第80話

晩飯.°
21,439
2020/08/02 03:36
拳藤「あなた……やりやがった」



止めるべきだったか……?




「なっ……、なにすんだよてめぇ!!」


「おいこれ問題だろ!警察呼ぶぞ!?」


あなた「……すみません。お客様があまりにも理解し難いことを言っていたので、熱でもあるのかと思いました」

 

触られた髪をフルフルっと振って、頭を下げた。




「チッ……店長出せや!どうなってんだよこの店!」



あなた「人を蔑むことでしか自分の存在意義を確保できないんですよね、可愛そうです」





拳藤「まずいって……あなた、クビになるんじゃ___」


物間「……」




あなたがコーヒーまみれのそいつらの肩にポンッと手を置くと、ぽうっ と薄い光が覆って。



次見たときにはもうその人たちは濡れていなかった。



今の、個性……だよね?




「え、濡れてなi_________」



あなた「帰ってください。お代は結構です」




言われたそいつらは悔しそうに顔を歪めて店から出て行った。


すぐに店長さんらしき人が来て、あなたは深く頭を下げて謝っていた。





拳藤「あなた、大丈夫かな……」




てか、いつもダル絡みしてくる物間を庇う必要なかったのに……嫌いなんじゃなかったか?




物間「…………バカじゃないの」



正面に座る物間の頬は、今までにないくらい赤く染まっていた。




拳藤「へぇ……?ああいうとこが好きなんだ〜?」



物間「はぁ!?黙ってろよゴリラ!!」






こんな捻くれ者に好かれて……あなたも大変だな。






あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°




あぁ……バイト先探さないと。


昨日の一件で、店長は辞めなくていいと言ってくれたけどまたあの人たちが来たら大変だろうし、バイトは辞めた。




朝から気分が晴れなくて面接を申し込む気力もない。


クーラーなんて勿論ないしめちゃくちゃ暑い……。






ピーンポーーーン……





と、ゴロゴロしているところに珍しい来客の音。


誰だろ……宅配なんてくるはずないし、大家さんかな?




あなた「はー……い、_______轟くん!?」



轟「悪い急に。今日なんか用事あるか?」




……そっか、連絡とりようないもんね。




あなた「いや……どうしたの?」




首を傾げると、肩から下げた鞄にポンっと手を添えた。




轟「クラスの皆で、プールで体力強化するらしい。一緒に行くか?」



あなた「あ……それで迎えに来てくれたの?」




折角だし……行こうかな。






準備をして、外で待ってくれていた轟くんと合流した。



轟「……服」


あなた「えっあ、うん……!轟くんが選んでくれたやつっ」



何の気なしに選んできたけど、嫌だったかな……?



轟「……行くか」



これは……まぁ、嫌ではなさそうだよ、ね?


なんとなく無表情が読めるようになってきた。



なんとなく、だけど。





学校について更衣室に向かうと、丁度他の皆が合流したところだった。




芦戸「あなた〜!!良かった、連絡できないから焦ったよ〜!」


飯田「轟くんも、来てくれて良かった!!」


麗日「……(一緒に来たのかな??……え、え?)」




どうやら主催者は上鳴くんと峰田くんといずくんらしくて、3人はまだ着いてないみたい。


早速着替えてプールへ向かった。




あなた「ふおおお、プール……海じゃないプール……初めて来た!」



轟「(逆に海のプールってなんだ?)」



芦戸「あなたっ、バレーしよ!!ボール持ってきた!!」



あなた「しゃぁぁぁやる!!」







女子はバレー、男子はシンプルなトレーニングに明け暮れ、真夏の空の下笑顔が溢れた。





飯田「皆!男子全員で誰が50メートルを1番早く泳げるか、競争しないか!」



耳郎「?なんか言ってるぞ」



葉隠「競争だって!」



芦戸「見に行こ行こ!」




バレーも疲れてきたのでプールから上がって、皆で見学に向かった。




八百万「飯田さんっ。私たちもお手伝いしますわ!」



飯田「ありがとう!」





競争……競争かぁ。






爆豪「勿論てめぇは泳ぐ側だほくろ野郎!」




あなた「え」






ビシッと指差され、なぜか男子に混ざって競争に加わることになった。




3チームに別れて予選をする。




1チーム目は、爆豪くんが泳がず1着ゴール。



2チーム目は私と轟くんと瀬呂くんと青山くんと切島くんと佐藤くんだ。



切島「今度こそ負けねぇぞあなた!!」


あなた「おうよっ!!」




拳を突き出して、スタート地点に着く。





八百万「位置について_____よーい!」




ピッ!!




笛と同時に台を蹴り、体を水中に潜らせる。



息継ぎなしのクロールで最後まで泳ぎ切り、顔を上げると隣のレーンの轟くんもゴールしていた。



後ろには氷結の痕。




……せこくない?





八百万「轟さんとあなたさん、同時着ですわっ!」



あなた「お〜っ」





負けたかと思った……。




轟「ん」




上がろうと手すりに手をかけると、轟くんが手を差し伸べてくれた。



なんかちょいちょい過保護なんだよなぁ轟くんって……。



素直に甘えて手伝ってもらい、上に上がった。





3チーム目はいずくんと飯田くんの接戦で、ギリギリいずくんの勝利。


途中から急激にスピードが上がったなぁ。





轟「緑谷……」



あなた「私らも負けてらんないね!」







飯田「爆豪くん、轟くん、百々くん、緑谷くんの4人で優勝者を決める!それでいいか?」




……内2人は泳いでないけどいいのかな?





緑谷「うんっ」


轟「あぁ」


爆豪「おい半分野郎!_____体育祭の時みてぇに手加減なんかすんじゃねぇぞ。ほくろ野郎!てめぇも途中退場許さねぇからな……本気できやがれ!!」


轟「分かった」


あなた「勿論!」


爆豪「おめぇもだクソデク!!」


緑谷「、分かったよ、かっちゃん!」











飯田「それではっ、50メートル自由型の決勝を始める!」




自由型だけどね。




切島「いったれ爆豪!!」


上鳴「相手殺すなよ!!!」


瀬呂「轟も負けるなぁ!」


麗日「デクくんあなたちゃん頑張れぇ!」


芦戸「あなたいけぇぇ!!」


八百万「皆さんファイトっ!!」




それぞれ声援を受けながら、位置につく。




飯田「位置について!」



爆豪「(一気に駆け抜ける!!)」



轟「(滑りぬく)」



緑谷「(全力で泳ぎ切る!)」



よし、アジフライにチャレンジしてみよう!!
   ※バタフライです




飯田「よーい!!」



ピッ!!!




一斉に飛び出した私達は、空中で一瞬静止して水に落ちた。



ドボンッ!!




個性が消えた……!?って、事はまさか……。




相澤「17時。個性の使用時間はたった今終わった。早く家に帰れ」




……やっぱり。




あなた「ちぇっ、いいとこだったのに……」



相澤「ほぉ……?なんか言ったか?」



あなた「ナニモイッテマセン!」




薄笑いが1番怖いよ、相澤先生……。





日が暮れてきて、皆水着を着替えて学校から出た。




久しぶりに運動したなぁ……。




切島「お〜いあなた!!アイス食いに行こうぜ!」



校門の所で元気に手を振ってる切島くんに駆け寄ると、その横に爆豪くん。



爆豪「てめぇ携帯ねぇから不便なんだよ買えや」


あなた「え……爆豪くん私に連絡することあるの?」


爆豪「ババァが連れて来いってうるせぇんだよ!!てめぇ今日晩飯なんだ!?あ"!?」


あなた「決まっておりません!」


切島「はは、あなた爆豪ん家行くだろ?途中まで一緒に帰ろうぜ!」




笑ってそう言ってくれたので、今日も今日とて爆豪くんの家にお邪魔することになった。

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