『死んでんだ。うちの両親』
百々さんの言葉を2、3回頭の中に復唱してから、彼女の横顔を見た。
悲しそうでも、怒っているようでもなく。
ただ、ふんわりと笑っていた。
切島「わ……わり」
あなた「……謝んないでよ~!よくあることでしょこのご時世!!」
両手を振って歯を出して笑う。
そんな風に割り切れてるってことは、もう大分昔のことなのかな?
芦戸「じゃ、じゃあさ!前の学校の話聞かせてよ!」
話を切り替えようと声を張った芦戸さん。
でもこの質問も、空気を重く変えてしまった。
あなた「……あー……うん、ほんと、ごめん」
ヘラヘラっと笑い、「私嘘苦手でさぁ!」と 手を叩いた。
あなた「同級生も、まぁ私の周り皆、死んじゃってんだわ~っ」
……もう、彼女に何か質問する人はいなかった。
でもどうして、どうして彼女は、笑っているんだろう。
あなた「……あ!私疫病神とかじゃないからね!?……ね、緑谷くんっ」
緑谷「ふぇっ!?……え、え、」
取り乱した僕を見て、ぷぷぷっと笑った。
百々さんは、掴めない。
あなた「でもいいよね!!轟くんや爆豪くんみたいな派手な攻撃憧れるよ!」
百々さんはケラケラ笑いながら、ちらっとかっちゃんたちの方を見た。
爆豪「んだ、喧嘩売ってんのか……!?」
まぁ確かに、あんなスポーツテストの結果を叩き出した百々さんに言われたらなぁ。
蛙吹「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそう」
爆豪「んだとこら出すわぁっ!!!」
「ほら」と舌を出す蛙吹さん。
僕は思わず頭を抱えてしまった。
かっちゃんにそんなこと言うなんて……!!
上鳴「この付き合いの浅さで、すでに糞を下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげぇよっ」
爆豪「てめぇのボキャブラリーはなんだごのコロスぞぉっ!!!」
あなた「ぷっ……くく」
爆豪「てめぇは何笑ってんだこのほくろ野郎がぁぁ!!」
あなた「……なにさ煮込み糞野郎っ」
天真爛漫な笑顔でかっちゃんにものすごいことを言い出した百々さんも含め、相澤先生に注意を喰らってしまった。
あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°
USJ……ね。
相澤「おし。そんじゃまずは____」
相澤先生の声と同時に、壁に沿って配置されていたライトが稲妻と共にフッと消えた。
ゾクッッ
あなた「……!?」
噴水の方で、何か嫌なオーラが……。
途端、グニゃっと歪んだ空間から紫黒い炎みたいな物が吹き出してきた。
相澤「一塊になって、動くな!!」
切島「……なんだありゃ」
黒いもやの中から、最初に出てきたのは顔とか体になんかいっぱい手がつきまくってる男。
その両側から、何体ものヴィランが出てきた。
あなた「_______っ、!!?」
嘘、でしょ……。
最後に5体、大男を外に出してから、そのモヤは縦長にまとまった。
相澤「任せた。13号……」
あなた「待って」
飛び出そうとする相澤先生の裾を掴んだ。
相澤「なんだ……」
あなた「…………いる」
私の震えた声に、相澤先生も勢いよく噴水の方に視線を移した。
5体、5体……!?
こんなに早く、くるなんて……。
あなた「先生……個性、使っていいですよね?」
相澤「構わない……が、あれ明からにやべぇだろ…………4、いや、5体……?1人ではダメだ」
あなた「……いや」
もし、1人で太刀打ちできなくても。
それでも、私は……。
あなた「手ぇ、出さないでくださいね」
1人で、やるしかないんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。