第120話

誕生日=   .°
18,945
2020/09/09 13:02
天喰𝓈𝒾𝒹𝑒.°



"強い"人って、大体そういうオーラがあって。


ミリオもオールマイトも、例外はない。



ただ、目の前のこの女の子に"それ"を感じた事が正しいのか分からない。





あなた「うっわ……まじか。ごめんなさい先輩!!」


天喰「いや……3年って思われないくらい俺は成長してないから……」


あなた「っははは!なに言ってるんですか〜!面白いですね先輩!」




……そのオーラ以外は、ただの明るすぎる女子高生にしか見えない。


……ミリオも似た様なものか。






あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°




あなた「ほいじゃーごめんなさいでした!」


相澤「すまんな」




相澤先生にめちゃめちゃ怒られながら、天喰先輩に手を振って更衣室から出た。




あなた「んで、「ビッグ3」ってなんですか?そこまで大きくない様に見えたけど……」





むしろメンタルスモールって感じだったし……失礼かな?





相澤「はぁ…………。雄英ビッグ3______この雄英トップの実力者3人の事で、並のプロヒーローはとうに越してる」


あなた「へぇ……」





あの人が……。






相澤「不服そうだな」


あなた「いやいや〜っ。私も負けないように頑張ろうって思っただけですよ!」






天喰先輩かぁ…………今度また、話してみたいなぁ。



コスチュームはとりあえず不備が無かったし、文句を言わず受け入れる事にした。


発目さんが作ってくれたポシェットは寮に送ると言われて、そのまま帰宅。




寮に着くと何やら中庭の方が騒がしくて、そういえば集合かけられていたと思い出して荷物を追いてから向かった。






緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°



芦戸「ほらもう!早くしないとあなた帰ってきちゃう!」



芦戸さんに急かされながら水風船を作り上げていく。



切島「おい爆豪!見てないで手伝ってくれよ!!」



壁に背を付け、腕を組んでこちらを見ていたかっちゃんに声をかけた切島くんは睨まれてしまった。



芦戸「も〜爆豪っ。あなたに喜んで欲しいでしょ!?」


爆豪「知るか。俺は部屋帰る」





かっちゃん……なんか不機嫌だ。





踵を返したかっちゃんを上鳴くんが止めて、切島くんが手を引く。






切島「せっかくの誕生日だぞ!?」


爆豪「……てめェら、これで本気でアイツが喜ぶと思ってんのか」





……え?



眉間にシワを寄せたかっちゃんは、水をひたすら作り出している轟くんを、チラッと見る。






麗日「どういうこと……?」


芦戸「喜んでくれるかは分かんないけど何かしたいって気持ちが大事なんでしょこういうのは!」






文句をぶつける女子たちに、かっちゃんは尚も不機嫌そうに言い放った。






爆豪「だから、その「誕生日」がアイツにとって良いものじゃねぇかもしれねぇだろうが 考えろやカス」


耳郎「ちょっと!」






眼力に圧倒されて、そしてかっちゃんのその言葉を考えてみた。


誕生日が……良いものではないって……?






芦戸「どういうことよ……」


爆豪「てめェらもアイツの話聞いたんなら頭使えクソ」





話……?




………っ、!?







緑谷「…………っ、そっか……。あなたの誕生日は……樹さんが、」


八百万「……亡くなった日、ですわ」






かっちゃんの言葉にそれを思い返した僕たちは、手に持ったカラフルな水風船に目を落とした。



あなたにとって、恋人であり平和の象徴であった樹さんが亡くなった事は当然悲しいことで。




それを、こうしてお祝いするみたいになってしまう……。





皆静まり返って、多分誰の頭にも、笑顔のあなたがいて。





葉隠「……私、それでもやるべきだと思う」





葉隠さんが水風船を一つ持ち上げていった台詞に、同調したり再度黙り込んだり。






佐藤「でも……どうなんだろうな」


飯田「…………」
















あなた「あれ!?皆どーしたの〜っ?」




緑谷「!?」









俯いている僕たちのところに意気揚々と走ってきたあなた。




僕たちは、両手に水風船を持ったままどう言えばいいのか考えあぐねて、結局黙り込んでしまった。

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