第19話

見舞い.°
35,146
2022/06/08 09:30
相澤𝓈𝒾𝒹𝑒.°



ヴィラン連合襲撃の翌日。


学校は臨時休校となった。




教師はもちろん通勤してから、俺は会議の時間までを保健室で過ごすことに決めた。




相澤「失礼します」



朝早い時間だが、リカバリーガールは定位置に座っている。


酸素マスクの空気音が部屋に充満し、百々が昨夜から目を覚ましていないことが明らかだった。




リカバリーガール「珍しいね……。怪我は平気かい」


相澤「まぁ」



丸椅子を足を使い持ってきて、頭のすぐ横で腰かけた。


今にも目を覚ましそうな安らかな寝顔。


重体者が出たという事実は、マスコミには行き渡らなかった。



その理由として、百々に親族が居ないことが挙げられる。


幸か不幸か、お陰でこうして学校でかくまっていられるんだが……。



リカバリーガール「心配かい……自分の生徒が」


相澤「……生徒、ですか」



こいつをそう呼んでいられるのは、こいつが目を覚ましたときまでだな……。




ガララッ



リカバリーガール「おや……?」



そろそろ個性の治療も可能なのではないか。


そう考えながら百々の将来を案じていると、保健室のドアが開いた。





相澤「……轟。今日は家にいろと言っただろ」


轟「自分の落ち度で怪我をさせてしまったクラスメートを、心配してはいけませんか」


相澤「こいつについての詳細は、明日のホームルームで一斉に伝える。今言えることは___」


リカバリーガール「いいさね」



スクっと立ち上がったリカバリーガールが、轟に近寄り腕にポンポンと触れる。




リカバリーガール「体に異常はないかい?」


轟「……はい」


リカバリーガール「聞いた話によると、結構な怪我をしたそうじゃないか」


相澤「仲間を……百々を助けに行ったこと……それ自体は評価する。___が、自分までやられたんじゃしょうがないだろ」




……まぁ、俺が言えることじゃねぇか。




リカバリーガール「これから会議だからここは閉めるよ。いつまで長引くか分からないが……それまであの子についているって言うなら、外から鍵を閉めるけど」


轟「……」



轟はチラッと百々を見て、「あいつは目を覚ましてないんですか?」と尋ねた。



リカバリーガール「そうだねぇ……」



同じように百々を見て頷く。



轟「…………ここに居させてください」




轟にしては意外な返答だったが、リカバリーガールが許可するので俺も言うことはない。



2人で会議室に向かうため保健室を出て、そとから鍵をかけた。




轟𝓈𝒾𝒹𝑒.°



シューーー……シューーー……


静かな保健室で、酸素マスクの音だけが鮮明に聞こえる。



換気のため開けている窓から生暖かな風が入ってきて頬をくすぐる。



百々の髪が風にらすくわれて顔を覆ったので、耳にかけた。




『くん……な』




こいつは、あの目ん玉ヴィランが復活することを分かっていた。



その上で、俺に必死に訴えてきていたのに。




俺も戦えると、足手まといではないと証明したかったのか……?


自分の幼稚さ、不甲斐なさに腹が立つ。




俺は確かにあの時、生死に関わる大ケガを負った。



走馬灯のように昔の記憶が蘇ってきて、嫌なことを思い出した。




個性の2重持ち。



俺も似たようたものだ。




『死んでんだ。うちの両親』




あぁ言いながら薄く笑っていたのは、虚勢なのか本心なのか……。



それに、あの個性も……。




緑谷同様、オールマイトと酷似していると感じた。



まだ、聞きたいことは山程あるんだ。











轟「……死ぬんじゃねぇぞ」

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