第75話

待ってた.°
21,288
2020/07/28 07:11
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



上機嫌で学校を出ようとすると、靴箱の所に見覚えのあるシルエット。



あなた「……轟くん?」


轟「……ああ」



私の姿を認識すると、寄りかかっていた壁から背中を離して背を向けた。




……?




あなた「誰か待ってるの?」


轟「……あぁ」



さっきから「ああ」しか言わないし。


靴に履き替えてトントンっと足の位置を調整した。




あなた「A組の人はもう学校に残ってないみたいだったけど……誰待ってるの?」



あ……他クラスの彼女さんとかかな?



轟くんルックスいいし、あり得る……。




轟「お前を待ってた」


あなた「え」




……聞き間違い?


いいや、確かに今……。




あなた「え、私を?なんで??」



思いっきり首を傾げた私に、轟くんはふいっと顔を背ける。




轟「……お母さんが」


あなた「?」


轟「お前とまた、話したいって」



……冷さんの事だ。



そういえばあれ以来、行けてないしなぁ。



轟「連絡しようと思ったんだが、お前の連絡先知らねぇから待ってた。でも、そうか。用事……あるんだったか」



あなた「あ……ううん、用事はないっていうか……逆にできたっ、ていうか……」



轟「??」



あなた「その、諸事情でやっぱり買い物行かないといけなくなっちゃって……」



轟「なら、見舞い付き合って貰う代わりに帰りに買い物付き合う」



あなた「……おぉ、Win Win だね」



流石轟くん……!



轟「じゃあ、連絡先教えてくれねぇか」


あなた「……あ、私携帯持ってない」


轟「……そうだったか。なら、日曜朝家に迎えにいく。10時でいいか?」


あなた「…………」


轟「?……百々?」


あなた「、あっ、うん!じゃあ10時で……」





あぁ……まずったなぁ。


…………まぁ、結果的には同じ事だしいいか。





轟「……なんかあったか?」



心配そうな顔をするので、笑って「大丈夫」と返した。


……別れがあるって分かってて、これ以上踏み込むのも、良くないのかもな。




緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°



ショッピングモールに買い物にやってきて、それぞれ買いたいものがバラけているので一時自由行動となった。



緑谷「折角皆で来たのに、僕1人……」



……買い物行こう。




?「おぉっ、雄英の人だスゲェ」



どこからか物珍しそうな声が聞こえてきて、辺りを見回すと逆方向から肩に手を置かれた。




?「サインくれよっ。確か体育祭でボロボロんなってたやつだよなぁ?」


緑谷「あっ、はい……」



凄いな雄英……やっぱり沢山の人に見られて、覚えられてるんだ……。




?「んで確か、保須事件の時にヒーロー殺しと遭遇したんだっけ?すげぇよな!」


緑谷「よ、よくご存じで_________」



あれ、僕の顔、そっちで公開されたんだっけ……」




?「いやほんとに信じられないぜっ。こんなとこでまた会うとは_________」


緑谷「_________!?」




明らかに声質が変わった。


この声……って。



?「ここまで来ると何かあるんじゃって思うよ……運命_____因縁めいた物が……」



いいながら、そいつはずっと僕の首に4指を当てがった。



?「まぁでも、お前にとっては雄英襲撃以来になるか……」


緑谷「っ、…………」



恐る恐る、見上げたそのフードを深くかぶった中の顔は。




?「お茶でもしようか……緑谷出久」




緑谷「死柄木……弔っ」











緑谷「僕は……お前の事は、理解も納得もできない。ヒーロー殺しは、納得はしないけど、理解はできたよ。僕もヒーロー殺しも始まりは……オールマイトだったから」



首を掴まれたまま、噴水の淵に腰掛けて話す。


今僕が暴れたら……僕だけじゃない、ここにいる何人もの命が_______。




緑谷「少なくともあいつは、壊したいが為に壊してたんじゃない。……お前のように、悪戯に投げ出したりもしなかった……やり方は間違ってても、理想に生きようとしてた……だと思う」



恐る恐る、見上げると。


死柄木の形相に鳥肌が立った。



死柄木「ああ……なんかスッキリした。点が線になった気がする。なんでヒーロー殺しがムカつくか……なんでお前が鬱陶しいか、分かった気がする……!」



不気味に笑って、言った。



死柄木「全部、オールマイトだ……!」


緑谷「っ、!」


死柄木「そうか、そうだよな……結局そこにたどり着くんだ。……ははっ、何を悶々と考えていたんだろう俺は。こいつらがヘラヘラ笑って過ごしてるのも、オールマイトがヘラヘラ笑ってるからだよなぁ?」



ギリッ……



緑谷「ぐぅ……」



首を掴む指に、力がこもった。




死柄木「あのゴミがっ、救えなかった人間などいなかったかのように、ヘラヘラ笑ってるからだよなぁ……!?あー話せて良かった……いいんだ、ありがとう緑谷……」



くる、し……息が……でき、な______。





死柄木「俺はなんら曲がることないぃ」



思わず引き剥がそうと指にかけた手。



死柄木「っと、暴れるなよ。死にたいのかぁ?民衆が死んでいいって事かぁ?」



くる、し……ク、ソ……っ、。




死柄木「あ〜ぁ、そっかそっか……なぁ緑谷出久……あいつくれよ」



緑谷「……!?」



死柄木は、尚も不気味な笑顔で僕を嘲笑した。




死柄木「いいだろ……?なぁ、百々あなた、俺にくれよぉ……」



緑谷「_________、!?」





『オール・フォー・ワンと繋がっていると見て、まず間違いない』






あなた……あなたを……?





麗日「デク……くん?」

プリ小説オーディオドラマ