診断結果が出たその夜、飯田くんは迎えに来たお母さんと一緒に実家に帰っていった。
見送ってから、窓際から離れてベッドに戻る。
あなた「ふぅ……」
緑谷「あなた、大丈夫?まだ疲れが残ってるんじゃ……」
あなた「や…………お腹すいた」
轟「バナナ食うか?」
あなた「食べる」
一気に体力が削られた気がする。
色々……考えさせられる事件だったなぁ。
轟「俺は明日職場体験に戻るけど、お前はどうする?」
荷物をまとめながら尋ねられて、轟くんが比較的軽傷だった事を思い出した。
あなた「勿論私も行k_________」
医者「はいダメー」
突然入ってきたお医者さんが、単調な声で入ってきた。
あなた「ダメってなんで……!?」
シャーーッとカーテンを閉めながら、「数日は絶対安静だ」と言い放った。
緑谷「あなた……そんなに悪いんですか!?」
医者「本当なら数週間眠っててもおかしくない程の負担を、薬の大量摂取で誤魔化したんだ。まぁそのお陰で今こうして起きてられるが……医者の俺からしたら褒められた行動じゃない。元がとれるまではドクターストップな」
あなた「〜っ、私は元気だもん!!!!」
医者「はいはい。あぁそれから……明日の会見終わったら寄り道せずに病院に帰って来いよ」
あなた「……はい?」
会見……とは?
医者「エンデヴァーから聞いてないのか……?」
あなた「???」
〜翌日〜
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°
〈裏読新聞の高内です。この度保須事件において、エンデヴァーさんの的確な指示により多くの命が救われることになりましたが______その裏で彼女が逃げ遅れた人々を見事救出したと話題になっております。この事についてどう思われますか?〉
エンデヴァー〈えー〉
スマホの画面内で、エンデヴァーがズームされた。
エンデヴァー〈ヴィランに襲われている市民と逃げ遅れた方々を見た際、彼女なら救出できるだろうと判断し指示を出しました。冷静さと的確な判断力を持っている彼女は、私の期待以上の動きを____〉
エンデヴァーをヒーロー殺し逮捕の功労者として擁立する際、市民の避難に尽力したとしてあなたの存在も同時に公表された。
そしてその動きは全て、職場体験先のプロヒーロー……エンデヴァーの的確な指示によるものだと賞賛されている。
〈えぇー、それでは百々さん。今回の君の行動、実績は大いに評価されて然るべきです。何か一言、お願いしますっ〉
あなた〈…………助けを求める声がして、助けたいと思いました。私があの場で動き、そして結果的に16人の命を救う事ができた事は全て、エンデヴァーさんの教えと指示があったからに他なりません。ヒーローに憧れ、目指す立場として……人を導き、正し、行動させる……こんなヒーローになりたいと心から思いました。雄英高校でヒーローを学び、少しでも憧れに近づけるように、今回の事を糧として更に努力を続けていこうと思っています〉
問題を起こさないようにと、昨日あらかじめ決められていた台詞を淡々と述べている。
その大人っぽさとしっかりした印象から、会場から感嘆の声が漏れ、マイクがそれを拾っている。
〈それでは以上を持ちまして_______〉
あなた〈それと〉
緑谷「!?」
あなた……何言う気だ?
エンデヴァー〈……おい〉
余計な事は言うなと、相澤先生から念を押されていたけど……。
まぁ、あのあなたがそれを守るとも思えないけど……。
あなた〈救助に向かっている時、ヴィランと戦い、街を守ろうとしてくれているヒーローを沢山見ました。結果的に賞賛の声を受けさせてもらっているのは私達ですが、その裏で多くの人々が血を流し、"救うために"全力だった事……それは確かだから、だから……〉
あなたがズームされて、その整った顔がバッと下に下がった。
あなた〈そのヒーロー達に……この場をお借りして______ありがとうございました〉
声が少し震えていて、もしかしたらあなたは、僕や飯田くん、轟くんのためにこうして述べてくれているんじゃないかと思った。
会見は温かい拍手に包まれて終わりを迎え、会場を後にするエンデヴァーと、それに続くあなたの背中が最後まで映されていて。
緑谷「……あなた、ありがとう」
元気いっぱいに無邪気に笑う彼女も、やっぱり僕の尊敬する存在だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。