緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°
プレゼントマイク「さぁぁぁっ、昼休憩も終わって、いよいよ最終種目発表〜っ!!っとその前に!予選落ちの皆に朗報だぁ!」
最終種目目前に、全員参加のレクリエーションがあるらしい。
全員が再度集まった。
……って。
プレゼントマイク「どぉぉしたA組、どんなサービスだそりゃぁっ」
……チア服、だよね?
八百万「峰田さん上鳴さんっ、騙しましたわねぇぇぇ!?」
……あの2人かぁ。
僕は苦笑いで眺めながら、チラッと百々さんを視線に入れた。
皆と同じようにチア服に身を包んで、麗日さんと話している。
『百々あなたの秘密、知りたくないか?』
ノベルという男がそう言って、目を見合わせた轟くんと僕を見てまた続けた。
『気になるだろ……?あの子の個性の秘密』
轟くんは明らかに動揺していたけど、それでもすぐに「あんたが誰かも知らねぇのに信用に値するはずねぇだろ」と一蹴。
『……私はねぇ……あなたの“飼育員”だよ』
百々さんを、人間として見ていないような発言に胸騒ぎがした。
『ちょっと前まで従順な子犬だったはずなのに……いつから反抗期になっちゃったのやら』
それでも頑なに耳を傾けない僕達に、ノベルは ふん と鼻を鳴らして帽子を深く被り直した。
『あなたに、伝えておいてよ』
背を向けて、確かに聞こえる声で言ったんだ。
『俺から全てを奪っておいて……普通の生活が遅れると思うなよ……ってね』
全てを奪った……?
百々さんが?
何をばかばかしい事を、と思ったけど、僕達がそれを気にしているのは事実。
百々さんのこと、ちゃんと理解できていないから。
最終種目が個人対戦と発表され、トーナメントを決めるためのくじ引きをする直前に尾白くんが辞退すると言い出した。
尾白「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまでほぼぼんやりとしかないんだ……。多分、奴の個性で___」
尾白くんが組んでたのって……。
そっちを見やると本人は顔を背け、僕は代わりに百々さんを見やった。
百々さんも……彼と組んでいたはず。
青山「僕は、やるからね?」
あなた「…………私も、出る」
2人は出場を決めて、尾白くんの代わりにB組の鉄哲くんが出場することになった。
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
出ようか迷ったけど……。
こうして三回戦まで上ったわけだし、もう除籍はないから同様に辞退しようかとも思った。
でも、尾白くんの言葉を聞いて私にはその資格すらないような気がして……。
ミッドナイト「抽選の結果組は、こうなりました!!」
画面を見上げて、自分の名前を探す。
_________あった。
※塩崎ちゃんごめん
3試合目か……。
さっきから頭痛が増してきている。
レクの間、ちょっと保健室で休もうかな……。
っと、1試合目心操くんと緑谷くん!?
それに、2試合目には轟くんが出るし……。
絶対見逃せないなぁ。
上鳴「うぃ〜あなたっ、よろしくな!」
あなた「……うん!頑張ろーね!」
上鳴くんの個性は帯電。
静電気苦手なんだよなぁ私……ちょっと不安。
_________、
トスッ…………
心操「おい」
あなた「、ごめ」
立ちくらみがしてよろけた先にいた心操くんが受け止めてくれて、体を起こそうと力を込めると強い吐き気に襲われた。
あなた「________っ、」
心操「……?おい、どうし____」
口を押さえて体を預け続ける私の肩に手を添え、顔を覗き込まれる。
これは……やばい、
結構きてんだなぁ……。
言葉を出そうとするけど吐いてしまいそうで、視界が揺れて立てそうもない。
心操「おいまじでどうした」
グイッ
あなた「、」
いっそ倒れてしまおうかと意識を手放そうとした私は、引っ張られて他の誰かの胸の中へ。
爆豪「_________触んな」
荒々しい口調の爆豪くんが、私に触れるその手は……。
なんだかとても、優しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。