追ったりしてきたら分かるな?」
緑谷「ごほごほっ、がはっ、ごほっ、」
トーンを落として僕に囁くと、立ち上がって去っていく。
麗日「デクくんっ」
緑谷「ハァ……、待て、死柄木弔……!!」
麗日「えっ?死柄木って……」
死柄木はピタッと止まって、小さく振り向いた。
緑谷「オール・フォー・ワンは……何が目的なんだっ!あなたとどう繋がってるんだ!!」
死柄木「______知らないな。百々あなたの事も……単純に俺が"欲しい"だけだ。……それより気をつけときな?次会う時は、殺すと決めた時だろうから……」
そう言い捨てて、人混みに紛れて、消えてしまった。
麗日さんの通報により、ショッピングモールは一時的に封鎖。
区内のヒーローと警察が緊急捜査にあたるも、結局死柄木は見つからず、僕はその日の内に警察署に連れられ、ヴィラン連合の捜査に加わっている塚内さんに、主犯_____死柄木弔の人相や会話内容などを伝えた。
あなたの事も、相手が塚内さんだった事もあり話した。
警察署から出てすぐに、オールマイト来てくれた。
オールマイト「良かった……無事で何よりだ。助けてやれなくて、すまなかったな」
そしてまた、すぐにお母さんが迎えに来てくれた。
僕を心配して、涙を流すその姿に……胸が締め付けられた。
オールマイト𝓈𝒾𝒹𝑒.°
塚内「今回は偶然の遭遇だったようだが……。前々から話していた百々あなた、やはり繋がりがあるようだね」
オールマイト「……!」
塚内「死柄木が彼に言ったそうだ。彼女を"くれ"と。言動からして、彼女が奴らの仲間なのかどうかは判断しかねるが……そうでなかった場合、彼女に危害が及ぶ可能性が高い」
……オール・フォー・ワン。
今度こそ、必ず……。
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
日曜日。
轟くんが時間通りに家にやってきて、きっちりと部屋の鍵を閉めてから出掛けた。
病院に行って冷さんに会うと、とても喜んでくれた。
轟くんの普段の様子とか、勉強を教えてもらった事とか……。
とても嬉しそうに聞いてくれて、家族というものを実感させられた。
冷「あなたちゃんは……兄弟はいるのかしら」
轟「っ、お母さん、こいつは______」
慌てて止めようとしてくれた轟くんを制して、冷さんの手を取った。
あなた「兄弟は居ません。両親は……少し前に他界しました」
冷「そう……だったの」
謝ろうとしてくれたのが分かったので、首を振った。
あなた「でも今……雄英で皆と過ごして、とどろ____焦凍くんと仲良くなって……生まれて初めて、"友達"の暖かさを知りました」
轟「……」
あなた「私が1人でどうしようもない時……焦凍くんがいつも、助けてくれるんです。いつものクールでかっこいい印象からは想像できないような……とても暖かい、優しい笑顔を、私に向けてくれるんです」
轟「っ、」
あなた「……冷さんのその柔らかい笑顔に、とてもよく似ています」
冷「…………〜っ」
そう言ってはにかむと、冷さんは私の肩を引き寄せてキュッと弱々しく抱き締めた。
冷「……ありがとう、あなたちゃん。私が言えた事ではないかもしれないけれど……お母さんだと思って、甘えて頂戴_____」
そう言って私の髪に優しく触れるので、胸がきゅううっと苦しくなった。
この親子は……私の表情を汲み取るのが上手い。
きっと私が、また……"どうしようもない顔"をしていたんだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。