あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
相澤「全員コスチューム持ったな?本来なら公共の場じゃ着用禁止の身だ。落としたりするなよ?」
駅に集合して、相澤先生の話を聞きながらコスチュームの入っているケースをなぞった。
一昨日やっと届いたコスチューム。
正直私の個性はコスチュームに左右されないし、何でもいいと言って出したけど……。
ショートパンツにダボっとしたオフショルダーのトップスという、シンプルなデザイン。
……私服みたいなんだよなぁ。
相澤「くれぐれも体験先のヒーローに失礼の無いように。……じゃあ行け」
「「「はいっ」」」
……今相澤先生、私のこと見てたよね??
迷惑なんてかける訳ないじゃんもうっ!
轟「百々」
あなた「んっ。行こ!」
相澤「轟、百々のお守りは任せたぞ」
あなた「あのねぇ先生……!」
轟「最善を尽くします」
あなた「ちょっと!!」
全く……。
私は、職場体験先にエンデヴァーヒーロー事務所を選択した。
色々理由はあるけれど、一番な大きな理由は"知っている"こと。
そして、オールマイトの所に行くのはやめた。
色々探りを入れられてそうだしなぁ。
あなた「、轟くん、どうかした?」
轟「________いや、」
改札に向かっていく飯田くんの背中を見つめていたので声をかけると、「なんでもない」と歩き出した。
……方向音痴だから、ついていこう。
事務所について轟くんが取り次ぐと、サイドキックの人と何やら話してからこっちに戻ってきた。
轟「今丁度来客対応中だそうだ。先に荷物置きに行く」
あなた「あー、了解」
エレベーターに乗って3つ上の階で降りて、案内されるまま通路を歩く。
よくよく考えたら……。
轟くんとそのお父さんと私だもんな。
三者懇談みたい。
轟「結構時間かかるらしい。とりあえずゆっくりしとけって」
時間かかるって……もう直ぐ夕方だ。
案内された部屋のソファーに荷物を置いてから、隣に腰掛けた。
あなた「エンデヴァーって、なんていう個性なの?」
轟「……ほんとに知らないのか」
No.2ヒーローなのはよく分かったし常識なのかもしれないけど、知らないものは知らない。
まぁオールマイトは流石に知ってたけど……。
轟くんはショルダーバッグをサイドテーブルに置くと、私から少し離れた所に座った。
轟「"ヘルフレイム"。……炎を身体から放出したり身体に纏うことができる個性だ。炎系で最強クラスと言われている」
あなた「ほぉ……、流石No.2だね」
まぁエンデヴァー自身は、そう称されるのが嫌だろうけど。
轟𝓈𝒾𝒹𝑒.°
あなた「ふあぁ……、ね、ちょっと仮眠とってもいいかな?」
轟「……あぁ。起こす」
大きなあくびをしてから、百々はソファーから立った。
正直百々がオールマイトではなくこっちに来たことには驚いている。
個性の関係も、そして俺のカミングアウトも。
少しでも抵抗は無かったのか?
そもそもなんで親父は百々をここに___。
あなた「……ね、轟くん」
轟「?なんだ」
百々は部屋の奥を指差して言う。
あなた「エンデヴァーって、ちょっと早とちり?」
轟「え?」
その方向を見てみると、明らかに作為的に並べられたベッドが2つ。
いいとこのホテルのようにピシッと整えられていて、寄り添うようにそこに置かれていた。
_________親父め……。
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
轟くんと2人でエンデヴァーの職務室に向かった。
私たちがいた階の上の上の、そのまた上。
壁一面の大きな窓から差し込む夕日に照らされながら、エンデヴァーの炎は沸沸と燃えている。
エンデヴァー「待っていたぞ。焦凍。ようやく覇道を進む気になったか」
体育祭の時より少し上機嫌なその姿を見て、この間轟くんから聞いた昔の話を思い浮かべる。
あれ聞いた後だと……やばい奴にしか見えないよ。
轟「あんたが作った道を進む気はねぇ。俺は俺の道を進む」
思ったより淡々と答える轟くんに安心しながら、それでも真に思う。
エンデヴァー……息子大好きかよ。
さっきから私のこと全然見ないじゃん!!
と、私の念が通じたのか見下ろしてきた。
あなた「…………雄英高校から来ました。百々__」
エンデヴァー「百々あなた……だな」
あなた「……はい」
エンデヴァー「話すのは2回目か」
あなた「会うのも2回目ですね」
エンデヴァー「君を見るのは3回目だがな」
あなた「…………?」
よく分からない返答に首を傾げると、「ふん、まぁいい」と薄く笑った。
エンデヴァー「お前らも準備しろ。出掛けるぞ」
……?
轟「?どこへ……」
エンデヴァー「ヒーローというものを見せてやる」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。