轟「お茶でいいか。」
あなた「あ、うん……!ありがとう。」
ソファーに座って、何の話だろうとキッチンに行った轟くんを待った。
待つ間、ニュースをチェックしてヴィランの動きについて確認。
轟「すまねぇ、眠いか?」
あなた「ううん。なんだか寝付けない気がするっ。」
久々の寮と、久々の皆との生活。
日常が戻ってきたんだと、しみじみ思う。
轟「前、俺に渡してきた写真。」
あなた「……、!」
隣に人1人分空けて座って、早速本題。
口にした言葉に、私の心臓はギュッと締め付けられた。
あなた「……ごめん、訳分かんなかったよね。」
轟「今日の話を聞いて理解した。ずっとお前の抱えてたもんが、それだけじゃないって事も。」
あなた「……、」
そう。
私はまだ、皆に言わなければならない事があるのに。
それを言ってしまえばもう……その時が、最後になってしまうから。
轟「俺にも、言えねぇか?」
あなた「…………ごめん、」
轟くんにも、三奈ちゃんにも、いずくんにだって。
誰にも、言うことはできない。
少しの沈黙の後、もう一度謝ると。
轟「お前見てたら、ここんとこが苦しくなる。」
あなた「苦しく……?」
胸の辺りをキュッと押さえて、俯いた。
それだけ心配をかけてしまっているという事なのだろうか。
轟「なんとなく、気付いてんだ。……その上で、1つだけ話せる事、あるんじゃねぇのか。」
あなた「_______、」
何のことか、すぐに分かった。
それは、ここに戻ってきてからずっと。
ううん……それよりずぅっと前から、感じていた事だったから。
轟くんのその目は、私が奥にしまっていた言葉をぐいっと引き出して。
溢れるように、口にした。
あなた「…………初めは、ただ守らないといけないんだって。」
私のするべき事、ちゃんと分かっていたあの頃。
あなた「だけど関わっていくうちに……私の中で大切になって、それで、」
私は、
不器用なあの人が。
荒々しい口調の奥にある本当の優しさが。
もう全てを投げ出して、一緒になりたいと思えるほどに。
あなた「私……、私、」
ダメなのに。
こんな事、思っちゃダメなのに。
三奈ちゃんに聞かれた。
三奈ちゃんは、気付いてた。
私が、樹の存在を信じていたあの頃から。
ずっと胸に閉じ込めて、しまっていた、この気持ち。
鍵をかけて、厳重に閉じ込めて。
だけどやっぱり、轟くんにはバレていたみたいで。
あなた「____________爆豪くんの事が、」
私の抱えてるものも、全部、中身見ずに一緒に背負ってくれるって言ったあの言葉とか。
自分勝手で我儘で、自己顕示欲の塊の彼が。
ずかずか私の中に入ってきて、それで……。
気持ちを全部、持っていかれそうで。
どうしようもない程に。
あなた「好き、なの……。」
私は、爆豪くんが好き。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。