あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
上機嫌で学校を出ようとすると、靴箱の所に見覚えのあるシルエット。
あなた「……轟くん?」
轟「……ああ」
私の姿を認識すると、寄りかかっていた壁から背中を離して背を向けた。
……?
あなた「誰か待ってるの?」
轟「……あぁ」
さっきから「ああ」しか言わないし。
靴に履き替えてトントンっと足の位置を調整した。
あなた「A組の人はもう学校に残ってないみたいだったけど……誰待ってるの?」
あ……他クラスの彼女さんとかかな?
轟くんルックスいいし、あり得る……。
轟「お前を待ってた」
あなた「え」
……聞き間違い?
いいや、確かに今……。
あなた「え、私を?なんで??」
思いっきり首を傾げた私に、轟くんはふいっと顔を背ける。
轟「……お母さんが」
あなた「?」
轟「お前とまた、話したいって」
……冷さんの事だ。
そういえばあれ以来、行けてないしなぁ。
轟「連絡しようと思ったんだが、お前の連絡先知らねぇから待ってた。でも、そうか。用事……あるんだったか」
あなた「あ……ううん、用事はないっていうか……逆にできたっ、ていうか……」
轟「??」
あなた「その、諸事情でやっぱり買い物行かないといけなくなっちゃって……」
轟「なら、見舞い付き合って貰う代わりに帰りに買い物付き合う」
あなた「……おぉ、Win Win だね」
流石轟くん……!
轟「じゃあ、連絡先教えてくれねぇか」
あなた「……あ、私携帯持ってない」
轟「……そうだったか。なら、日曜朝家に迎えにいく。10時でいいか?」
あなた「…………」
轟「?……百々?」
あなた「、あっ、うん!じゃあ10時で……」
あぁ……まずったなぁ。
…………まぁ、結果的には同じ事だしいいか。
轟「……なんかあったか?」
心配そうな顔をするので、笑って「大丈夫」と返した。
……別れがあるって分かってて、これ以上踏み込むのも、良くないのかもな。
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°
ショッピングモールに買い物にやってきて、それぞれ買いたいものがバラけているので一時自由行動となった。
緑谷「折角皆で来たのに、僕1人……」
……買い物行こう。
?「おぉっ、雄英の人だスゲェ」
どこからか物珍しそうな声が聞こえてきて、辺りを見回すと逆方向から肩に手を置かれた。
?「サインくれよっ。確か体育祭でボロボロんなってたやつだよなぁ?」
緑谷「あっ、はい……」
凄いな雄英……やっぱり沢山の人に見られて、覚えられてるんだ……。
?「んで確か、保須事件の時にヒーロー殺しと遭遇したんだっけ?すげぇよな!」
緑谷「よ、よくご存じで_________」
あれ、僕の顔、そっちで公開されたんだっけ……」
?「いやほんとに信じられないぜっ。こんなとこでまた会うとは_________」
緑谷「_________!?」
明らかに声質が変わった。
この声……って。
?「ここまで来ると何かあるんじゃって思うよ……運命_____因縁めいた物が……」
いいながら、そいつはずっと僕の首に4指を当てがった。
?「まぁでも、お前にとっては雄英襲撃以来になるか……」
緑谷「っ、…………」
恐る恐る、見上げたそのフードを深くかぶった中の顔は。
?「お茶でもしようか……緑谷出久」
緑谷「死柄木……弔っ」
・
緑谷「僕は……お前の事は、理解も納得もできない。ヒーロー殺しは、納得はしないけど、理解はできたよ。僕もヒーロー殺しも始まりは……オールマイトだったから」
首を掴まれたまま、噴水の淵に腰掛けて話す。
今僕が暴れたら……僕だけじゃない、ここにいる何人もの命が_______。
緑谷「少なくともあいつは、壊したいが為に壊してたんじゃない。……お前のように、悪戯に投げ出したりもしなかった……やり方は間違ってても、理想に生きようとしてた……だと思う」
恐る恐る、見上げると。
死柄木の形相に鳥肌が立った。
死柄木「ああ……なんかスッキリした。点が線になった気がする。なんでヒーロー殺しがムカつくか……なんでお前が鬱陶しいか、分かった気がする……!」
不気味に笑って、言った。
死柄木「全部、オールマイトだ……!」
緑谷「っ、!」
死柄木「そうか、そうだよな……結局そこにたどり着くんだ。……ははっ、何を悶々と考えていたんだろう俺は。こいつらがヘラヘラ笑って過ごしてるのも、オールマイトがヘラヘラ笑ってるからだよなぁ?」
ギリッ……
緑谷「ぐぅ……」
首を掴む指に、力がこもった。
死柄木「あのゴミがっ、救えなかった人間などいなかったかのように、ヘラヘラ笑ってるからだよなぁ……!?あー話せて良かった……いいんだ、ありがとう緑谷……」
くる、し……息が……でき、な______。
死柄木「俺はなんら曲がることないぃ」
思わず引き剥がそうと指にかけた手。
死柄木「っと、暴れるなよ。死にたいのかぁ?民衆が死んでいいって事かぁ?」
くる、し……ク、ソ……っ、。
死柄木「あ〜ぁ、そっかそっか……なぁ緑谷出久……あいつくれよ」
緑谷「……!?」
死柄木は、尚も不気味な笑顔で僕を嘲笑した。
死柄木「いいだろ……?なぁ、百々あなた、俺にくれよぉ……」
緑谷「_________、!?」
『オール・フォー・ワンと繋がっていると見て、まず間違いない』
あなた……あなたを……?
麗日「デク……くん?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。