第63話

ステインの思想と死柄木の思惑.°
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2020/07/12 09:44
緑谷「あなた!!!!」





まずい、あなたは今戦える体じゃない……!


僕ももう足に力が_______。




途端、急に脳無の動きが鈍り、下降する。




スッと、僕の真横を通り抜けてそっちに走っていったのは……。






ヒーロー殺し_____ステインだった。





ステイン「偽物が蔓延るこの社会も____悪戯に力を振りまく、犯罪者もぉ!!!」



あなた「_______、ステi_、」




ステインは刀を振りかぶり、高度の落ちた脳無の頭に突き刺した。



地面に落ちながらしっかりとあなたの背中を支えて、着地する。





ステイン「_______粛正対象だ!全ては……」




横たわる脳無の頭を切り裂き、






ステイン「正しき社会のために……!!」




立ち上がったその姿に、足がすくんだ。





エンデヴァー「なぜ一塊で突っ立ってる!こっちにヴィランが逃げてきたはずだが______」



エンデヴァーが駆けつけて、数十メートル先の……ステインを見やった。




エンデヴァー「……百々」



あなた「……っ、ぐ、うぅ……、」




起き上がろうとするあなたの背中を押さえつけ、離さない。





エンデヴァー「ヒーロー殺し……!」



ステイン「エンデヴァー…………偽物ぉ」




あなたから手を離した途端、あなたがゆっくりと瞼を閉じ、意識を手放したのが分かった。



同時に、ステインの目隠しがポロッと落ちる。




その形相に……その気迫に、その場の誰もが脚をすくませた。





ステイン「正さねば…………誰かが、血に染まらねば……!」




一歩一歩、僕らの元に歩んでくるその威圧感に……。



言葉も攻撃も、出るはずがなく。





ステイン「ヒーローを……取り戻さねばぁ……!来い……来てみろ偽物どもぉ!!!俺を殺していいのは本物のヒーロー______オールマイトだけだぁぁぁっ!!!」





誰も……誰も血を舐められてなんかいなかった。


なのに、この場でこの一瞬、ヒーロー殺しだけが、確かに相手に立ち向かっていた。



ステインは立ったまま気を失い、威圧感から解放された僕たちは途端に腰が抜けてしまった。







黒霧𝓈𝒾𝒹𝑒.°




ガリガリ……ガリ……



放った三体の脳無は、内二体がヒーローによって倒され、一体はステインによって殺された。



不機嫌そうですね……。




死柄木「チッ……何やられてんだよあの脳無……。百々あなたを攫えって言っただろうが……」




双眼鏡を塵にしてから、再度死柄木弔はガリガリと首を掻いた。




ヒーロー殺しステイン……最後、百々あなたを庇ったように見えた。




死柄木「……帰ろ」



黒霧「満足いく結果は得られましたか。死柄木弔___」




死柄木「ばーか。______そりゃ明日次第だ」





百々あなたの略奪には失敗したが、それは急遽決めた作戦だったため致し方ない。




ワープゲートを広げ、その場を後にした。
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°



グラントリノ「おぉ、起きてるな怪我人共ぉ」


緑谷「グラントリノ……!」




翌日、保須総合病院に運ばれた僕達は目を覚まし、昨夜のことについて話していた。




一緒に入ってきたマニュアルさんが、僕の正面のベッドで眠るあなたに目を向ける。




マニュアル「…………一度も、起きてないのかい?」




緑谷「はい……。何度かうなされてたんですけど、まだ……」





あなたに目立った外傷はなく、USJの時のように回復の個性の使い過ぎのようだった。



もし……あの時と同じなら、目を覚さないこともあるのではないかと心配した僕達だったけど……。




グラントリノ「医者曰く、"薬"とやらを服用していたようだ……。のお陰と言うべきか、自発的に呼吸もできておるし脳波に異常もない。時期目を覚ますだろう」




言われて安心した。










保須警察署署長の面構つらがまえさんがやってきて、ステインについての話を聞いた。



面構「資格未取得者が保護管理者の指示なく稼いで危害を加えたこと____。たとえ相手がヒーロー殺しであろうとも、これは立派な規則違反だワン」



……!




面構「君達3人及び、プロヒーロー……エンデヴァー、マニュアル、グラントリノ、この7名には、厳正な処分が下されなければならない」




……そうだ、あくまでも個性は……厳重に制限された上で成り立っている。


だけど……僕らのせいでプロヒーローが……。




轟「待ってくださいよ」



轟くんが、口を挟んだ。



轟「飯田が動いてなきゃネイティブさんが殺されてた。緑谷が来なければ2人は殺されてた……誰もヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ!?規則守って見殺しにするべきだったって____」




緑谷「ちょっ、ちょ_____」





すごい剣幕で突っかかっていく轟くんをなんとか抑えようとすると、面構さんは淡々と続けた。





面構「結果オーライであれば規則など有耶無耶でよいと……?」



轟「……!______人を……助けるのがヒーローの仕事だろ!!」



面構「だから君は卵だ。全くいい教育をしてるワンねぇ雄英も_____エンデヴァーも」



轟「っこの犬……!!」




我慢ならなかったのか歩み寄っていく轟くんを、グラントリノが止めた。




グラントリノ「まぁ待て……話は最後まで聞け!」




言われて踏みとどまった轟くんを見据えながら、面構さんはまた口を開く。





面構「以上が、警察としての公式見解____。で、処分云々はあくまでも公表すればの話だワン。公表すれば、世論は君らを称賛するだろう。公表しない場合、ヒーロー殺しの火傷痕からエンデヴァーを厚労者として擁立してしまえるワン。幸い目撃者は極めて限られている。この違反はここで握り潰せるんだワン。だが君達の英断と功績も、誰にも知られることはない」





そして、「どっちがいい」と質問を投げかけた。





面構「1人の人間としては_____前途ある若者の偉大なる過ちに、ケチをつけたくないんだワンッ」




そう言って舌を出して、グッと親指を上げて見せた。






面構「せめて、共に平和を守る人間として_______ありがとう」




轟「〜っ、……最初から言ってくださいよ」




そう言って、轟くんは目を逸らした。






あなた「_________んぇ、何、この雰囲気」




緑谷「あなた……!目が覚めたんだ!」




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戦闘シーンが入るとどうしても長くなってしまう……。




変なところで区切ります🌱🙇‍♀️

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