あなた『ねぇ、樹……樹のヒーロー名は、どうやって決まったの?』
樹『ん〜?ヒーローも、まずは形からだろっ。世界も……宇宙も、全部守れるように強くなりてぇからさっ。あぁあと、俺の名前もピッタリだし!』
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樹『なぁ、あなた。お前ならなれるから。俺の、代わりに……世界を、宇宙を_____だから、』
あなた「私の、ヒーロー名は_____」
樹『名を、継いでくれねぇか……?』
あなた「_______"ユグドラシル"」
切島「ゆぐど……、?なんか、聞いた事ある」
上鳴「なんだっけな、ゲームでよく見るような……」
八百万「"世界樹"、ですわ」
私の発表に、主にゲームを趣味としている男の子達が思考を巡らせる中で流石の博識の八百万さんが呟いた。
切島「そう!それなっ!!」
上鳴「ゲームの単語じゃねぇの?」
八百万「北欧神話に登場する1本の架空の木の事ですわ。 日本語では、世界樹とか……宇宙樹とも呼ばれますわね」
葉隠「おおっ、ビッグスケール!」
ミッドナイト「……どうして、この名前に?」
あなた「…………私の、1番尊敬するヒーローの名前です。世界も……宇宙も、全部守れるくらいに強くなるって、意味の」
ミッドナイト「切島くんと同じで、憧れのヒーロー名を継ぐという事は、相応の重圧が付いて回るわよっ」
言いながら「大好物」と物語っているその目を輝かせるミッドナイト先生。
あなた「_______はいっ」
力強く答えると皆拍手をしてくれて、一礼して席に戻る。
未だにペンを走らせている爆豪くんの手元を見ると、もうなんとも悪党っぽい名前が連なっていることやら……。
爆豪「爆殺郷ぉぉ!!」
ミッドナイト「……違う。そうじゃない」
……先は長そうだ。
ミッドナイト「…………(それにしても、「ユグドラシル」……って)」
緑谷「(ヒーローに詳しいって自負してる僕でも……「ユグドラシル」って……)」
相澤「(一度も、聞いたことがねぇ)」
相澤「今週末までに提出しろよ」
職場体験の申し込み用紙が配られて、私の手元には数枚の紙が並んだ。
プロヒーローからの指名を眺めながら、うぅんと頭を悩ます。
あいうえお順に並べられたカタカナばかりの事務所名を追っていく。
さて…………困ったぞ。
〜昼休み〜
芦戸「ねぇねぇ〜。皆どのプロ事務所に行くか決めた?」
峰田「オイラはマウントレディーっ!」
凄い、もう決めてるんだ……。
芦戸「あなたは?めっちゃ来てるけどどこにするn___ちょいちょいちょいっ!!目ぇ瞑って選ぼうとしてない!?」
宙を彷徨わせた腕を掴まれて、ようやく目を開けた。
麗日「行きたいとこから指名なかったん……?」
あなた「うぅん……いや、っていうか私……ヒーローの事よく知らなくてさ」
緑谷「??(その割には、僕にも分からないマイナーなヒーロー名出してたけど……結構昔の人なのかな?)」
麗日「ヒーローならデクくんが詳しいよっ!解析もバッチシだよねっ!」
緑谷「えっ?……僕で良ければ解説しようか?」
いずくんが席を立ってこっちにやってきたので、見えやすいように紙を重ねてそっちに向けて手渡した。
あなた「ごめんいずくん……お願いっ」
麗日「(あ、まただ。いずくんって呼んでる……)」
芦戸「(あなたは轟とくっつくもんだと思ってたけど……緑谷もありえるのかな?)」
緑谷「ええっと、じゃあ「あ行」かr______、えええぇ!!!?」
切島「なんだなんだ緑谷っ!」
紙を凝視したいずくんが、大きな口を開けて驚いている。
変なとこから来てたのかな……?
緑谷「………………オールマイト、から」
あなた「_________へ?」
「「「「「ええええぇぇぇぇ!!!?」」」」」
オールマイトって……え、オールマイト??
緑谷「(どういうことだ!?オールマイトの1日の活動限界時間は限りなく少ない……この状況で百々さんを指名して見学したら、秘密がバレるのも時間の問題なんじゃ____)って!!!エンデヴァー!!!?」
あなた「_________ふぇっ!?」
「「「はぁぁぁぁぁ!!!?」」」
オールマイトのインパクトが強すぎて見逃していたようで、その上の方にあったエンデヴァーの名前を見ていずくんは更に声を上げた。
切島「おいおい……2トップから指名かよ……」
芦戸「エンデヴァーって、轟の……」
三奈ちゃんの呟きに轟くんに視線が集まり、こっちを見ていた轟くんはこくりとうなずいた。
轟「俺にも来ていた」
蛙吸「指名は2人できるそうね……」
エンデヴァーって、体育祭の時に話したあの人だよね?
轟くんのお父さんで……。
私結構生意気な口効いたから、嫌われてると思ってたんだけど……。
切島「そしたらもう、この2人のどっちか行くしかねぇだろ!!羨ましいぜお前!」
オールマイトって……なんで、私を??
指名するなら気にかけてるいずくんにするべきだと思うんだけど……。
とりあえずマーカーでその2人に印を付けて、家に帰って選ぼうとファイルにしまった。
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°
放課後。
僕にもプロヒーローからの指名が来て、それがオールマイトの元担任だったと伝えられた。
あのオールマイトが震えるって……どれだけ恐ろしい人なんだ……!
とりあえずメモを受け取って、気になっていた事を聞くことにした。
緑谷「あの……オールマイト」
オールマイト「……なんだい?」
緑谷「あなたに……指名、出したんですか?」
尋ねると、オールマイトは震えを止めて僕と向き合った。
オールマイト「あぁ」
緑谷「でもっ、オールマイトの活動限界じゃ職場体験なんて_____」
オールマイト「そうなんだがね……。どうしても、"確かめなければならない事"があるんだよ」
「確かめなければならない事」……?
なんだよ、それ……。
オールマイト「……彼女の個性、知っているね?」
緑谷「……はい。"筋力増幅"と、"全回復"」
初めて二重持ちだと知ったときは驚いたけど……。
オールマイト「そうなんだ。そこが……問題なんだよ」
緑谷「……?どういう事ですか?」
オールマイト「彼女の個性が、彼女の両親から起因している物なのだとしたら問題はないんだが……」
???
何を言っているのかよく分からない。
個性は通常、両親からその性質を受け継ぐ物なんじゃ……。
だからこそ、"個性婚"もある訳で。
首を傾げた僕の肩を、オールマイトはポンポンと叩いた。
オールマイト「今度じっくり、キミにも話すよ。場合によれば、知っておかなければならない事になるかもしれないしね」
そう言って、いつもの笑顔に戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。