第76話

俺にくれ.°
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2020/07/28 09:32
っ、麗日さ_________。



麗日「お友達……じゃ、ないよね?……手、離し、て?」



ふっと、死柄木の首を掴む力が緩んだ。



緑谷「なんでもないよ!大丈夫!だから、きちゃダメ!!!」



スッ



死柄木「連れがいたのかぁ、ごめんごめん。じゃあ行くわ。追ったりしてきたら分かるな?




緑谷「ごほごほっ、がはっ、ごほっ、」



トーンを落として僕に囁くと、立ち上がって去っていく。




麗日「デクくんっ」


緑谷「ハァ……、待て、死柄木弔……!!」


麗日「えっ?死柄木って……」



死柄木はピタッと止まって、小さく振り向いた。



緑谷「オール・フォー・ワンは……何が目的なんだっ!あなたとどう繋がってるんだ!!」



死柄木「______知らないな。百々あなたの事も……単純に俺が"欲しい"だけだ。……それより気をつけときな?次会う時は、殺すと決めた時だろうから……」




そう言い捨てて、人混みに紛れて、消えてしまった。







麗日さんの通報により、ショッピングモールは一時的に封鎖。


区内のヒーローと警察が緊急捜査にあたるも、結局死柄木は見つからず、僕はその日の内に警察署に連れられ、ヴィラン連合の捜査に加わっている塚内さんに、主犯_____死柄木弔の人相や会話内容などを伝えた。



あなたの事も、相手が塚内さんだった事もあり話した。




警察署から出てすぐに、オールマイト来てくれた。




オールマイト「良かった……無事で何よりだ。助けてやれなくて、すまなかったな」



そしてまた、すぐにお母さんが迎えに来てくれた。



僕を心配して、涙を流すその姿に……胸が締め付けられた。






オールマイト𝓈𝒾𝒹𝑒.°



塚内「今回は偶然の遭遇だったようだが……。前々から話していた百々あなた、やはり繋がりがあるようだね」


オールマイト「……!」


塚内「死柄木が彼に言ったそうだ。彼女を"くれ"と。言動からして、彼女が奴らの仲間なのかどうかは判断しかねるが……そうでなかった場合、彼女に危害が及ぶ可能性が高い」





……オール・フォー・ワン。



今度こそ、必ず……。





あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



日曜日。


轟くんが時間通りに家にやってきて、きっちりと部屋の鍵を閉めてから出掛けた。




病院に行って冷さんに会うと、とても喜んでくれた。



轟くんの普段の様子とか、勉強を教えてもらった事とか……。


とても嬉しそうに聞いてくれて、家族というものを実感させられた。




冷「あなたちゃんは……兄弟はいるのかしら」


轟「っ、お母さん、こいつは______」




慌てて止めようとしてくれた轟くんを制して、冷さんの手を取った。




あなた「兄弟は居ません。両親は……少し前に他界しました」


冷「そう……だったの」



謝ろうとしてくれたのが分かったので、首を振った。




あなた「でも今……雄英で皆と過ごして、とどろ____焦凍くんと仲良くなって……生まれて初めて、"友達"の暖かさを知りました」



轟「……」



あなた「私が1人でどうしようもない時……焦凍くんがいつも、助けてくれるんです。いつものクールでかっこいい印象からは想像できないような……とても暖かい、優しい笑顔を、私に向けてくれるんです」



轟「っ、」



あなた「……冷さんのその柔らかい笑顔に、とてもよく似ています」



冷「…………〜っ」





そう言ってはにかむと、冷さんは私の肩を引き寄せてキュッと弱々しく抱き締めた。





冷「……ありがとう、あなたちゃん。私が言えた事ではないかもしれないけれど……お母さんだと思って、甘えて頂戴_____」





そう言って私の髪に優しく触れるので、胸がきゅううっと苦しくなった。



この親子は……私の表情を汲み取るのが上手い。




きっと私が、また……"どうしようもない顔"をしていたんだろう。 

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