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あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
轟「一段と不機嫌そうだな。」
あなた「別に……。」
今日はホークスとエンデヴァーが福岡で会っている日。
結局何言っても許してくれなかった。
それどころか、3日間はヒーロー活動するななんて。
あなた「職権反乱だ。」
轟「……何のことか分かんねえが、多分"乱用"だ。」
……。
轟くんの部屋に2人、特に何をするでもなく座っている。
付き合うようになってから、こうして2人でいる時間は圧倒的に増えた。
一緒にいてソワソワすることも無いし、むしろ落ち着くので苦では無い。
ただ、落ち着きすぎていつもいつの間にか居眠りしちゃうんだよな……。
あなた「__________ん、」
轟「、すまねぇ。寝ていいぞ。」
机に突っ伏してウトウトしていた私の頬に、優しく触れた轟くんの手。
やっぱり、落ち着く…………。
いつの間にか、やっぱり眠ってしまっていた私。
同じく隣でスヤスヤと眠っていた轟くんと私を起こしたのは、いずくんからの電話だった。
途端の胸騒ぎは、的を射ていて。
チャンチャラチャラララチャラララランッ
チャンチャラチャラララチャラララランッ‼︎
あなた「ん……ぅ、?」
轟「……緑谷、?」
鳴っていたのは轟くんのスマホ。
電話に出てすぐに険しくした表情に、私は思わず自分のスマホを開いた。
ホークス事務所のサイドキックからの不在着信が多数。
轟くんへの電話。
嫌な予感は、当たっていた。
〈象徴の不在__________これが、象徴の不在……っ、〉
息を呑んでテレビを見つめる皆。
私と轟くん以外は共有スペースに集まっていて、テレビを凝視していた。
すぐに、事を把握して。
脳無が、また……。
ホークスの言ってたやつだ。
おかしい。
ただの脳無なら、ホークスやエンデヴァーがここまで遅れをとる事もないのに。
九州……福岡、どんなに急いでも間に合わない。
それに……今、私にヒーロー活動は、
パニックに陥っている民衆。
恐怖と不安の色が顔に現れていて、キャスターの声も震えている。
轟「__________ふざけんな、」
常闇「パニックだ、まずいぞ……。」
相澤「轟!!……もう見てたか、」
寮に入ってきた相澤先生が、轟くんに駆け寄った。
ボロボロなエンデヴァー。
逃げ惑う民衆。
あなた「…………ホークス、」
〈適当な事言うなよ!!!どこ見て喋りよっとやテレビ!!!〉
と、画面の向こうから叫ぶ男の子の声に、皆の視線が集まった。
カメラはようやくその男の子の姿を捉え、友人らしき男の子達に止められながらも必死に叫ぶ姿が写っていて。
〈あれ見ろや……!まだ炎が上がっとるやろが!見えとるやろうが……、エンデヴァー生きて闘っとるやろうが!!〉
指差す方向に向くカメラは、立ち上る炎をしっかりと捉えて。
〈今……俺らの為に、体張っとる男は誰や!_____見ろや!!!〉
轟「__________、」
あの子……パトロール中に見かけたことがある。
グッズ屋さんでエンデヴァーの缶バッチを手にして頬を赤らめていた、男の子だ。
エンデヴァーのファン……。
緑谷「エンデヴァー……!」
あなた「!」
火力で力のままに脳無に向かっていくエンデヴァー。
追い討ちに怯むこともなく向かっていく気迫は、その姿は……紛れもないヒーローで。
"見ていてくれ"と言ったあの言葉を思い出し、身震いした。
あなた「っ、!」
瀬呂「ホークスだ!」
背後に回ったホークスの攻撃に対処した脳無。
空を飛びながら花を散らし、攻撃を交わす。
あなた「〜ッ、!」
攻撃を受けてよろけた姿に、思わず息を呑んだ。
どうして……私は、あの場にいないんだ。
身近だと思っていたホークスが遠く感じる。
ほんのこの間まで、一緒にいたのに。
やっぱり、私とは違う。
れっきとしたヒーローだ。
ホークスの花がエンデヴァーの背を押し、燃える拳が脳無を捉える。
緑谷「嘘……だろ、」
エンデヴァーの拳を口内で受けて再生を繰り返し、押しやっていく脳無。
エンデヴァーの火力も充分ではない。
今の攻撃でもダメなら、どうすれば__________、
〈エンデヴァーが……闘っています!身を捩り、足掻きながら__________闘っています!!〉
……違う。
諦めてなんかない。
No. 1ヒーローになったエンデヴァーが言った。
"俺を見ていてくれ"と。
あの言葉は……私が思っていた以上に重く、色んなものを乗せた言葉で……。
轟「……〜ッ、見てるぞ……!!」
高く、高く登っていくエンデヴァーと脳無。
カメラで写しきれなくなるほどの上空にも関わらず、しっかりとその激しい炎は捉えることができて。
煌々と燃え盛る上空から、勢いよく落下してきたその塊に。
私も、轟くんも。
そこにいる皆も、テレビの向こうの誰もが息を呑んだ。
晴れた煙の向こうに、確かに高く掲げた拳が映って。
瞬間、糸が切れたように座り込んだ轟くん。
ボロボロのエンデヴァーは、多分もう身体も限界。
それでも掲げたあの拳は、次なるヒーロー社会の始まりを告げ。
そして__________
そっと、力が抜けた轟くんの背中に手を添えた。
始まるんだ。
長い長い、闘いが__________
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。